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パイプラインの安全確保の提言(CSISの記事)

写真出展:jpenroseによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/jpenrose-33681/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=109025

 CSISは2021年6月10日に、パイプラインの安全確保に関する記事を発表した。内容は、権限の競合を避け、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)にパイプラインの安全確保権限を集約するべきとするものである。サイバー空間ソラリウム委員会(CSC)の提言とも類似性があり、今後のインフラ安全確保についても参考となることから、概要を紹介させていただく。

↓リンク先(TSA Should Relinquish Oversight of Pipeline Security)
https://www.csis.org/analysis/tsa-should-relinquish-oversight-pipeline-security

1.記事の内容について
 ・国内のサイバーセキュリティ権限は、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁に属しているが、パイプラインの安全確保については、運輸保安庁(TSA)が所管している。これは、2003年に国土安全保障省が創設された際に、運輸省からTSAが分離して国土安全保障省の外局となった名残である。
 ・TSAは、その成立から9/11のテロのような物理的な攻撃からの安全対策を重視しており、予算や人員の大半は航空安全の方に割かれている。2022年度予算案でも、陸上輸送などの予算は航空予算と比較して75%も少ない。また、サイバーセキュリティに関しても力点が置かれておらず、デジタル時代の安全確保を担うにはふさわしくなくなっている。
 ・TSAとパイプライン産業との特殊な関係性のため、安全規制はほとんど強制力がなく、監査を受けるか否かを選択することができ、監査結果の指摘事項を実践した結果についての報告義務もない。今回のコロニアルパイプラインのハッキング事件を受け、TSAは対策を取ってはいるが、ハッキング被害を受けた場合に12時間以内にCISAに報告することを求めているのみで、サイバー脅威への対処としては全くもって物足りないものになっている。
 ・従って、パイプラインの安全確保を担当するのは、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)がふさわしい。CISAは16の重要インフラ部門を所管しており、エネルギー部門や輸送部門も含まれている。TSAは自己の権限を守るのではなく、むしろCISAに専門的能力を提供するべきである。両庁とも国土安全保障省の管轄下にあることから、権限を適切に調整し、協調した取り組みを可能とするようにするべきである。

2.記事読後の感想について
 よくある省庁の縦割り問題について言及した記事となっている。CSCの提言でも問題になっている通り、権限の集約や整理は必要である。ただ、省庁の権限に手を付ける問題は、大きな政治課題であり、政治力のない政権にはできそうにないことである。現在のバイデン政権は目に見える失政がそれほどないため、推進することは可能であるように思われる。
 ただ、日本は各省庁の権限が強すぎるため、整理は容易ではないだろう。NSCのような官邸機能があったとしても、既存の省庁は権限を保護しようとして抵抗することが考えられる。本来であればデジタル庁に集約することが望ましいが、現在の菅政権には期待できそうにない。こういったときに国民が政権を応援すればいいのだが、現在の言論空間ではそれも望めそうにない。まずは、言論空間の冷静さを取り戻すことが重要であろう。


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