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#メンタルエッセイ40

 おくりびと

旧義母は癌で入院をしていました。
「もう、時間が余りないので付き添ってあげて」と、看護師から言われました。義父が病院の付き添いは体が持たないと言うので、その日から病院の付き添いをすることにしました。

薬の副作用なのか「虫がいっぱいいる」「事務所のそうじに行ってくる」と起き上がろうとしました。「心配しないでそうじ終わったからね」この繰り返しでした。
亡くなる前に、意識が鮮明な日がありました。
ベッドに座り、窓から外を見ている義父の背中をみながら「私が死んだらきっと再婚する」と言いました。
「再婚なんかしないよ、大丈夫」とベッドに寝かせました「こんなに痩せてしまって」ビックリし悲しくなりました。
あんなに戦った日々があったのに。

義父は納棺師をお願いしました。
納棺の儀は、映画『おくりびと』と重なりました。浴衣からお着せ替えの間、義母の肌が見えることはありませんでした。
まるで、セレモニーのように過ぎていきました。
最後のメイクになると、義母の使っていたものを使いたいとお願いされました。
「生前と変わらないお顔で送りたいのですがご要望ありますか」と、聞かれました。ピーチが「私の口紅の色好きだよ、若かったらつけたいと言っていたので、口紅つけてもいいですか?」納棺師は、それは喜ばれますね。
ピーチは、一生懸命口紅をつけました。

棺桶に仕付のついたままの着物を掛けて上げました。

一方、私の母のメイクは誰も入れない気満々の二人の女性、襖をとじました。
「お支度できました」と逃げるように帰っていきました。

襖を明けると、認知症の父が「誰だ」と聞いてきます。
昭和の演歌歌手(チータ○)のように、七三分けされていました。姉と二人で前髪を整えてあげました。
お母さん、楽になりましたか?
ゆっくり休んで下さいね。


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