ごきげんよう
私は嫌なことがあり、誰かに打ち明けたいとき、でもそれが叶わないとき、逃げ出したいとき、柏井彫刻になる。
黒鳥清花も、柏井彫刻も私の中にいる人間だ。
どっちが嘘でどっちが本当かなんて存在しない。
どちらも嘘で、どちらも本当なのだ。
多重人格とか、そんなかけ離れたものでもない。
切り離すことのできない、不完全な物体なのだ。
「今日の調子はどう?」
「最悪だよ、君も良く知っているだろう?」
アメリカのブラックコメディさながら、陽気な様子でワタシタチが会話をしている。
HAHAHA、なんて笑い声が聞こえてきそうだ。
「何がそんなに面白いんだい?」
「知らないよ、でも笑ってないと精神がどうにかしてしまいそうでね」
わざとらしく両手を上げ、お手上げのポーズをとる。
「何を言っているんだい」
もう精神なんて、どうにかなっているじゃないか
その一言で声が止み、口角が下がり、手が伸びる。
「死んでしまった方が楽かもしれないね」
かわりに笑ってあげた。
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