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ブレークスルー感染及び死亡者に関する統計分析(1)(ヘリテージ財団の報告書)

写真出展:200 DegreesによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/200degrees-2051452/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1794122

 ヘリテージ財団は2021年8月12日に、ブレークスルー感染・死亡者に関する統計分析に関する報告書を発表した。内容は、CDCの統計数値の解釈誤り、ガイダンスの不当性、ワクチンの効果などについて論じるものである。日本でも分科会や感染予測などに批判が多いが、日米どちらも同じような誤りを犯しており、コロナ対策については、うまくいっている国はないようだ。報道などに惑わされずに今後の推移を予測する際に有用であると考えられることから、本報告書の概要を紹介させていただく。ただ長文になることから、2回に分けて紹介することとする。

↓リンク先(A Statistical Analysis of COVID-19 Breakthrough Infections and Deaths)
https://www.heritage.org/public-health/report/statistical-analysis-covid-19-breakthrough-infections-and-deaths

1.本報告書(1)の内容について
 ・2020年12月に出現したコロナウィルスの変異株であるデルタ株の出現により、感染が再拡大している。2021年7月末の疾病予防管理センター(CDC)の試算によると、デルタ株はアメリカの新規COVID-19感染者数の80%以上を占めるとしており、このことに伴い、CDCは以下の新たなガイドラインを発表した。

 〇 ワクチン接種済みの者は、特に免疫力低下又はCOVID-19由来の深刻な病気のリスクが増加している場合もしくは家庭に免疫力低下又はCOVID-19由来の深刻な病気のリスク増加、ワクチン未接種者(強調)がいる場合、感染拡大のレベルに関わらず、マスクを着用すること。
 〇 ワクチン接種済みの者が、COVID-19感染の疑いがある者もしくは感染が確認された者と濃厚接触した場合、接触から3日から5日後に検査を受け、14日間もしくは検査結果が陰性と判明するまで、公共の屋内施設でマスクを着用すること。
 〇 ワクチンの接種状況に関わらず、全ての教員、職員、学生及び学校への訪問者は屋内でマスクを着用すること。

 このガイダンスの根拠として、CDCは7月30日に新たな報告書を発表した。この報告書は、マサチューセッツ州のバーンスタブル郡における、フェスティバル出席者の感染データを取り扱ったものであるが、これはアメリカ国民を代表するものでもなく、クラスターが発生したフェスティバルの出席者を代表したデータでもない。事実、報告書の作成者はワクチンの効果について結論を出すには不十分であるとしているが、CDCや報道はワクチン接種済みの人々にもマスク着用義務化が必要であることを支持したデータであると主張しており、ワクチンの効能について混乱させるようなメッセージを出している。

  ・ワクチン接種後の感染者及び死亡者の推移は、以下の通り。

COVID-19のデータ1

COVID-19のデータ2

 図1から、アメリカ人のワクチン接種が進むにつれ、2021年前半のほとんどを通じて大幅に下落したことがわかる。現在デルタ株による感染者が増加しているが、新規感染者の多くはワクチン未接種者であり、死亡者数は、ワクチン承認前と比較して及ぶべくもない水準である。
 2021年8月4日現在、1億6400万人以上のアメリカ人がCOVID-19のワクチンを2回接種済みであり、1億9100万人以上が少なくとも1回の接種により部分的な免疫を取得している。CDCは、ワクチン接種済みであってもCDCは7,525人が入院ないしは死亡していると報告しているが、この数値はワクチン接種済み者の0.005%しか占めていない。感染者数の74%は65歳以上であり、入院者の26%は無症状ないしはCOVID-19に関連したものではなく、1507人の重症者数のうち21%(316人)は無症状ないしはCOVID-19に関連したものではないと報告された。

 このデータだけでもワクチンの効果が十分に推察されるのであるが、CDCは布マスク着用により、COVID-19の拡散制御を支援することになるというエビデンスを示したと主張する「科学短信」を発表し、ワクチンよりも効果があるかのような情報を出している。しかしこの科学短信には、マスクの着用及び非着用の比較において、感染率には統計的に有意な差がないとした研究の知見を却下しており、マスクの感染防止の効果、ワクチン接種者及びワクチン非接種者についての差異について十分に検証されたものとはなっていない。

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