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クアッド及び中国の重要技術評価(5)(ASPIの報告書)

本記事は、クアッド及び中国の重要技術評価(4)(ASPIの報告書)の続編である。前回までの記事は、以下のリンクを参照。


表4:ワクチン及びバイオテロ対策に関する各国の政策

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 Covid-19の影響下にあっても、2019年から2020年にかけての特許件数もしくは論文数の低下は見られなかった。オーストラリアのワクチン及びバイオテロ対策研究成果は、他国と比較して非常に優秀である。

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 特許資産指標グラフは、特許の経済への影響力を示す。関連技術グラフは特許がその分野において付随する研究開発をどの程度支援しているのかを示す。

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 黄色の棒は、ポートフォリオサイズに基づいた特許の数量を示す。
 赤色の棒は、個々の分野における国家の平均競争力(特許の経済力)を示す。
 中国は特許件数が多いが、比較的競争力が低い。このことは、平均的な特許の質が低く、史上影響力も小さいことを示している。

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 中国は特許発表までの期間が平均0.99年であるのに対し、クアッドは2.35年から2.58年となっている。このことは、中国が医術の商用化・生産化を重視していることを示している。ワクチン及びバイオテロ対策研究は、複数年に渡り安定的な投資が行われていたが、Covid-19パンデミック後は研究に多くの資源が割かれるようになり、全体として論文数が増加している。オーストラリアの論文数は多いが、特許件数はそれに見合うほど増加していない。

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 オーストラリアは特定の政策目標を掲げており、影響力の大きい研究成果を産出しているが、産業全体を通じた成功のためには、より多くの投資が必要となる。

 中国は明確な政策目標を持ち、相対的に研究の経済効果が大きいが、その質は経済的効果ほど高くはない。

 インドは新興の感染症に対する政府の研究及び資金が不足しており、その予算も現在は国防予算の一部とはなっていない。(最も、Covid-19パンデミックに伴い、国防予算が使用される見込みである。)

 アメリカは全てのワクチン及びバイオテロ対策の分野における政策目標の実現に成功している。強力なアメリカの製薬産業による医療部門の商用化の成功により、論文の引用数が多くなっている。

 日本はワクチン開発及び生産を強化する戦略を策定しているが、まだ初期段階である。影響力のある研究開発能力は存在するものの、全体としてはそれほど進歩していない。

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