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グリーンランドとレアアース(ハドソン研究所の記事)

写真出展:Dimitris VetsikasによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/dimitrisvetsikas1969-1857980/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=3817615

 ハドソン研究所は2021年4月9日に、グリーンランド国政選挙とレアアースの関係についての記事を発表した。内容は親中的な与党が敗北し、独立志向の野党が勝利したことで、情勢が変化するというものである。グリーンランド政府の最新の情報がまとまったことから、本記事の一部を紹介し、考察をお示しすることとしたい。

↓リンク先(Greenland’s National Election and the US-China Tech Competition: The Rare Earth Challenge)
https://www.hudson.org/research/16820-greenland-s-national-election-and-the-us-china-tech-competition-the-rare-earth-challenge

1.グリーンランドの状況について
  ・与党進歩党が4月の総選挙で敗退した。進歩党はクベーンフェルド鉱山でのレアアース事業を推進していたが、ウランも同時に採掘されることから、放射性廃棄物による環境悪化が懸念されていた。しかも、中国の支援を受けたオーストラリア企業のグリーンランドミネラルに開発の承認を与えていた。
 ・この鉱山事業に環境の観点から反対していたイヌイット友愛党(IA)が勝利した。しかし、少数与党であり連立を組む必要がある。(4月17日にナレラク党との連立内閣が発足した。)
 ・クベーンフェルド鉱山は、今後25年間で、毎年約4万3000トンの生産が見込まれている。(世界の毎年の生産量は、毎年12万トン以上)これは世界の生産量の3分の1相当であり、かなりの埋蔵量である。
・その他の鉱山には、キラヴァート・アラングアット鉱山があり、採掘権については、他のオーストラリア企業のタンブリーズ・マイニング・グリーンランドが保有している。こちらはウラン採掘を伴わないため、こちらも有望である。
 ・現在の状況は西側諸国にとって望ましいものの、油断してはならない。レアアースの酸化物の処理については、中国がほぼ独占状態であり、採掘しても処理
  アメリカのパス山の採掘事業やヨーロッパの天然資源連合による協調投資などの取り組みをスピーディーに進め、中国に付け入る隙を与えないことが必要である。

2.今回の記事について
  グリーンランドは見逃しがちな所であるが、過去にトランプ大統領が購入の検討を表明するなど、地政学的に重要な土地でもある。最近は中国に傾斜気味だったことから、今回の総選挙の結果を奇貨として、反転攻勢を仕掛ける好機である。
  特にレアアースについては、環境規制の観点から埋蔵量が多い国でもなかなか生産量を増加させることができないという欠点があり、輸入先が増加することは非常に望ましいことだ。レアアースが安価になれば、半導体などの価格低下にもつながり、世界中に恩恵がある。
  ただ、日本はすでに領海内でレアアース埋蔵が確認されていることから、価格低下よりも輸入先の多角化ということの方が大きいだろう。過去に中国はレアアースの禁輸によってかえって損害を被ったことから、レアアースを脅迫の道具として使うという同じ轍は踏まないと考えられ、今後も生産を止めることはできないだろう。
  そもそも中国がレアアース大国であるのは、環境破壊を気にしないからであり、グリーンランドをだしに使いつつ、安くレアアースを輸入し続けることが日本にとって望ましい戦略だろう。
  グリーンランド政府は5月7日のニュースで、ウランを採掘しないという条件の下での鉱山開発を認めると発表しており、クベーンフェルド鉱山も条件が満たされれば事業が推進されると見込まれる。ただ、すでに中国がオーストラリア企業を通じて採掘権を取得しており、この点については注意が必要である。

 最後に、グリーンランドの情報は英語でも意外と少なく、まとまった知識を得るのはと骨が折れる。大まかに知りたい場合には、以下のリンク先にある動画をお勧めしたい。50分弱と長いが、飽きさせない構成になっている。

↓動画リンク先
 https://www.youtube.com/watch?v=WCLw9F-V4_I

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