リソグラフィー装置と半導体(THE DIPLOMATの記事)
写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1607174
2022年8月1日にTHE DIPLOMATは、半導体のサプライチェーンに関する記事を発表した。内容は、半導体の多岐にわたるサプライチェーンの中であまり注目されていないリソグラフィー装置が大きなカギを握っていることを指摘し、現在の半導体技術の状況を概観するものである。半導体については様々な情報が飛び交っているが、サプライチェーンに関する情報は意外と少ないのが現状であり、そういった意味で本記事は貴重なものと言える。今後の半導体産業の行く末を見通すうえでの参考として、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(Lithography: The Achilles’ Heel of China’s Semiconductor Industry?)
https://thediplomat.com/2022/08/lithography-the-achilles-heel-of-chinas-semiconductor-industry/
1.本記事の内容について
・米中両国は、事項での半導体生産を強化するため、各種政策を打ち出している。中でもファブと呼ばれる生産工場に注目が集まっているが、半導体生産に関するサプライチェーンは数十か国が関わっており、部品や製品については300項目にも及んでいることを忘れてはならない。目立たないものの特に重要なものとして、リソグラフィー装置がある。
・リソグラフィー装置は、シリコンウエハーに回路を描画する装置であり、中国にとって大きな弱点となっている。本装置は競争性が低く一部の国でしか生産できないことから、アメリカ商務省産業安全保障局は輸出管理関連法規を域外適用し、中国が装置を入手できないようにしようとしている。6月下旬の商務省産業安全保障局会議において、レイモンド商務長官は、中国がアメリカの技術で半導体を生産していることから、中国がロシアに半導体を輸出しようとした場合、接収することができると宣言した。
・ワシントンの専門家は、半導体生産装置及び電子回路設計自動化が中国の弱点であると指摘している。2020年以来、政府は先端極紫外線機器を輸出規制することで、中国がリソグラフィー装置を調達できないように対応してきており、現在より包括的な工場関連製品の禁輸を検討している。この輸出規制は、14ナノメータープロセスノード関連製品の規制や、中国の技術革新の抑制などを含めるべく検討している。
・アメリカ主導の多国間の輸出規制枠組みは、中国にとって大きな脅威となっている。上海マイクロエレクトロニクスは、90ナノメートルノードを大量生産し、14ナノメーター関連機器もそれなりに生産しているものの、オランダのASMLのはるか後ろにある。ASMLは7ナノメートル以下の回路を描画する装置を生産しており、中国は自国で装置を生産できない以上、ASMLとの取引ができなければ先端半導体を生産することはできない。
・5月下旬のオランダ歴訪において、グレーブス商務副長官は政府高官と会談し、ASMLの深紫外線技術を中国に輸出しないよう要望した。深紫外線技術は28ナノメーター半導体生産の中核技術であり、中国のSMICにとって革新的な技術であり、大きな打撃を与えることができる。また日本のニコンやキャノンにも深紫外線技術を輸出しないように要望している。
・ただ中国も手をこまねいているわけではなく、TSMCやサムスンと同様に既存の深紫外線装置を多目的に活用することで技術革新しようとしている。例えばSMICは、深紫外線装置で7ナノメートル級の特殊用途半導体の生産には成功している。またアメリカ主導の輸出規制も、経済的な観点から各国から反発を受けている。ASMLと中国の取引は、2021年には27億ドルであり、同社の14.7%を占めていることから、簡単に輸出規制することはできないのである。経済的な現実、輸出拡大、自国生産推進など、半導体を巡る複雑さがますます増していくことになるだろう。
2.本記事読後の感想
たった一つの部品だけでサプライチェーンが止まるという現実は、今や多くの人々が認識していることだろう。だた、こういった部品を民主主義陣営が握っているからと言って安心というわけではない。コストを度外視すれば技術取得が可能なものや量産可能になるものがほとんどであり、唯一無二の技術というものはそう多くない。
中国が狙っているのもまさにこのことで、粗製乱造の中から一つでも当たればいいのである。従って、現在の技術力で実力を過小評価してはならず、プロパガンダに騙されて過大評価もしてはならない。また輸出規制は時間稼ぎに過ぎず、民主主義陣営は、多国間協力や自由主義でイノベーションを創出し続けなければ技術覇権で敗北してしまうということも念頭に置いておくべきである。
半導体は特にサプライチェーンが複雑多岐にわたっており、イノベーションも日進月歩であることから、技術覇権を語るうえで象徴的なものとなっている。将来の技術革新の動向を見据えるため、今後とも半導体に注目していきたい。
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