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用水路事件

「チョー気持ちいい!」

アテネオリンピックで北島康介選手が金メダルとったときの名言覚えていますか?

うちの長女の名言「めっちゃ気持ちいい」が出た時は北島選手とは一味違うハラハラドキドキの瞬間でした。

ある日の下校時、自閉症の長女、人工呼吸器をつけた次男、そして私の三人が家に向かっていました。

いっしょに下校していた2年生の友達と用水路の脇を歩いていた長女。
私は次男のバギーを押しながら、他の一年生3人と話しながら歩いていた。

曲がり門を曲がったら自宅というところで突然イヤな音が響いた。

ドボーン!

なになに?!

そこには、用水路にどっぷり浸かって立っている2年生の友達と、仰向けになって手足をバタつかせてアプアプ溺れている長女の姿が。

私は次男のバギーを押していたので、一瞬どうしていいか分からず「うそーっ!」と心の中で叫びました。

幸い、2年生はすぐに立ち上がってくれていたのでよかったが、長女は用水路の水を飲んでパニック状態。

次男のバギーを道の真ん中に置いたまま、私は背負っていたリュックとスマホを投げ捨てて用水路に飛び込んだ。

ズルッ

用水路の底は泥だらけで、その泥に足をとられて私は用水路で派手にずっこけた。

全身泥だらけになった私はすぐさま長女を抱えた。

まずは2年生を押し上げ、その後長女を押し上げた。
みんな怪我もなく無事でよかったとホッとしたのもつかの間

長女の第一声

「めっちゃ気持ちいい!」

その顔、北島選手が金メダルを取ったときの顔。

確かに今日は6月の蒸暑い日。ひんやりした用水路の水は気持ちいいかも。

いやいや、あなたさっきまで溺れてたでしょうが!

この楽観的な発言に私は思わず、

「ちゃんと白線の中を歩かなかったから用水路に落ちたんだよ。溺れたら死んじゃうんだから、ダメ!」と。

緊張の場面での「めっちゃ気持ちいい」に子どもたちは大爆笑。

やられた。

私の言葉はあっさり右から左に受け流されてどこかへ行ってしまった。

泥だらけの長女と私と友達のそばに、次男のバギーを押してくれる子と私のリュックとスマホを持ってきてくれる1年生の子どもたち。

自分なりに考えて手助けをしてくれるみんな、ありがとう。

でもここは母として叱らなければならない場面。

みんなとバイバイした後に、
「長女ちゃんちょっと聞きなさい。お母さんいなかったら死んでたかもしれないよ。今度からは用水路側じゃなくて白線の中を歩いて帰るんだよ。分かった?。」と長女の心に響くように力を込めて一喝。

その大きい声に反応して、3人の一年生がブロック塀の影から叱られてる長女をこっそり見ている。

君たちも気を付けるんだぞ。も伝わったかな。

ちょうど次男の訪問看護師さんが家にきてくれたから、次男のことは訪問看護師さんにパス。

私はそのあとのことを頭をフル回転させて考えた。
用水路に落ちる瞬間は見ていなかったが、今までの経験からいくときっと長女が先に用水路を覗き込んで滑って落ちそうになったのを、友達が助けようとして用水路に落ちてしまったに違いない。

そして、大人の私がそばにいながら防げなかった。私のせいだ。

2年生の友達のお母さんとはママ友だから家も知ってるし、すぐに謝りにいこう。

「お風呂で泥を流したら、家に謝りにいくから、ゆっくり歩いて帰れる?」と2年生の友達に聞いた

「全然大丈夫だよ!気持ちよかったし~。」

2年生が家に帰っていくのを見送って、すぐに私と長女はシャワーを浴びて、車に飛び乗り、友達の家に向かった。

家に向かっている途中で友達と1年生3人組を見かけた。
ランドセルをおろして中身を確認しているところだった。

そうか!ランドセルの中身がぐちゃぐちゃかも。
冷や汗がながれた。

友達の家の前に車をおいて、友達のところまで歩いていった。
「ランドセルの中濡れてた?!大丈夫?」

「大丈夫だったよー」

ほんとに!?用水路にドボンと落ちたのに?!

恐るべしランドセル。

友達の家にはお父さんがいた。

私は必死に謝罪した。

私の謝罪に困惑しつつも、みんな怪我なく無事だったことにホッとした様子。

その様子を見ていた子どもたちが、用水路に落ちる瞬間のことを説明してくれた。
「あのね。友達ちゃんが川を覗いててね。そしたらね、長女ちゃんがね、友達ちゃんにね、もたれかかってさ。そしたらね、友達ちゃんがね、滑って落ちたから長女ちゃんも落ちたんよ。」

そーだったの?!
私の思ってたのと違う。

長女を助けようとして落ちたんではなかったのか。

それにしても、用水路覗いてる子にもたれかかったら落ちるの想像できんかねー。

想像できないよねー自閉症の特性だから危険予知はできなかったよね。

仕方ないか。

ただ今回、友達を巻き込んでしまったのは私の責任。


ママ友にもLINEに「私がついていながらにほんとにごめんなさい。」と謝罪。

そしたら、仕事終わりにうちまできてくれた。

「うちの子も調子にのるとこがあって、用水路の方に行ったんだと思うわ。お母さんが助けてくれたって聞いたよ。ほんまにありがとうね。」

お礼にとアイスを3箱も持ってきてくれた。

こちらの不注意だからとお断りしようとしたら、
「あんまり自分のこと責めないで。次男君のことも見ながらだし、みんなをみるのは大変よ。うちの子も調子にのったところがあったし、うちの子を助けてくれたからそのお礼。これからも良い付き合いしたいから受け取って。」と

アイスをいただいてしまった。

その心遣いがほんとうに有り難かった。

こんな家族ですがこれからもどうぞ仲良くしてください。

私たちのやり取りを見ていた長女が一言。

「アイスもらえるんだったら、また川に落ちよっかな!」

いや、もう落ちないでください!

この一件は、私にとっての日常の一部。
次は何をしでかしてくれるのか。


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