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半導体の投資を未来に生かす(ハドソン研究所の記事)

写真出展:jplenioによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/jplenio-7645255/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=3092486

 ハドソン研究所の2021年6月22日に、未来を見据えた半導体産業への投資についての記事を発表した。内容は、イノベーション及び競争法の投資の仕方をより効果的に未来に生かせるようにするための提言となっている。日本もこの流れにのって行動を起こしており、今後の方向性を占う際に参考となることから、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(CHIPs Funding Should Feed the Future, Not the Corporate Trough)
https://www.hudson.org/research/17036-chi-ps-funding-should-feed-the-future-not-the-corporate-trough

1.記事の内容について
 ・アメリカの経済は電子工学に立脚しているが、昨今の半導体不足により、自動車産業からゲーム機まで影響が出ている。また、TSMCやサムスンなどの強力な企業との競争にもさらされており、この状況が近々には改善されないことが見込まれている。
 この問題に対処するため、議会は半導体法、イノベーション及び競争法(現在は「エンドレスフロンティア法」という名称)により、半導体の製造等の工場建設に予算を割こうとしている。
 ・しかしこの予算はあまり有効なものとはなっていない。政府が主体となって補助金を支出する枠組みとなっているが、企業や民間のベンチャーキャピタルなどを活用しなければ長期的には電子産業の優位性が損なわれる。
  従って、より未来の半導体技術の開発に投資するよう優先順位付けしなければならない。現在、今後5年間で研究開発費に130億ドル計上しているが、TSMCは2021年だけでも63億ドル支出しており、金額としては微々たるものである。また研究対象も、回路の微細化からより複雑な回路へと研究資金を振り向けることにより、未来の需要を充足し、長期的な優位性を確保することができる。
  ・また政府は、半導体法により設立された官民連携組織の、国家半導体技術センターなどの民間のベンチャーキャピタルや専門家を通じて、研究開発に支出するべきである。
このことにより、分散化された不均一な回路設計や関連する生産技術などの困難な技術開発を支援することができる。これらの技術は最終工程まで判明することはなく、安全保障上も重要である。
 ・商用化に10年以上必要となる技術の研究開発も重要である。低消費電力のデジタルIC、革新的な半導体製品、新しいコンピューターなどは未来の市場への大きな可能性を秘めている。しかし成果が表れるまでの期間が長く、継続的な政府の支援が必要になる。
 ・現在の半導体サプライチェーン改善のため、アメリカの半導体製造及びパッケージ加工能力を向上させるべきである。従って、賃金や固定費の格差を埋めるために予算を割くのではなく、工場建設や設備投資などに振り向けられていない。また、アメリカの半導体企業はそれでもTSMCやサムスンの後塵を拝しており、経験値や顧客との関係性などの点で課題が多い。このため、アメリカ国内だけでなく世界各国との連携が必要となる。


2.本記事読後の感想
 ヘリテージ財団の記事と同様に、今回の法案には懸念を示した内容になっており、新しい技術に投資することの重要性を説いている。
 アメリカは半導体製造機器や一部重要部材のシェアでトップクラスとなっている日本を取り込んでおく必要があり、日本もこの流れの中で歩調を合わせた行動を取り始めている。TSMCとの共同研究がその嚆矢であるが、これが実を結ぶまではかなり時間がかかる。短期間で成果が出ないからと言って、簡単にあきらめてはならない。
 一部陰謀論的に、TSMCに技術を取られる、スパイが入り込む、日本だけ損をするといった批判をする人がいるが、これは企業間の取引であり、話はかなり込み入ったものになるだろう。少なくともTSMCは技術を中国に取られないよう細心の注意を払っており、中国と取引していることそれ自体をもって、中国とつながっているとするのは早計である。技術を取られて損をするのはTSMC自身であり、ファーウェイなどにみすみす競争で負けるような行動はとらないと考えるのが妥当である。
 ただ共同研究において、その情報が漏洩しないようにすると共に、日本が得意とする方向性で発展させていく必要があるだろう。TSMCが得意とするところは、回路の微細化であり、その他の技術が突出しているというわけではない。例えば、酸化ガリウムのような新素材などの研究が進められているわけではなく、現在の微細化が限界に達する前に新素材を商用化できれば、状況は一変する。このため、日本はTSMCが現在の技術からなかなか脱却できない状況を作りつつ、新素材で逆転することをしたたかに考えなくてはならない。

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