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坂木 司【和菓子のアン】~和菓子を語れるってちょっと素敵に見えますよね~

こんにちは、りょうこです。

書評をブログからnoteに引っ越ししてきました。

今回ご紹介する本はこちら。

坂木 司著【和菓子のアン】

ページ数 :393ページ(解説除く)。5つのエピソードから成ります。

一言:食べ物が美味しそうな本が好きです。ミステリーと言うほどではない軽い謎解きとともに、普段あまりなじみのないデパ地下の裏側と上生菓子がわんさか出てきます。和菓子の雑学を学びつつ、なによりとっても美味しそう。1話読み終わるごとに和菓子屋さんに走りたくなりますよ。

お勧め度(りょうこ調べ):★★★★☆

あらすじ

上生菓子

主人公の梅本杏子(きょうこ)ちゃんは、商店街のある街で生まれ育った女の子。ちょっとぽっちゃりの体型を気にしている18歳です。

進学も就職も決めずに高校を卒業した杏子は、デパ地下の和菓子屋「みつ屋」さんでアルバイトを始めます。お店を決めた基準は、おしゃれすぎない・制服がフリフリしていない・お店に男性がいない等、完全に消去法でしたが、仕事のできる男前な性格な店長(女)、和菓子の知識ならピカイチの職人志望乙女な社員(男)、キュートで頼りになる女子大生アルバイト(元ヤン)と働きながら、和菓子の奥深さや魅力に目覚めてく成長物語です。

りょうこの書評

杏子ちゃん(通称アンちゃん)がとにかく良い子なんです。

そんなアンちゃん、やりたい仕事も特に思いつかないし、専門行くほどやりたい勉強もないし、大学はお金かかしと何も決めずに高校を卒業してしまいます。ですが、家族は特に気にしている風でもなく、何も決まらなければ地元の商店街のどこかのお店を手伝えばいいよねーという雰囲気が読んでいて楽です。
アンちゃんは、ぽっちゃり体型の1点で「自己肯定感」がとても低いのですが、

・まじめ
・働き者
・誰とでも分け隔て無く仲良くなれる(ただし、男性は除く)
・勉強熱心
・商店街仕込みの接客上手
・商品への愛が深い(説明がとても美味しそう)

と、大人目線で見るとこんな子がアルバイトに来てくれたら最高!!です。

そんなわけで、店長からも同僚からも、フロアの主のようなおばさまからもかわいがられます。読んでいてすがすがしい。応援しがいがあります。

そして、和菓子。上生菓子、ご存じでしたか?(私はあまりなじみがありませんでした)

水分量等の詳しい定義はきちんとあるようですが、ざっくり説明すると、

”職人さんが季節毎に技術と工夫を凝らして作り、お菓子をイメージした「菓名(かめい)」がつけられる、お茶会の席などで食べられる上等な和菓子”

のことのようです(素人説明なので、違う部分がありましたらごめんなさい!)。

本書には季節毎に5つの章があるのですが、それぞれに出てくる上生菓子の菓名を書き起こしてみました。

和菓子のアン
5月:兜・薔薇・おとし文
6月:青梅(あおうめ)・水無月・紫陽花

一年に一度のデート
通年のお菓子:松風
7月:星合(ほしあい)・夏みかん・百合
8月:清流・鵲(かささぎ)・蓮

萩と牡丹
9月:光琳菊(こうりんぎく)・跳ね月・松露

甘露家
12月:柚子香(ゆずこう)・田舎家(いなかや)・初霜
星夜(せいや)・甘露家(かんろや)

辻占の行方
1月:早梅(はやうめ)・福寿草・風花(かざばな)
未開紅(みかいこう)・雪竹(ゆきたけ)・永松(えいまつ)

全部、お菓子の名前なんですよ。読んでいるだけでどんなお菓子なんだろう~とわくわくしませんか?

本書のなかで、アンちゃんがお客様にする和菓子の説明がとっても美味しそう。

店長さんも乙女社員さんも元ヤンちゃんも、みなそれぞれに癖がありますが、仕事熱心でとてもいい人です。アンちゃんをいじめたりしません。

一応謎解き部分もありミステリーに分類されているようですが、謎は軽めですぐに解決します。

美しく美味しそうな和菓子の世界に浸りながら、アンちゃんを応援したくなる一冊。

食べ物が美味しそうな本は正義ですよね。続編もあるようなので、是非読んでみたいと思います。

そうそう、「和菓子のアン」って「赤毛のアン」オマージュだろうなと思っていたら、続編の題名は「アンと青春」だそうですよ(笑)




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