高齢者福祉の財政実情と人口推移


 介護保険とは、介護保険法(平成9年12月17日法律第123号)で国家として国民のために取り組まれている。1960年代に高齢者福祉政策(老人福祉法制定:1963年)が始まり、当時の高齢化率は5.7%(1960年)であった。その後も上昇する高齢化率に対して試行錯誤しつつ従前の制度では対応できなくなってしまったため、2000年に介護保険制度が施行された。介護保険制度が施行されたときの高齢化率は17.3%であり、だいぶ高齢化率が深刻となってしまっている。
 介護保険制度の財政構成は公費と保険料が半々となっている。さらに公費のうち国が25%、都道府県と市町村が残りの25%を半々で負担している。
 少子高齢化が叫ばれて続けている今日であるが、私たち若者としては財政事情がとても気になる。介護保険の利用者は年々増加傾向であり、制度開始から2012年4月末まで65歳以上被保険者数は821万人(38%)、要介護(要支援)認定者は315万人(144%)、要介護(要支援)認定の申請件数は254万人(94%)、も増加している。介護保険制度は上昇する高齢化率に対しての財源問題として3年サイクルで保険料の負担金見直しを行っているが、2012年では約9兆円の予算費用であるが、2025年には18~21兆円の予算費用が必要になる可能性があり、医療費は2012年では41兆円だったが2025年には61、2兆円程度になる恐れがあり、だいたい30兆円の拡大が必要となってしまう。
 単純に考え、地方自治体が15兆円の負担が増えても財政的には問題がないわけがない。介護保険ではないが、地域保健ともいわれる国民健康保険は各市町村が多くの負担をしているが、国からのある程度の助成金を足しても予算費用に対して足らず、一般会計から繰り越しの借入を行うことでどうにか持ちこたえているのが現状である。生活保護受給の認可が下りにくいという問題もあったように各自治体の財政はひっ迫しており、さらに介護施設やホームヘルパーの暴力、虐待、人手不足など給金の低下などのお金による問題が大きい問題も発生した。
 財政問題としてさらに上がるのは、各自治体の老年人口差(老年人口割合1位:秋田県30.7%、47位:沖縄県17.7%)もあるが、各地方自治体の施設などの容量を今後越してしまい、人手不足だけでなく場所不足も起きうるのではないかと考えられる。
 介護保険などの社会保障は、様々な問題をはらんでいると言われるが、一番のお金の問題をどうにかしなければ次世代への影響も大きく日本の経済は終わってしまうのではないかと危惧するところである。
 人口割合の変化をみた場合、総人口比では少子高齢化が現在よりも深刻化し、2060年には、高齢化率は上昇し39.9%、2.5人に1人は65歳以上の高齢者、4人に1人が75歳以上の高齢者となりながらも、出生率は48万人、年少人口(0~14歳)は791万人と現在の半分近くになり、生産年齢人口は4418万人となる見込みとなっている。そのため、昭和25年(1950年)には1人の高齢者に対して12.1人が現役世代(15~64歳の者)だったのに対して、平成27年(2015年)には高齢者1人に対して現役世代2.3人になり、このまま推移すると72年(2060年)には1人の高齢者に対して1.3人の現役世代という比率になる。また、医療の発展や社会保障制度の変化によって平成24年(2012)の平均寿命は男性79.94歳・女性86.41歳であり、将来の平均寿命は男性84.19歳・女性90.93歳と高齢期が長くなっている。その間にかかる介護保険料や医療費の負担などが莫大な額となっているだろう。しかしながら、2060年では、先ほども述べたように高齢者1人に対して現役世代1.3人となっている。これは現役世代4人に対して高齢者を3人背負っているということである。現在の見通しだと2060年までしか発表されていないが、その後いきなり好転することはほとんどないと考えられ、速度はどうであれ深刻化していくのは目に見えている。
 事態は深刻になっているが、今、高齢者福祉に対して厳しい対応を取ると将来の自分にしっぺ返しがくる可能性も大きく、安易な対策はたてられないと思われる。しかしながら、ほかの社会問題(虐待や貧富の格差、労働問題)にも同じことがいえることだが、深刻に事態を受け止めているのならば各省庁がうまく連携して事態に対応しなければならいのではないだろうか。管轄や予算などを各省庁に分配してどうやって連携していくのだろうか。一昔は社会のことを歯車と表現していたが、今日の社会は単純な歯車の組み合わせではなく、手巻きの時計並に複雑化しており、部分的な対処など不可能ではないだろうか。人徳的な対応も叫ばれている今日であるが、全員が全員心に余裕があるわけではなく、今を過ごすことに精いっぱいで余裕がないのではないだろうか。マクロ・ミクロ両者を兼ねた対応をするべきではないか。
参考文献
・公的介護保険制度の現状と今後の役割、厚生労働省 老健局 総務課:平成25年
・厚生労働白書、厚生労働省:平成26年度版
・日本の統計、総務省統計局:2014
・統計でみる都道府県の姿、総務省統計局:2014
・図表で分かる医療保険、健康保険組合連合:平成26年度版
・高齢化社会白書 内閣府:平成26年度版