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日本における中国の影響(2)(CSISレポート)

出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=3500976

本記事は、日本における中国の影響(1)(CSISレポート)の続編である。前回の記事は、以下のリンクを参照。

4.レポート読後のまとめ
  感想としては、やや物足りない薄味なレポートというものだ。インターネットで保守系論者の動画を見ていれば、ほとんど既出の情報であり、新たな発見と言えるほどのものはない。無論、知らなかったこと(日中友好協会などのイベントなど)はいくつかあったが、こういった項目はそもそも影響力がなく、気に留める価値もないからであって、情報がないと言うことではない。従って、読んだ方はややがっかりするのではないかと思う。このレポートは、むしろ海外の人々に向けたものであり、優良事例の紹介がメインであり、あとは若干安倍政権を応援するということぐらいの位置づけだろうか。
 全体として物足りないとは言ったものの、日本人が他国の分析をした場合にこれほどのレベルのものを作成できるかというと心もとなく、本レポートはアメリカのシンクタンクのレベルの高さを証明したものであり、日本の保守系動画も情報番組として十分なレベルに達しているということも示されたのではないか。

  読むうえで注意が必要な点は、以下の通り。
 ① 取材先・情報源の偏り
   協力が得られなかったのか、伝手がなかったのかはわからないが、取材先が偏っているように感じた。
   英語メディア御用達のような方が多く、政権に深く食い込んでいると思われる人は少ない。(慶応大学の細谷雄一教授ぐらいで、上智大学の中野教授に至っては、名前を知っている人すら少ないだろう。)
   また、外国人教授の取材も多く、日本人の認識とややずれがあるように感じた。
  このような人々を対象として取材していても、一次情報としての知見が得られるの
か否かは不明である。
   その他情報源についても海外在住の日本人の情報も散見されるが、経歴が不透明であり、日本の政府などに深く関わっている人があまりいないように思われた。

 ② 重要な項目の遺漏
   私が個人的に重要と考えているものについて、十分に取り扱われていなかった。
  ・経団連などの日本企業の動き
  ・千人計画に関する学会の動き
  ・移民制度の不備
  ・超限戦の評価
  ・サイバー工作

 政治家は監視しやすいものの、学界や企業は監視しにくいことから、あまり情報を得られなかったか、政治が確固たるものであれば問題ないと考えたのかはわからない。また、移民を認定していないから問題ないとしているが、移民の申請をしている間はそのまま滞在できてしまうという仕組みがあり、こちらについては特に指摘されていない。
 その他、日本人と結婚した中国人が簡単に帰化できること、中国人は帰化した後も共産党籍を抜かない人がおり、そういった人々がインテリジェンス工作に従事していることなども触れていない。(日本の専門家であれば、法律の本音と建て前の使い分ける日本特有の運用についても知っていていいはずだが。)
 超限戦に基づいて工作を仕掛けているということについては、あまり重視していないようだ。統一戦線には触れているが、多彩な攻撃と言う点については、あまり重視していないのだろうか。
 五毛党について若干触れられている程度で、サイバー工作はあまり取り扱われていない。インターネット上の情報操作は非常に活発であり、企業へのサイバー攻撃も後を絶たない。日本は有効な対処ができておらず、インターネットメディアが発展するほど、情報戦で苦戦する可能性が高いため、この点もより深堀していただければなお良かったのではないか。

 ③ その他
   批判的な論調で感想を書いてきたが、無論優れた部分もある。客観的に俯瞰して見る、長期的な傾向として見るという点においては、本レポートの見方は正しいように思う。我々はあまりにも日本に関して深く関わり過ぎており、どうしても長期的な傾向が見えなくなってしまう。
   やや古い話だが、小泉総理が靖国神社に参拝したころのことを思い出した。偶然ではあるが、私が数人の外国人(非常に知的な)とこの件について話す機会があったが、私は遺族会に配慮したもので、彼自身は保守でもなく、単なるパフォーマンスに過ぎないと思うと話した。しかし外国人の方には、日本の保守化は長期的な傾向であり、小泉総理の靖国参拝はその結果として現れているように思われ、今後も保守的な価値観が広がっていくだろうという感想を述べた。結果としては、彼らの方が正しかったように思われ、外国人だと侮ってはいけないものだと反省した。
   話題を元に戻すと、日本が中国に対抗するという方向性は変わらず、途中遅々として進まないという状況があっても、親中になることはないものと思われる。
  ただ、本レポートから得られる教訓は他にもある。これらは多岐にわたることから、今後個別の記事にて取り扱うこととしたい。

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