酸性シンクレティズム / 早乙女まぶた

少女たちがかみさまをつくった
だからずっとそばにいるのに
同じ風邪を喜ぶ彼女たちは
目には目を
そして復讐のように
唇には唇を重ね合わせて
いずれ風邪は治るのに
そのことをすぐに忘れる
奇数同士を続けられればよかった
捕まえることができないから

消えていく春は監禁されて
睡魔に襲われた命乞いのような寝言を
失神した広場に伝えている
しにたいしにたいといって現れる女の幽霊
すべてそのままなのに
生命だけが古い本棚に隔てられて
孤独はひとつしかないと思った
なんにもしたくないというのは本当で
これほどまでに眠いのがその証拠だ
思い出せないものを思い出さないまま愛する女のように
ぼくはぼくとはぐれて
誰かの暗い夢に落ちる

いつというわけではない夏が繰り返し訪れるそのたびに
大人とはなりたくないものの総称だった
ただひとつ
女神というサーカスの中心を除いて

忘れたい校舎のほどかれた女神に射す夕日
熱で膨張した空気を撃ち抜いて
抜け殻の教室に帰る
赤く照らされた床に伸びている
這い回る制服を窮屈にする白い声
——なんで人間扱いしてくれないの?

もうやめたって嘘をつく、はじまりの日
かみさまはずっとさびしい