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小型原子炉の現状について(CFACTの記事)

写真出展:Wolfgang ClaussenによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/wolfblur-2503887/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1602792

 2022年5月12日にCFACTは、小型原子炉の現状に関する記事を発表した。内容は、南アフリカで開発されてきた小規模可変型原子炉の現状について紹介するものである。世界がエネルギー確保に奔走している中、原子力は最有力候補のエネルギーであり、現実的なエネルギー政策に必要不可欠であることが良く分か内容となっていることから、参考としてその概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Small modular reactors advance in the nuclear world)
https://www.cfact.org/2022/05/12/small-modular-reactors-advance-in-the-nuclear-world/

1.本記事の内容について
 ・ウクライナ紛争に伴うエネルギー確保の問題が浮上し、にわかに原子力が注目を集めるようになっている。これまで原子力は、気候変動論者による不当な攻撃を受けてきたが、ロシア産の天然ガスの代替供給先を短期間で確保できない以上、原子力以外に選択肢がないのが現状である。
 ・ヨーロッパ大陸の電力網は、各国間で複雑に接続されていることから、自国の電力供給を自己完結的に制御することができない。このため、各国は自国の電力供給制御のため躍起になっているのである。しかし、これまで進めてきた「グリーン」政策を撤回するわけにはいかないことから、クリーンなエネルギーでなくてはならない。そこで登場するのが原子力発電所である。
 ・原子力は最もクリーンで、安全で、持続可能なエネルギーであり、正確に計算すれば、非常に安価である。しかも小規模でエネルギー出力が高効率であり、安定的に運用することが可能である。基本的には廃棄物も出ず、皆が恐れる二酸化炭素も排出しない。
 ・原子力発電所には、適した場所が必要である。大規模な原子力発電所は、1000MWから1500MW程度の原子炉から構成される、2000MWから6000MWの出力を誇る発電所である。対して小規模な原子力発電所は、IAEAの定義によると100MWから600MWの規模の発電所である。大型原子力発電所は、冷却に大量の水を必要としており、海や大きな湖の近くに建設される必要がある。小型原子力発電所はこのような制約がなく、産業地域の近傍に建設することが可能であり、民間企業ですら所有することが可能である。
 ・南アフリカは、25年前に小型原子力発電所を商用化した初の国となった。国家として第四世代の先端的ガス冷却原子炉を開発してきてきたが、これは内陸の大容量の水を必要とせず、水が潤沢ではない地域にある鉱山や産業に電力を供給することが可能だからである。中でも小型可変式原子炉は、部品が運搬可能なサイズであり、どの場所においても組み立てが可能であり、従って大量生産に適しており、工場の内部などにも設置することができる。更に、制御室に接続できる原子炉は10基であり、拡張可能な構造となっている。また南アフリカは、固形燃料によるヘリウムガス冷却炉に乗り出しており、次世代の有力な発電方式と見られている。この原子炉は世界中で検証されており、高度な基準をも満たす性能を見せている。
 ・小型可変式原子炉は、世界中で研究されており、その一つに溶融塩原子炉がある。固形燃料とは異なり、ウランと塩を化学的に結合するものであり、高温になると液体化して原子炉に流れ、核反応を発生させるのである。
 ・ただ原子炉共通の課題として、原子炉の熱の除去がある。通常は、原子炉に冷却水やガスを流入させる方式になっているが、溶融塩原子炉は溶融塩そのものが冷却剤としての役割を果たす。冷却方式によって設置個所が制約されるため、どの方式を採用するのかで設置場所の重要性が異なる。
 ・南アフリカの場合、水源から大きく遠ざかった場所(600kmから800km程度)に鉱山や産業地域が存在していることから、水に依存しない小型原子力発電所の建造が重視されている。このため、当初は礫岩盤型可変式原子炉が進められてきたが、様々な要因で頓挫し、現在は民間企業が中心となってHTMR-100という簡易版の原子炉が生産されている。この原子炉には各国政府や投資家が注目しており、アフリカの十数もの国が、すでに原子力発電所を導入するとIAEAに通知しているほどである。
 ・原子炉に関しての安全性についても、十分に確保されている。旧来型の原子炉とは異なり、HTMR-100は受動的安全設計となっており、異常発生時には核反応が停止するような構造となっていることから、福島第一原発のような事故は発生しない。HTMR-100の場合、冷却機器が停止したとしても、事故後24時間は温度が上昇するが、4~5日で徐々に温度が下がっていくだけで済むのである。核廃棄物についても少量で済み、40年運用した場合に排出される核廃棄物は、地下に安全に貯蔵することができる。

2.本記事読後の感想
  今回の記事は、2021年11月24日に紹介した「南アフリカの小型原子力発電所事業」の簡易版といった位置づけである。興味がある方は、是非こちらの記事も読んでいただきたい。https://note.com/karzy_kemaru/n/nd7fb68a5198a
ロシアのおかげで、世界はエネルギーの現実を認識することができるようになったが、その認識を政策に反映できるか否かは、政治家と国民の力量にかかっている。インドやアフリカ諸国は、脱炭素の流れにおいても自国のエネルギー確保を図りつつ、欧米に補助金を求めるなどし、強かに対応している。今回記事で取り上げた南アフリカは、小型原子力発電所の建造にも乗り出しており、エネルギー確保の現実を踏まえて賢明に対応している。ヨーロッパ各国も脱炭素は一時停止し、エネルギー確保を最優先とするよう政策を変更している。
  対して日本はと言うと、ウクライナ危機以降何ら新しいエネルギー政策を発表していない。化石燃料側が勢いを増していることそれ自体は悪くないが、ただ先祖返りした状態では、状況の変化には対応できない。エネルギーをほぼ100%輸入しなくてはならないという日本がおかれた現状は、化石燃料中心であろうと再生可能エネルギー中心であろうと変わらない。エネルギーを自国だけで賄うことができるようになれば理想であるが、現状不可能であることから、友好国や同志国などから安定的に輸入できる体制を整備しつつ、再生可能エネルギー市場を取りに行くという両面作戦が必要になる。こういった強かな立ち回りには、技術力だけでなく政治力や外交力も必要になるのだが、今の岸田政権は基本的な行政機能すらなく、全てが欠けていると言わざるを得ない。こういった政権には参議院選挙で敗北していただき、早期に退陣していただくほかないだろう。

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