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イランの極超音速ミサイルの実態(IISSの記事)

写真出展:Dice MeによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/diceme-30109314/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7473416

 英国国際戦略研究所(IISS)は2023年7月14日に、イランが6月に発表した極超音速ミサイルの実態に関する記事を発表した。内容は、ミサイル開発の現状を概観し、正確な開発状況とプロパガンダを見分ける必要性を訴えるものである。兵器開発の情報という観点において、日本は北朝鮮や中国の情報にあまりにも偏っており、他国の現状について把握することが極めて困難である。他国の情報について触れる良い機会として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Removing the hype from Iran’s ‘hypersonic’ conqueror)
https://www.iiss.org/online-analysis/military-balance/2023/07/removing-the-hype-from-irans-hypersonic-conqueror/

1.本記事の内容について
 ・2023年6月6日、イランは「極超音速ミサイル」について情報を公開した。このミサイルはファター(征服者)と呼ばれるものであり、メディアでも注目を浴びていたが、専門家はこの情報に疑義を呈している。
 ・この「極超音速」といった標語は、実態から目をそらさせるための陽動と見るべきである。多くの地対空ミサイルは、大気圏内ではマッハ5以上の極超音速をすでに達成しているが、極超音速兵器の重要性はその速度だけでなく、滑空中の高度なコントロール性能にある。
 ・しかしファターは、単なる中距離大陸間弾道ミサイルに過ぎない。これまでの設計思想を踏襲したものとなっており、現在の仕様では通常の弾頭、流体力学による操作、プロペラ用モーターを実装した機動再突入体と言ってもよい性能を持っている。
 このことを鑑みると、イスラム革命防衛隊の研究機関は、国内のライバルである防衛省の中距離大陸間弾道ミサイルに対抗するためにこのミサイルを誇大広告した可能性もあると考えるべきだろう。
 ・機動再突入体及び超音速滑空体(弾頭)は、大気中で高度なコントロール性能を見せる。滑空体は自由度が高い軌道で飛行し続けることができるが、機動再突入体は着弾前の短時間しか自由度がない。どちらも大気圏中ではミサイル迎撃システムをかいくぐることができるが、大気圏外では軌道が容易に予測できるという脆弱性もある。
 ・イランはこの欠点を克服するため、機動再突入体に推力偏向ノズルを取り付け、大気圏外での高度なコントロールを実現しようとしており、革命防衛隊の公式発表では標的着弾前300から500kmでの操作も可能であるとしている。ただミサイル迎撃システム回避には電波受信等の改良などもう一段階上の技術が必要であり、過去の開発の歴史を考慮すると、イラン側の主張を額面通り受け取ることはできない。
 ・イラン防衛省が5月にお披露目したホラムシャッハル4ミサイルは、液化燃料系の中距離大陸間弾道ミサイルの後継機である。公式の映像資料では大気圏外での高度なコントロール性能を達成するため、小型スラスターによる軌道調整機能が大きく宣伝されている。公式発表では標的との誤差が30m程度であり、大気圏外でもミサイル迎撃システムの攻撃を回避できるとしている。開発状況から考えるとまだ発展段階にあり、完成には至っていないと判断されるが、それでも確実にミサイル開発が進んでいることに留意が必要である。

2.本記事についての感想
  過去に何度も言及しているが、日本は先進国の中では世界一安全保障関係の情報について鎖国状態にある。各国の兵器開発についての危険性が今一つ認識されていないようであり、せいぜいニュースになるのは中国と北朝鮮程度であり、その他はアメリカの兵器に対するネガティブキャンペーンぐらいである。
  情報は正確に理解する必要があり、誇大広告に騙されてはならず、かといって過小評価してもいけない。兵器の情報を正確に入手することは困難であるが、少なくとも騙されないだけのリテラシーは身に付けておく必要があるだろう。
  対外的な脅威には備えなければならないが、先の見えない軍拡競争になれば際限なく財源を積み増さなければならず、結果として防衛増税などと言う馬鹿げた話が出てくることになる。現在、近未来の脅威への対処でどの程度の備えが必要なのか、そういった現実的な対応が求められるのである。

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