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#メンタルエッセイ54

ふきのとう

北国も桜が咲き始めました。
家の裏の防風林にも桜が咲いてくれました。
桜の下に目を落とすと、ふきのとうが恥ずかしそうに芽をだしていました。

兄が二度目の入院をしたと聞きお見舞いに行きました。
ベッドの横に座り久しぶりに子供の頃の話をしました。

北国へ帰る日、兄の顔を見て今帰ってはいけないと強く感じました。
足を擦ったり手を握ったりしていると、隣の畑のおばあちゃんが病室のドアを思い切り開けて「ふきのとうを見つけたよ、もう春がきたから一緒に畑仕事しようね」と、小さなふきのとうを兄のベッドに持ってきてくれました。
兄は「そうだね」と小さな声で答えていました。

義姉は看護師でしたので、兄の旅立が近いと感じたらしく、兄の枕の下に兄と約束していた、阿弥陀如来の写真を入れました。

兄に「写真を入れたよ、もう大丈夫安心して」と耳元で話しかけていました。

兄を病院から自宅へ。
家の前の畑には大きなトラクターが停めてありました。
作業室には、袋に入れかけた野菜がありました。

後に
父に「兄がスキルス胃癌だと聞いていたの?」
父は兄から「治らない癌です、先に逝くことを許して下さい」と言われたそうです。兄は父にはいつもこのような話し方をしていました。

うつになった「私のことをお願いします」と元夫に何度も電話してくれいたそうです。

ふきのとうを見つけると、兄に会えたような気がします。


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