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クアッド及び中国の重要技術評価(2)(ASPIの報告書)

本記事は、クアッド及び中国の重要技術評価(1)(ASPIの報告書)の続編である。前回の記事は、以下のリンクを参照。

 ・4つの重要技術のうち、まず水素エネルギーを取り扱う。水素エネルギーとは、水素を燃料とする車両だけでなく、水素を活用したエネルギー貯蔵などを含めた技術全般を指す。水素セルはエネルギー貯蔵能力が経年劣化しないこと、二酸化炭素を排出しないことから、理想的な貯蔵能力として期待されている。
  各国は二酸化炭素を排出しないグリーン水素、カーボンニュートラルのブルー水素に着目しており、独自の水素戦略を策定している。クアッド各国及び中国の戦略は以下の通り。
 
表1:水素エネルギーに関する各国の政策

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インドは研究重視であるが、日本は特許重視である。

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 特許資産指標グラフは、特許の経済への影響力を示す。関連技術グラフは特許がその分野において付随する研究開発をどの程度支援しているのかを示す。

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 黄色の棒は、ポートフォリオサイズに基づいた特許の数量を示す。
 赤色の棒は、個々の分野における国家の平均競争力(特許の経済力)を示す。
 中国は特許件数が多いが、比較的競争力が低い。このことは、平均的な特許の質が低く、史上影響力も小さいことを示している。

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 中国は特許発表までの期間が平均0.78年であるのに対し、クアッドは1.89年から2.04年となっている。このことは、中国が医術の商用化・生産化を重視していることを示している。またオーストラリアとインドは論文数が多いが、これは研究に注力している、もしくは、商用化がうまくできていないかのいずれかであることを示している。

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 オーストラリアの研究成果は高度であり、他国に引けを取らない。しかし産業への波及効果は低い。

 中国の研究は経済的効果が相対的に大きいが、その質は必ずしも高くない。各分野における個々の影響力や経済価値はそれほどではないが、個々の成果を集約することで、政策目標を達成しようとしている。

 インドは明確な戦略を持っているが、インド企業の水素エネルギー工場の具体的な建設計画は、5年から10年後に発表される予定となっているなど、政策目標の実現には至っていない。

 アメリカは明確な戦略やイノベーション基盤、予算も整っているが、太陽光発電ほど熱心ではない。

 日本は明確な戦略を持っているものの、研究の取組は他のクアッド諸国から立ち遅れている。政策が実現される兆候がそれほど見られない。

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