非在の翅 / 岩倉文也

夢の中あるいは街の中で
ぼくは頻りに話しかける
ぼくの天使はどこへ行きましたか?
ぼくの言葉は何をしていましたか?

いつだって先に予感があった
未来は庭の椅子に腰掛けていた
ところどころ欠けたぼくの天井から
洩れ入る光 それは音のない記憶だった

非在の翅をもつ人
非在を生きるやさしい人
ぼくはあなたのようになることはできない

世界はそこで行き止まり
ぼくはもう話さなかった
白紙の手紙を いつまでも握りしめたまま