見出し画像

介護保険施設に24時間対応可能な協力医療機関の確保を義務付けへ

厚生労働省は2023年11月16日、社会保障審議会・介護給付費分科会を開催し、2024年度介護報酬改定における高齢者施設等と医療機関の連携強化について議論した。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院の介護保険施設では、入所者の急変時等への対応が課題となっており、休日や夜間の相談や診療体制の確保、緊急時の入院体制を確保している等の要件を満たす協力医療機関を定めることを義務化するという提案がされた。委員からは、「全ての地域での実現は難しいのではないか」と懸念する意見が挙がった。

 介護保険施設の運営基準では、協力医療機関を定めることとしているが、協力医療機関の種別や協力内容については規定がなく、連携内容は様々だ。厚労省のデータによると、例えば医師の配置が必須ではない特養における協力医療機関の種別は、「その他の病院」が50.6%で最も多く、「地域医療支援病院」が33.4%、在宅療養支援病院(在支病)は6.5%にとどまった。連携内容は、「入所者の診療(外来)の受け入れ」が78.8%で最も多く、「入院の受け入れ」は60.6%。「緊急の場合の対応(配置医師に代わりオンコール対応)」は17.4%にとどまっている(図1)。

図1 特養における協力医療機関との連携内容(複数回答)
出典:2023年11月16日社会保障審議会・介護給付費分科会資料5
※クリックすると拡大します。

介護・福祉施設からの入院の75%が急性期一般入院料1に

 今年3月に開催された「2024年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」では、要介護者等の高齢者に対応した急性期医療の現状として、介護施設・福祉施設からの入院患者の約75%が急性期一般入院料1の病棟に入院しているデータが示された。入院中の生活機能が低下することから、提供する医療の内容と要介護者等の高齢者に求められる医療の内容に乖離(かいり)がある可能性が指摘されていた。

 こうした背景から厚労省は、施設内で対応可能な医療の範囲を超えた場合に、協力医療機関との実効性のある連携によって適切な対応が行われるよう、協力医療機関の要件の義務化を提案した。義務化する要件は、(1)入所者の急変時等に、医師または看護職員が夜間休日を含め相談対応する体制が確保されていること、(2)診療の求めを受け、夜間休日を含め診療が可能な体制を確保していること、(3)当該施設での療養を行う患者が緊急時に原則入院できる体制を確保していること──の3点で、1年間の経過措置を設ける。また、複数の協力医療機関でこれらの要件を満たすことも認める方針を提示した。

 この提案について委員からは、医療と介護の実効性のある連携は必要であるとしながらも、「地域により医療連携の形は異なり、課題も様々である。要件を満たす医療機関を確保していくのは難しいのではないか」と懸念が示された。また、「協力医療機関を在支病などにシフトチェンジしていくのか」といった質問に対し厚労省は、「在宅療養支援診療所(在支診)や在支病は有力な連携先候補となるが、病院種別を限定するというよりも、地域の中で機能を相談して最適化を図ってほしい」と回答した。

 日本医師会常任理事の江澤和彦氏は、懸念を理解するとしつつ、診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会(中医協)総会でも介護保険施設等をどのように支えていくかの議論がされていることを紹介。「介護施設から気軽に声を掛けられる『顔の見える』関係性を築いていくことが重要。連携を深めると救急搬送が減り、介護職員が病院に搬送する事例も出てくるだろう」として、介護職員が高齢者を搬送した場合の評価についても検討を求めた。

 中医協での議論を裏付けるデータである「2023年度入院・外来医療等における実態調査(施設票)」では、地域包括ケア病棟等の届け出の在支病等において、「介護保険施設からの電話等による相談対応」はほとんどの医療機関で対応可能だった。一方、「緊急時の往診」は機能強化型在支病で対応可能な施設が最も多くなったが、同施設においても約7割にとどまっていることが示されている。

 高齢者施設等と医療機関の連携強化については、入院時の医療機関への情報提供、医療機関からの患者受け入れの促進も論点に上がった。老健施設と介護医療院の入所者が居宅等へ退所する際に、退所後の主治医に診療情報提供書を添えて紹介した場合に算定できる退所時情報提供加算(500単位)を、医療機関へ退所した場合にも算定できるよう評価の拡大が提案された。しかし委員からは「日常的な医療機関との情報共有を評価すべきではないか」といった意見が相次いだ。医療機関からの患者受け入れの促進では、老健施設が急性期病院への定期的な情報共有を行っている場合等、入院日から一定期間内の医療機関の退院患者を受け入れた場合に、初期加算(30単位/日、入所日から30日間)の引き上げをすることが提案された。

2000年富山国体少年男子メディカルトレーナー 2001年富山県立氷見高等学校男子ハンドボールメディカルトレーナー 2021年ハンドボール日本代表チームにメディカルトレーナーとして合宿に参加 2023年富山ドリームススタッフ