黄金時代 / ねはん



「――天上の歌、人々の歩み。奴隷共、この世を呪ふまい。」アルチュール・ランボー 『朝』


関係性として過去の中で
ひとりの生身だけを掴んでいた
寂しげな黄金の時代が
私にはあった
それ以外の道も幾らでもあったのに
だが私はそれを選ばなかった
擦り抜けていくのは
透明な液体か
選べなかったのだ
幾つになっても私は幼いままで

絶え間ない不信感の中で
微量の息が漏れ出す
朧月夜を落とす
「真鶴」を目指した女性の様に
憑いてくるものがあれど
不意に手放した言葉は
宙を舞うように零れ出す
あの悪質な快感
あの悪童の恍惚とした表情
掏摸をする前の呪文
鉛のような雨水を飲み
溺れた

死んだように生きたことは数え切れず
性や生に翻弄されたことも沢山あった
性的嫌悪による自己との歪み
夕方を浮遊するように
差し迫る腐臭
眠剤を飲んでトリップ
またその次もぬるい眠り
東京を後にし
故郷に帰り
精神病棟に入れられ
お母さん
お父さん
お兄さん
お姉さん
みんな大嫌いだった
「倫理や道徳は
わたしを救ってくれなかった」
その言葉に救われた
正しくなくていい
私も傷だらけだったから

それにしても
あゝ失ってしまった私の黄金の時代
「奴隷共、この世を呪ふまい。」