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投稿イベント用に楽曲を作るボカロPのスケジューリング術

最初はただ自分の好きな曲を作っていただけでも、何曲も作っていく中で「もっと多くの人に聴いてほしい!」「同じように作曲をしている人とつながりたい!」という気持ちがわいてくるもの。そんな願いをかなえてくれるのが「ボカコレ」などの投稿イベントです。今回はそんな投稿イベントに向けて曲を作るときの制作スケジュールについてのお話です

投稿イベントとは?

ボカコレ2022春の公式サイト。
私の知る限りボカロP界隈でいちばん大きなイベントです

ざっくりいうと、「みんなで一斉にこの期間に曲を投稿しようぜ!」というお祭りみたいなものです。大きなものはだいたい法人(ニコニコ動画とか、auとか)が主催しており、公式サイトや公式ランキングがあったり、賞金が出たりします。小さなものは個人が主催するケースが多く、ハッシュタグをつけてTwitterに投稿するだけだったりします。誰でも無料で参加できるものがほとんどで、参加作品数は10~4000作品ぐらいとかなりバラつきがあります

感覚的には「企業主催のイベントが年に10個ぐらい、個人主催のイベントが年に40個ぐらい(そのうち大き目のものが10個ぐらい)はある」というイメージです

イベント用のスケジューリングで一番大事なこと

もしあなたが10月31日に開催される投稿イベントに参加したいとします。このときに一番大事なのは「自分の制作工程と制作スピードを理解する」ということです。作詞作曲編曲・イラスト・ムービーを1人でやるのか誰かに依頼するのか、ひとつひとつの工程にはどれぐらい時間がかかるのか、そういったことを頭に入れるのがスケジューリングの最重要ポイントです

Case. 絵が描けず、楽曲に2ヶ月かかるボカロPの場合

典型的な私。
楽曲制作(水色)に2ヶ月かかる人は大体こうなる。

制作スピードは人によって全然違いますし、楽曲制作の中でもアレンジに時間がかかる人もいればMixが長い人もいるので、スケジュールの正解はひとりひとり異なります。もしかしたら、上の図の項目をさらに細分化した方がいい人もいるかもしれません。そのうえで、今の自分の力量を考えて「普通にやったら、多分こうなる」というスケジュールをドライに立てましょう。それが現実です

その際に大切なのがイラスト制作です。Piaproからお借りするならすぐに済みますが絵師さんに依頼する場合は絵師さんの制作スケジュールを確保しなければなりません。また、描いてもらう前に制作中のデモ楽曲を送ることが多いので、絵師さんへの依頼タイミングに間に合うようにデモ楽曲を完成させるという隠れた〆切が存在します

絵師さんの作業スピードは十人十色。絵師さんと異様に仲が良くて3日ぐらいでイラストを描いてくれるような特別な関係を築いているボカロPもいますが、「半年先まで埋まっている売れっ子とかではない、ココナラとかで普通に依頼できる絵師さん」の場合は、4週間ぐらいの納期を設定している人が多いイメージです

Tips:

Case. デモ楽曲ってどのぐらい作り込んだらいいの?

私にもわかりません(笑)
これに関しては絵師さんによって求めるラインが違う(そもそもデモ楽曲不要な絵師さんも普通にいると思います)ので、ご本人に聞いてみた方がいいと思います。ちなみに「アンラベル」という曲ではこのmp3をデモ楽曲として絵師さんにお送りしました。まともな神経を持ったボカロPさんならこういうの恥ずかしくて隠すと思うんですけど、私はメンタルが異常値に振り切れてるので余裕です

この完成状態を文章化するとこんな感じですね。

  • 出だしのAメロ~イントロが8割ぐらい完成

  • それ以降はボーカルとドラムとコード進行が打ち込んであるだけ

  • ボカロは歌詞付きでラストまで入っている

  • ボカロの調整はノートの長さを軽く整えただけであとは未着手

  • Mixはほぼゼロ(軽く音量を整えただけで、コンプもEQもなし)

  • マスタリングはOzoneを1回通して終わり

このmp3にAdoさんの「心という名の不可解」のYoutubeリンクを添えて絵師さんに渡し、「最終的にはAdoさんのこの曲にバイオリンを足した感じにしますんで!!!」という強気なメッセージを書いてイラストを依頼しました。さすが、メンタルがぶっちぎりですね!

果たして本当にそうなっているかは皆様の耳でご判断ください(笑)

正直、先ほどアップしたmp3はデモ楽曲としてもかなり未完成な部類だと思います。その点、以下のポイントを押さえつつ「2番以降はスカスカだけど、1番のサビの編曲は8割完成している」ぐらいまで進めておくと、絵師さんがイラストを描きやすいデモ楽曲といえるのではと考えています

  • タイトル

  • 歌詞

  • 歌詞の設定(舞台背景、登場人物、ストーリーライン、誰目線、など)

  • テンポ(アップテンポ、バラード、など)

  • ジャンル(EDM、ピアノ曲、バンドロック、電波系、お洒落曲、など)

  • 音色的な雰囲気(使っている主要な楽器がわかる)

  • 曲の激しさ(ヘドバン系なのか、切ない聴かせる系なのか、など)

  • 特徴的な箇所(サビでパーパッパラパッパララッパッパっていう、等)

自分の制作工程と制作スピードに合わせて動く

話をスケジューリングに戻すと、上の方で書いた「制作工程と制作スピード」はほぼ変わりません。実をいうといくつかの工夫で縮められるのですが、逆に言えば制作工程にねざした工夫をしない限りは大きく縮むことはありませんし、作曲スピードが急に2倍になったりもしません。気合と根性で何とかなる・・・は幻想です

また、ほとんどのボカロPは作曲以外にも学校や仕事をかけもちしています。2ヶ月の制作期間が夏休みなのかテスト前なのか、冬休みは家族を連れて奥さんの実家に帰省するのか、家族全員が自分を置いて帰省するから1週間のプチ独り暮らしが発生するのか等、その期間のうちどのぐらいの時間を楽曲制作に使えるのかによって進行ペースはめちゃくちゃ変わります

結局のところ、「作業工程 × 制作スピード × かけられる時間」がものをいうので、そこを冷静に見極めながらペース配分や軌道修正をしていくのがスケジューリングのコツになります(先日のボカコレはラスト2週間のタイミングでそこを見誤ったので、私は8時間遅刻しました)

まとめ

いかがだったでしょうか?
絵師さんを含めた全体の作業工程を理解し、自分の制作スピードを正しく認識し、制作期間中に作曲に使える時間をそれらとかけあわせながら「何をいつまでに終わらせればセーフなのか?」を判断して動いていくのが、投稿イベントに参加する際のボカロPのスケジューリング術だと私は考えています

ただ、これから初めて曲を作る人、まだ曲を作って日が浅い人は「これができないとダメなのかな・・・?」と怯える必要はないと思います。1曲目2曲目からこんなペース配分がわかってたらそれはもうスケジュールの天才なわけで、何曲か作るまでは正しいペースなんて中々つかめません。もしかしたら間に合わないかもしれませんが、それでもダメ元で制作を始めるぐらいがちょうどいいと思います(イベント後に投稿することだってできますし)

最初のうちは、スケジュールなんか気にせずに曲作りを楽しんだ方がハッピーだと思います。そんな中で、ちょっと実力がついてきて、色んな投稿イベントに計画的に参加したいと思うフェイズになった人はこういうのを考えてみるといいんじゃないでしょうか

ではまた次回のnoteでお会いしましょう。どのぐらいの頻度で次回を書くかは皆さんのスキの数によって変わる気がするので、よかったらあのハートマークみたいなやつを押していってください

それでは、作曲、一緒に楽しみましょう!


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