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テキサスの電力危機は続く(CFACTの記事)

 2022年1月28日にCFACTは、テキサスの電力事情に関する記事を発表した。内容は、昨年2月の電力危機から1年経過後の電力事情を分析し、電力危機から脱却できていないという現状を概観するものである。テキサス州の電力市場は最も自由化されており、容量市場が存在せず、エネルギーのみの多様な電力生態系が構築されている。昨年の電力危機でも供給それ自体は何とかなっていた部分があったが、再生可能エネルギーの流れでこの体制も危機に瀕しつつあることがわかる内容となっている。日本でも天然ガスの価格高騰などにより電力危機が訪れる可能性もあることから、今後の参考としてその概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Texas remains in energy peril)
https://www.cfact.org/2022/01/28/texas-remains-in-energy-peril/

1.本記事の内容について
 ・昨年のテキサス州電力危機から1年を経過したが、電力事情は改善していないようである。以下に、その理由について詳細に分析していくことにする。
 ① 寒冷化
   寒冷化がブラックアウトの主因であるとされていた。州全体の電力供給網マップが完成しない限り、冬季の電力需要に対応する天然ガス発電所建設計画を策定することはできないだろう。しかも重要発電施設のリストには天然ガス発電所が含まれておらず、昨年はガス供給施設に電力が供給されず、結果として天然ガス発電所の電力が利用できないという事態に陥った。

 ② 余剰電力
   昨年のブラックアウト前までは、十分な余剰電力がなかった。風力と太陽光発電は発電量が十分ではないものの余剰電力に加えられることになった。以下のグラフは3年前の2021年における余剰電力予測のグラフであるが、風力と太陽光発電を除いた場合の余剰電力が実質ゼロである。

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 余剰電力には、基盤となる発電所のみが含まれるべきだろう。天然ガス、石炭、原子力発電所は、(施設が適切に維持管理されている限りにおいて)24時間365日信頼できる電力である。(水力や地熱はテキサスでは利用不可能である。)
  ただ基盤となる電力も故障することがあり、かつ、予期しない電力需要急増なども発生することがあることから、余剰電力が必要なのである。
 以下に示すテキサス電気信頼性評議会による発電量のデータは、非現実的であり、テキサス州が十分な余剰電力を持っていないことを示している。

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余剰電力41.2%と言うと十分な量に見えるが、これは「通常の気象状況」という条件下での計算となっている。また風力と太陽光発電量を除いた場合、余剰率は24%となる。
 昨年の冬は高気圧帯がアメリカ中部に停滞し、十分な日照量がなく、風も偏在して吹いたため、これらの電力は十分ではなかった。

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昨年の電力危機におけるピーク電力は76,800メガワットであり、風力と太陽光発電量を除いた場合、実質的に余剰電力はゼロということになる。テキサス電気信頼性評議会は、基盤電力をほとんど拡充しなかったが、風力と太陽光発電だけは積極的に推進してきた。(ただ、その電力量は微々たるものである。)

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テキサスに必要なのは、基盤電力の増強である。

2.本記事読後の感想
  再生可能エネルギーへの過激な移行は、悲劇しか生んでいない。ヨーロッパの悲惨な電力事情を見ればわかる通り、エネルギー価格の高騰により経済が持続不可能になっている。昨年電力危機に苦しんだにもかかわらず、化石燃料敵視政策は何ら変わっておらず、テキサスもこの流れに抗し得ないようだ。
  エネルギーのみ市場ということで、将来向けの発電所建設の積み立てをせずに余剰電力確保を行うというモデルは、非常に危険なもののように見える。一時的にうまく行っているように見えても、再生可能エネルギーのような信頼性の低い電力が入り込みやすくなり、電力網が弱体化する可能性をはらんでいる。今回の件を理解するには、以下の2つの記事を読むとわかりやすいと思われる。

  テキサス州の電力市場の詳細に関しては、以下の記事がわかりやすい。
 https://energy-shift.com/news/4a0ab0d7-5eee-4083-a7f9-0f54b7707b69

  その他、昨年のテキサス電力危機の記事については、以下の記事を参照。
https://energy-shift.com/news/f7c1b1fd-3bea-4d94-b246-1c2ce7abe933?origin=%E5%B1%B1%E5%AE%B6%E5%85%AC%E9%9B%84&href=/news/author/db3e0bcb-136a-4ea3-ae86-89a385787535

※ 著者は再エネ推進論者であり、やや再生可能エネルギー批判が甘いような気がするため、事実の部分だけに着目することをお薦めする。

  エネルギーに乏しい日本が再生可能エネルギーを大量導入した場合の悲劇が、テキサス州に現れていると言えよう。日本はこういった悪い事例を模倣する必要はなく、独自の電力戦略を策定し、実践するべきである。

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