何もない / さがみどり

僕が棒立ちする駅を通り過ぎる
回送電車みたいな無関心さで
空が青い
どこかへ歩いていても 
どこにも向かってはいない     
樹海に生命を感じないように 
無機質を着做す家々
高層ビルの間の墓場は
名付けを免れた花
偏在する未解釈
雨粒を弾くプラスチックみたいに
意味に濡れることなく
藍色を患った
それそのものに触れるため

否定の原液が
コンクリートを伝い落ちて
滴る音だけが都市に鳴る    
僕はそれを聴くために
祝福の圏外で
凪へと自閉する
何もない

旋回するムクドリの群れが
穿つこの世の穴隙から
逆流する氷点下の木枯らし
その裡に
何かが在ることを許さない温度で
咲くことはない苗だけを匿い
小指の先ほどの温度が
凍てつく空気越しに伝わって 
萌芽への祈りを 
最後の言葉に息絶えた
吹雪に残した足跡の
永遠を望むように