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経済犯罪利益をいかに接収するか(RUSIの記事)

写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=6294991

 2022年1月27日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、マネーロンダリング対策の一環である、経済犯罪利益接収について論じる記事を発表した。内容は、12月に開催された民主主義サミットにおけるバイデン政権の提言を受け、イギリスの採用するべき政策について概観するものである。
イギリスのマネーロンダリング対策は掛け声だけで実質的には、あまり機能していない。特にジョンソン政権になってからは停滞気味であり、このことをいかに克服するのかが焦点となっている。FATFの評価が低かった日本も学ぶべき点が多いと思われることから、参考として本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(The Party’s Over: Confiscating Proceeds of Crime and Corruption in the UK)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/partys-over-confiscating-proceeds-crime-and-corruption-uk

1.RUSIの記事について
 ・バイデン大統領は、12月の民主主義サミットにおいて経済犯罪利益の接収及び強制送還を強化する戦略を発表した。このことを受け、ジョンソン首相も民主主義を毀損する違法金融の取り締まりをより一層強化すると宣言していた。しかし遅々として進まない経済犯罪対策は、このことでどれだけ推進されることになるだろうか。
 ・イギリスの経済犯罪対策は、掛け声だけは勇ましかった。2017年の金融犯罪法により、不明資産命令(UWOs)制度を確立し、更に資産回収活動計画(2019年-2022年)により経済犯罪の回収利益を毎年増加させることを公約していた。しかしこれらの取り組みは、あまり成功しておらず、起訴されていない事件の資産は全くといっていいほど回収されていない。
 ・イギリス政府の2021年秋の資産回収統計によると、2010年以降回収額は有意に増加していない。

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ただ成功しているものもあり、2018年度から2019年度に施行された資産凍結命令(AFOs)により、接収された資産は51%増加した。資産凍結命令は現金だけでなく銀行口座の接収も可能とするものであり、アゼルバイジャンのマネーロンダリング事件などにも活用されている。しかしながら、AFOsの件数は減少傾向にあり、政府の接収命令により回収された資産額も減少傾向にある。

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・では、イギリス政府が具体的にするべきことは何か。第一にイギリス内務省は、専門家、民間、国際社会における資産回収能力向上に努める、政府の資産回収をより強化することに尽力するべきである。第二に、問題は政府の資源を上回ることを正しく認識し、官民パートナーシップを強化し、社会全体で取り組むべきである。資産回収への取り組み強化は、マネーロンダリング対策で世界をリードする役割を果たすうえで重要である。このことにより国際社会からの評価が高まり、国内でも望ましい成果が達成されうるのである。必要なことは、言葉ではなく行動である。


2.本記事についての感想
 イギリスは金融センターであるがゆえに、ルールがある程度ルーズになってしまう部分がある。あまりに厳格だと資産が流出してしまい、かといってあまりにルーズだと不正金融がはびこることになる。
ジョンソン首相はEU離脱後の経済を心配してのことか、マネーロンダリング対策にはどこか及び腰な所があるが、マネーロンダリング手法の巧妙化、サイバー空間の拡大、デジタル金融の発展などの状況を鑑みれば、更なる対策が必要な状況である。具体的には、一定金額以上の送金に関する報告強化、電子マネー等の履歴管理強化、不動産や会社関係の登記簿情報管理などがある。こういった対策を一つ一つ着実に進めていくことにより、経済犯罪集団が慎重に行動するようになり、犯罪件数も減少していくことになるだろう。
日本はスパイ防止法などがないことから、こういった対策が樹十分である。外為法のようにあらゆる事項に適用できる法律もあるが、大雑把な法令だけでは到底対処しきれない。政権は違法金融などの問題について普及啓発に努め、マネーロンダリング対策の必要性について国民により認識を深めてもらうようにするべきである。

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