ビジュアルリテラシーと視覚言語の基礎

絵本をフカヨミする際には、できるだけ、絵本の絵だけを見て何を感じられるか、何を思い出したり、連想するか、に集中します。

できる限り、作家の情報や時代背景などは知らない状態でその絵本と向き合います。そして、探偵になったつもりで、絵に向き合い、どれだけ情報が引き出せるかに挑戦していきます。

これが一番の醍醐味です。

私がよくお話しているビジュアルリテラシーとは、文字ではなく、視覚情報である絵の読み描き能力のことです。と言っても絵文字の話ではありません。絵文字ではなく、視覚言語といいます。ですので、
ビジュアルリテラシーとは視覚言語の読み描き能力です。

絵には、人間とか木とかの具象的な物を表現する具象的な面と色や形や模様などの抽象的な面があります。

この抽象的な面を理解したり操ったりする脳力をビジュアルリテラシーといいます。「抽象的な面の情報」(つまりこれが視覚言語ですので今後は視覚言語と言うことにします)は思いの外、人間の感覚に大きく作用しています。しかもその効果は大きく言えば赤は暖かく感じるというように世界共通です。ですので、世界共通言語なのです。

まず、絵の抽象面を見ていくために知っておくべき視覚言語の構造についてお話します。

絵の抽象面は特徴のある小さな領域の組み合わせで作られています。
その特徴とは大きく分けると、色と形と模様の3つの要素になります。

同じ要素の小さな領域を集めていくと同じ要素をもつ大きな領域になります。
そして、3つの要素がみんな同じでなくても、例えば色の要素だけが赤で同じであれば、赤の色という同じ要素の領域を作ることができます。その領域を赤の色で統一感のある領域と呼びます。おなじように緑の色で統一感のある領域も作れます。

二つの違う要素に注目すると、

赤の色で統一感のある領域緑の色で統一感のある領域色で対比されるといえます。

しかし、領域には3つの要素がありますから、もしかすると赤の色で統一感のある領域緑の色で統一感のある領域模様の要素は同じかも知れません。だとすると、

赤の色で統一感のある領域緑の色で統一感のある領域模様で統一感がある

と言えるのです。つまり、領域の特徴の三要素は個別に考えれるのですなのです。

似た名詞を集めていくと一つの領域ができます。その領域の中では、統一感があるといいます。例えば、赤い色のものを集めていくと、赤い色で統一感のある領域ができます。四角い形のものが集まった領域は四角い形で統一感があるといえます。ウネウネの模様のあるものが集まっていると、その領域はウネウネの模様で統一感があるといえます。

以上が視覚言語の基本的な構造です。これを知るだけでも、絵の画面が整理させてみることができるようになるのです。

ビジュアルリテラシーが分かっている絵本作家は、何かを伝えるものだと思って色や形を選んで描いているのです。ですので、それを読み取れると作者とコミュニケーションしやすくなるというわけです。しかもその言葉は世界共通なのです。素晴らしいと思いませんか?

ビジュアルリテラシーとは世界共通の絵の言語を読み書きする能力のことなのです。

ビジュアルリテラシーに関係した動画はこちらから

スズキコージさんの「サルビルサ」( https://youtu.be/Ue_WfMsAB-8 )
スズキコージさんの「サルビルサ」は字のない絵本として、いろいろな人の解釈がありますので、実は、大学でも、学生さんに読み解いてもらうという授業をしたことがあります。その時一番多かったのが、「漁夫の利」ということでした。その根拠の一つは、大きな黒い鳥が二人の王様が倒れた後に獲物をさらってしまうからなのですが、
実はこの黒い鳥、初めから何度も登場していて、15場面のうち11場面に登場しているのです。
そこになにか違和感を感じまして、絵を深く読んでみますと、
青空に描かれたグニャグニャの模様がどうにも引っかかります。しかも、この模様は最初と最後の見開きいっぱいに描かれているのです。
スズキコージさんは何かしらの意味をここに込めていると思われます。とすると、込められた意味はなんだろうかというところから、この絵本のフカヨミが始まりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?