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COVAXを越えて:官民連携による発展途上国へのワクチン分配(1)(CSISの記事)

写真出展:torstensimonによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/torstensimon-5039407/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=5926664

 CSISは2021年9月13日に、世界のワクチン分配に関する記事を発表した。内容は、COVAXの枠組みの機能不全を指摘し、官民連携による適切なワクチン分配を提言するものである。今後のワクチン行政などの在り方に参考となる内容であることから、その概要を紹介させていただく。ただ長文になることから、2回に分けて紹介することとする。

↓リンク先(Beyond COVAX:The Importance of Public-Private Partnerships for Covid-19 Vaccine Delivery to Developing Countries)
https://www.csis.org/analysis/beyond-covax-importance-public-private-partnerships-covid-19-vaccine-delivery-developing

1.記事の内容(1)について
  ・2021年9月8日現座、世界の成人の58.9%は1回目のワクチン接種すらできていない状況であり、特にアフリカでは接種率が3.2%に留まっている。先進国と途上国との格差は開くばかりであり、供給問題を解消するには民間部門との連携により、特に需給双方の課題に取り組む必要がある。
 ・2021年6月21日に、バイデン政権は8000万回分のワクチンを途上国へ供給すると発表し、そのうち75%をCOVAX経由で、25%を2国間の枠組みで供給するとした。COVAXの目標は、少なくとも参加国の人口の20%以上を確保するというものであり、2021年までに20億回分供給するとしていたが、9月8日現在で2憶4300万回に留まっており、残り期間で6億4000万回分程度しか追加供給することができないことから、目標は達成できないと見込まれている。
 ・COVAXは、多国間に渡る官民連携の枠組みであるが、問題や困難への対応が十分にできていない。例えば、インドのセーラム研究所はCOVAX最大の供給者であるが、3月のインドでのパンデミックにより供給が停止されてしまった。その他の問題としては、コールドチェーンの構築、官僚制度の障害、異なる国際組織間(UNICEF、WHOなど)の縦割り、民間部門との不十分な連携などがある。
 ・このような状況を打開するため、バイデン政権は、ラスト数マイルの輸送戦略、ワクチン供給強化を打ち出しており、国際金融公庫を通じて、セネガルの生産業者、欧州投資銀行、フランス開発公社などと連携して、ワクチン生産を増強している。COVAX以外の残り25%のワクチン供給についても積極的に取り組むべきであり、特に新しい民間部音との連携を模索することが重要である。
 ・現在のワクチン供給の官民パートナーシップは、1990年代に始まったHIV/AIDS、マラリア、結核などの取り組みを踏襲したものである。例えばマダガスカルにおける、赤十字と連携したマラリア対策、2003年にブッシュ政権が開始したエイズ対策は50か国以上で展開され、8500億ドルが投じられてきた。最近ではワープスピード作戦により、通常8年から15年かかるワクチン開発を、12か月から18か月の間で完了するなどの目覚ましい成果を上げた。これら過去の取り組みは、パンデミック対応や既存のインフラ改善などの良い教訓になるだろう。
 ・民間部門は、ワクチン供給の中核を担っている。Mファーマはガーナに250万回分のワクチンを供給し、ファイザーは5億回分を途上国向けに供給するとしており、2021年7月に世界銀行は南アフリカのアスペンファーマケアと7億1000万ドルの契約を締結し、2022年後半までにジョンソンエンドジョンソンのワクチン5億回分を生産することとなった。
  生産のみならず配送においても重要な役割を果たしており、ガーナのドローンを活用した輸送やナイジェリアのアプリによる配送管理、大規模接種センター設置のための製薬会社とのパートナーシップなども展開されている。その他、ワクチン接種の教育も重要であり、コンゴやモザンビークでは地元の医師などに訓練を施している。
・このような取り組みにも関わらず、ワクチン配布に失敗している国々もある。ラテンアメリカ及びカリブ海諸国は、コロナウィルスによる死者が最も多い地域であるが、平均で23%の国民しかワクチン接種済みとなっていない。特に中央アメリカ、ジャマイカやハイチなどの小規模な島国でワクチン不足が深刻である。ハイチは大規模地震の発生、暴動、大統領の暗殺などの苦境にあって、基本的な医療の提供にも支障をきたしており、国民の2%程度しかワクチンを接種していない。最初のワクチンは7月14日の50万回分のみであった。また、アストラゼネカのワクチンを副反応への懸念から拒絶したこともワクチン不足に拍車をかけている。UNICEFなどによる太陽電池パネルによる冷凍庫の整備など、コロナウィルスパンデミックの発生前からの取組がなされているが、この状況を劇的に改善するには、大胆かつ強力な官民パートナーシップが重要になる。

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