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国家サイバー長官の役割(CSCの記事)

写真出展:David MarkによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/12019-12019/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1623005

 サイバー空間ソラリウム委員会が、2021年2月24日に「国家サイバー長官の役割:FAQ」と題する記事を紹介していた。2021年国防権限法にて創設された役職であり、大統領上級顧問級として位置付けられている。今後のサイバー政策や戦略の展開に関係すると考えられることから、その一部をご紹介したい。
↓リンク先(How the National Cyber Director Position Is Going to Work: Frequently Asked Questions)
https://www.lawfareblog.com/how-national-cyber-director-position-going-work-frequently-asked-questions

1.国家サイバー長官(NCD)の役割について
 ・2018年にトランプ政権が、国家安全保障担当補佐官のサイバーセキュリティコーディネーターの役割を廃止してしまったことが動機の一つにはなっているが、これはメインではない。
  政権によってサイバーセキュリティの存在感が変化しており、一貫した政策や対応ができない状況が続いてきた。このような事態の打破が、NCD創設の主たる動機である。
 ・NCDの役割は、合衆国法典第10編(攻撃)及び第50編(インテリジェンス)のサイバー作戦及びサイバー事業以外のサイバーセキュリティに関する大統領上級顧問となっている。NCDには法律にて名目上の権限を有しているが、大統領の権限から独立しているわけではない。このため、他省庁、他の役職、NSCとの関係は、明確に決まっているわけではない。したがって、大統領令などにより明確にされることになるだろう。
 ・NCDは安全保障担当補佐官と共に、サイバーセキュリティに取り組むことになる。バイデン政権はサイバー及び新興技術担当の大統領副補佐官を新設しており、この役職との関係性も重要となる。具体的には主にサイバーセキュリティの戦略レベルでの業務が中心となり、NSCの委員も務めることになる。
 ・他省庁との関係においては、国土安全保障省のCISAとの関係が特に重要である。CISAは他省庁に対して優越的な権限を有していないことから、NCDが司令塔の役割を果たすことになるだろう。また、省庁間の縦割りや省益との衝突を調整することも期待される。
 ・民間部門との取り組みについては、CISAや商務省の米国標準技術研究所が実施している既存の取り組みを補完するのであり、取って代わるのではない。NCDは戦略や防衛政策の策定をメインとし、CISAは戦術レベルや技術的レベルの事項に注力するという関係性となる。
 ・NCDは、大統領補佐官や国務省の関係官と共に、サイバーセキュリティが主な議題となる国際会議に参加する。会議の準備作業にも参加する。
 ・上院承認人事かつ大統領任命人事であることから、立法府と行政府との間での調整も求められる。ホワイトハウス、各省庁とのやり取り、議会証言などの場を経験しながら、徐々にその役割を見出していくことになる。この地位を意義あるものにするのは、バイデン政権次第である。

2.本記事についての感想
 国家サイバー長官の創設は、サイバー政策にとって重要な取り組みである。むやみやたらに役職を新設することは良くないが、サイバーセキュリティが実世界に及ぼす影響を考慮すると、役職の新設は不可避だろう。
 ただその取り組みは順調ではなく、トランプ政権ですら、過ちを犯していた部分もあったのである。ボルトン自体は選挙における保守派向けの「客寄せパンダ」のという意味合いもあり、彼の地位そのものが重要ではないが、サイバーセキュリティに関しては若干油断があったのではないだろうか。インテリジェンス業界が充実しているため、既存の省庁の権限で十分対応可能と思ってしまいがちだが、省庁間の連携を取るのは非常に困難であり、一元的な司令塔がいた方がいい。この分野については以外にもエネルギー省が中
心的な役割を果たしているが、さすがに軍やインテリジェンス業界にまで指示を出すというところまではいかないだろう。日本で経済産業省が全てのサイバーセキュリティを担当するのと同じぐらい特異なことだ。
 日本でもデジタル庁ができて、デジタル監が各省庁に勧告権を有するというように言われているが、これはサイバーセキュリティではなく、システムなどの導入に関することが中心となるだろう。
 やはりNSCにサイバーセキュリティの司令塔を設置することが望ましいと思われる。今後もこの分野は世界の中心的な問題となっていくため、政府の動きから目を離さないようにしたい。

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