見出し画像

マイナ保険証利用促進にインセンティブ

マイナ保険証利用促進にインセンティブ

2024/02/05

吉永 真理=日経ドラッグインフォメーション

行政・制度

印刷

 2024年12月に現行の健康保険証が廃止され、マイナ保険証に一本化される。本格運用に向け、国による利用促進策もスタートした。マイナ保険証への移行により薬局業務はどう変わるのか。実際の運用事例を交えて紹介する。

 ※本記事は、月刊誌「日経DI プレミアム版」2月号からの転載です。情報は誌面掲載時のものです。



 2023年12月22日、政府は現行の健康保険証の新規発行を24年12月2日に廃止し、マイナンバーカードの保険証利用(以下、マイナ保険証)に一本化すると発表した。廃止後、最長1年間は発行済みの健康保険証を使用できる猶予期間が設けられるものの、25年12月以降は現行の健康保険証は全て有効期限が切れ使用できなくなる。

マイナ保険証、利用はわずか

 2024年1月時点で、マイナンバーカードが交付された国民のうち約7割がマイナ保険証を取得済みだ。マイナ保険証と患者の顔を照会して本人確認を行う「顔認証付きカードリーダー」や、マイナ保険証または現行の保険証を用いて最新の資格情報を確認する「オンライン資格確認等システム」の運用率は薬局で約95%と高く、受け入れ側の準備は整ってきているようだ。

 しかし、医療機関や薬局でのオンライン資格確認利用件数のうち、マイナ保険証の利用割合は23年11月時点で約4%と伸び悩んでいる。廃止まで1年を切った23年12月、厚生労働省は医療機関や薬局に対し、マイナ保険証利用促進のための二つの支援策を打ち出した。

利用促進にインセンティブ

 一つは、マイナ保険証利用率の増加量に応じた金銭的な支援だ。

 支援額は各薬局の取り組み状況によって異なり、23年10月時点の利用率との比較で、対象期間(前半[2024年1~5月]、後半[24年6~11月])の平均利用率・総利用件数に応じて決定される(表1)。

 例えば、月1000枚の処方箋を応需する薬局で、23年10月の利用率が5%(50人[名寄せ処理後]/1000枚)、24年1~5月の平均利用率が25%(1250人[名寄せ処理後]/5000枚)だった場合、20%ポイント増で1件当たり60円の支援単価となる。支援総額は、1~5月のマイナ保険証の総利用件数(名寄せなし)が1500件とすると、9万円(60円×1500件)となる。

表1 マイナ保険証利用率の増加に応じた支援(厚労省の資料を参考に編集部作成)

 支援額の交付に当たって個々の薬局から利用件数等の実績報告は不要で、保険者から提供されるデータに基づき社会保険診療報酬支払基金から年2回(前半期・後半期)支払われる見込みだ。

 二つ目が、顔認証付きカードリーダー増設の支援。23年10月から24年3月のいずれかの月で、マイナ保険証の月間利用総数が500件以上の薬局には、顔認証付きカードリーダー・資格確認端末1台分の購入費用と工事費の2分の1が補助される。補助の上限は1台分で27万5000円だ。

 厚労省保険局医療介護連携政策課保険データ企画室室長補佐の栗林真氏は、これら利用促進策の狙いについて、「特に利用件数が少ない薬局での利用促進を目的としており、まずはマイナ保険証の受付業務に慣れてもらいたい。利用実績の通知を行うので薬局ごとに自主的な目標を設定して、受付の際に『マイナ保険証はお持ちですか』などひと言声をかけて案内してほしい」と話す。

マイナ保険証のメリットは?

 マイナ保険証を巡っては、負担割合の誤表示等のトラブルもあり、利用する側から不安の声も挙がっている。だが本来、患者にとっては、特定健診や薬剤情報をマイナポータルで閲覧できたり、高額療養費制度の一時支払いの手続きが不要になったりといった利点がある(図1)。また、マイナ保険証を利用するインセンティブとして、2022年10月に新設された「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」は、マイナ保険証を利用した方が(同加算2、薬局だと1点[算定回数6カ月に1回])、利用しない場合(同加算1、3点[同])に比べて点数が低く設定されている。

図1 マイナ保険証の主なメリット(厚労省の資料を参考に編集部作成)

 薬局側にとっても、マイナ保険証を持参してもらうことで、当該患者の最新の保険資格情報や、診療・薬剤、特定健診等の情報が取得できるなどのメリットがある(図1)。年明けから前述の金銭的支援も加わり、今後は薬局でマイナ保険証の利用を呼び掛ける機会が増えそうだ。

引用https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/trend/202402/583121.html

この記事が参加している募集

仕事について話そう

2000年富山国体少年男子メディカルトレーナー 2001年富山県立氷見高等学校男子ハンドボールメディカルトレーナー 2021年ハンドボール日本代表チームにメディカルトレーナーとして合宿に参加 2023年富山ドリームススタッフ