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パリ協定について:強制よりも市場原理を取り込むべき(ヘリテージ財団)

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 ヘリテージ財団の2021年2月25日の記事で、バイデン政権のパリ協定復帰についての記事が発表されていた。今一度パリ協定に関する状況を整理し、日本にとってどのような意味を持つのかについて考える材料として紹介させていただく。

↓リンク先(Paris Climate Agreement: Instead of Regulations and Mandates, Embrace Markets)
https://www.heritage.org/energy-economics/report/paris-climate-agreement-instead-regulations-and-mandates-embrace-markets

1.パリ協定の目標
  ・パリ協定の目標は、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をするものである。対象国は、途上国を含む全ての主要排出国である。
  ・合意には排出削減に関する法的拘束力のある要求事項はないものの、温室効果ガスの排出を削減するために、各国は「自国が決定する貢献(NDC)」を提出する必要である。強制ではないが、5年に一度の提出が求められる。
  ・緑の気候基金が創設された。発展途上国(小島嶼、後開発、アフリカ等)における他の気候変動適応及び軽減プログラムに補助金を拠出することを目的としている。
  
2.各国の状況
  ・中国(1位で23.2%の排出量)は、発展途上国の扱いを受けており、2030年まで排出量を増加させ続けることができる。(2020年の中国の石炭生産量は、2015年以来最大の水準となっており、石炭を大量に消費している。)
  ・インド(4位で5.1%の排出量)は、GDPに対する二酸化炭素排出量の率を削減することを公約した。GDP成長率よりも二酸化炭素排出量の増加が低いという見込みの目標であり、実際にはそれほど削減する量はそれほどでもないと考えられる。
・世界第5位の排出国であるロシア(5.1%の排出量)は、パリ協定を批准したが、排出削減計画を提出していない。
・パキスタンのような発展途上国(非附属書I国)は、エネルギー開発及び経済成長を優先しているため、排出量が指数関数的に増加すると明白に述べている。
・発展途上国の約7割は、国際金融からの資金提供を受けなければ目標を達成できないとしている。

3.再加入に伴うアメリカへの影響
  経済的な影響は以下の通り。(2016年ヘリテージ財団の分析による。)
  ・オバマ政権の設定した「自国が決定する貢献」を実施した場合、2035年までに平均的な4人家族の収入に年平均20,000ドル以上の損失、年平均400,000人近い失業、GDPの累積損失は2.5兆ドル以上の損失となる。
  
  ・アメリカのエネルギーの80%は、石油、天然ガス、石炭である。発電の3分の2は、石炭と天然ガスをエネルギー源としている。このため、日用品の電気料金や暖房などへのコストが増大し、日用品、サービスが高騰し、低所得者の可処分所得に深刻な影響を与える。

4.本記事における政策提言
   ・2019年にアメリカは世界最大の二酸化炭素排出量純減を記録したが、これは天然ガスの使用量の増加によるものであり、再生可能エネルギーではない。天然ガスを規制しても、大幅な削減は見込めない。
   ・再生化技術やバッテリー技術への投資が増加しているが、規制を課すことによりイノベーションのペースが低下し、投資が縮小する恐れがある。例えば、太陽光パネルに関税を課すことで、太陽光発電産業の成長が阻害されている。
   ・エネルギー効率化の新規プラントなどのコストに対し、全額経費化などで税控除をするべきである。現在の税制改革法で2022年まで全額経費化が認められているが、これを恒久化するべきである。
   ・国有地での天然資源生産の禁止を撤廃し、一般競争入札によるリース契約に道を開くべきである。
   ・国立研究機関により、イノベーションを促進するべきである。
   ・液化天然ガス輸出の許可を効率化するべきである。パイプラインはタンカーやトラックよりも温室効果ガスの排出量が少なく、ロシアアよりも高効率であり、環境に望ましい。
   ・時代遅れの国家環境政策法により、再生可能エネルギーが高額となってしまっている。適切な競争を促すため、こういった法律は改正されるべきである。

5.日本への影響について
  パリ協定が、いかにいい加減な枠組みであるかがよくわかる。「自国が決定する貢献」を集計しても、2100年に0.17℃気温が低下するのみであり、しかも強制ではないと来ている。損益分析をした資料も見当たらず、経済的に持続可能か否かといった検証もなされていない。結局はゴネ得ができる仕組みとなっており、わざわざ大風呂敷を広げる必要はない。2016年時点の資源エネルギー庁の資料によると、日本の排出量は世界全体でたった2.7%であり、これを全て削減したとしても、ほとんど大きな貢献にはならない。
  菅政権は、アメリカとの関係に配慮して前のめりになり過ぎている。自国の目標を高く設定するよりも、途上国支援を訴えるほうがまだ賢明な戦略だろう。例えば、日本の優れた火力発電所は、二酸化炭素をほとんど排出しないことから、こういったインフラを途上国に整備していくことの方が実際の貢献になる。いずれにしても、緑の気候基金に日本政府は多額の出資をしていることから、日本のインフラ事業の一環として売り込んでいく方が賢明である。

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