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入門歯科保険診療-カルテの書き方-     「主訴」

歯科の保険診療のABCを解説する不定期連載です。カルテの記載方法、カルテメーカーでの入力方法などを解説していきます。研修医の先生や、新規、個別指導を控えた先生の参考になればと思います。


主訴

患者さんが訴える最も主要な症状のことです。

カルテには、現症、現病歴、既往症、SOAPなど様々な項目がありますが、「主訴」は別格です。なんと言ってもカルテの表紙の1号カルテのど真ん中にわざわざ「【主訴】その他摘要」という欄があるくらいに特別です。

「主訴」は患者さんが一番最初になんとかしてほしい症状です。まずはその解決に全力をあげましょう。初回に解決できなくてもなんらかのアプローチを主訴に対しておこなうのが、基本のキです。

「主訴」の無いカルテはありえません。1号カルテに特別な記載欄があるように必ず記載しなければいけない項目です。保険診療では特に重要視されています。新規、個別指導でこの欄が空欄であったら、その時点で指導の打ちきり・再指導となっても文句が言えないくらい重要な項目です。

■保険診療における「主訴」

保険診療で「主訴」が重要視されるのは、この「主訴」の内容で、保険診療を行うのが妥当なのかどうかを判断するからです。

我が国の医療保険は「疾病保険」ですので、保険が適用されるのは「疾病」に対する治療行為だけです。「予防」や「美容」に対しては保険は適用されません。特に「予防」に注意しましょう。

■保険診療でNGな「主訴」

医療保険でいうところの「予防」には「健診」「検診」も含まれます。そこでつい書いてしまうのが

  検診希望
  定期検診のため
  リコールで来院

こんな主訴です。これらの主訴での行為は「予防」行為ですので、「自費」扱いになりますので注意してください。

上記のような理由で来院された場合でも、良く問診して患者さんの困ってることを聞き出して、それを主訴にするようにしましょう。

  クリーニングをしてほしい
  前歯を綺麗にしてほしい

というのもグレーゾーンな主訴です。「美容」行為と解釈される可能性があるためです。こんな場合は、

  歯石がついていて気になるので取ってほしい
  前歯に黒くなっているところがあって気になる

こんな感じに医療行為が必要とはっきりわかるような文言に変えるといいでしょう。

■主訴は患者さんの言葉で書く

主訴の記載は「患者さんの言葉で書く」と言われていますが、決して「患者さんが言った通りに書く」のではありません。

「歯が痛いんです。昨日の夜から、ず〜っと。夜も眠れなくて…今も痛くて、えっ、はい、え〜と左上、あっ、右上の歯かな。奥歯。穴が空いてる感じが、シクシク痛くて…..」

てな感じに言った通りに書くのではなく、ある程度整理して記載します。

「右上の奥歯が、昨日から痛くて夜も眠れなかった。今も痛む。」

という感じです。
まとめるからと言って

「昨晩から右上臼歯部に疼痛あり、就眠できず。現在も疼痛あり」

という感じに完全に意訳して専門用語で記載してはいけません。(このような書き方をしなさいという成書も存在しますが、保険診療では基本ダメです。)

どうしてダメなのかというと正直なところ正しい答えはないのですが…😅
堅く言えば、患者さんの解釈モデルに沿って記載するほうが訴えが正しく伝わるっていう感じかと思います。

■主訴は一つにしぼる

患者さんは幾つもの症状を訴える場合が多いでしょう。その場合でも、問診を通じて最も患者さんが重要としている訴えを一つだけ選択してください。
これ大事です。
この選択を誤ると後々様々なトラブルが起きたりしますので、患者さんに良く確認するようにしましょう。

主訴以外の訴えはPOMR(問題志向型診療録)の原法に従うなら「現病歴」にまとめて記載します。
歯科の場合はプロブレムの切り分けは容易ですので、訴えをその場でプロブレムごとに分割して、それぞれの「S」に記載してもいいでしょう。

■主訴の記載の長さは1〜2行程度

主訴は患者さんの言葉で書くといっても、主な訴えを全部書く必要はありません。訴えの中の主要な部分を抽出して1〜2行の長さで記載するといいでしょう。

逆に「歯が痛い」のように、ただ一言だけというのも良くないです。ごく簡単でいいので、経過、部位、程度がわかるように記載しましょう。

主訴を読んだ時に、ある程度診断・治療の予測がつくくらいの文章量が目安です。

それ以外の詳しい訴えは、前段と同じように、「現病歴」あるいは「S」に記載します。主訴に書いたことを繰り返し「現病歴」あるいは「S」に書くのはありです。むしろ繰り返し記載して重要性をアピールするくらいがちょうどいいでしょう。

■最初の訴えが主訴とは限らない

歯科の場合、歯が痛いとか、詰め物が取れたとか、最初に患者さんが訴えたことが主訴である場合が多いと思いますが、そうではない場合があります。

いろいろと問診を進めていくと、あれっ、この人はこっちの方が気になって改善したいんだってことがあります。

ですので、いきなり「主訴」をカルテに書くのではなく。問診をしながら「現病歴」を書き、最後に、その中から主訴を抽出するという順番のほうが正しい方法です。

●カルテメーカーでの入力方法

カルテメーカーでは、「初診日」に「主訴」の項目を入力すると、そのコメント部分が、1号用紙の「【主訴】その他摘要」に印字されます。

主訴のコメント部分を1号用紙の主訴欄に印字

主訴」項目は処置セットの「主訴・現症」セットを選択すると次のような画面が表示されますので、ここの「主訴」の欄に入力してカルテに登録すると入力されます。

主訴欄に入力

入力後は、「主訴」項目をダブクリックするとこの画面になりますので、内容を修正できます。

内容を修正する場合はダブルクリック

また、「処置パレット」で「基本」カテゴリから「主訴」をダブルクリックすることで、カルテに「主訴」が入り編集ウインドウが開きますので、ここに主訴を入力します。

処置パレットから入力

■まとめ

主訴の記載は絶対に必要です。でも、つい書くのが億劫になってしまい書かないままになってしまうことも多いのですが、ここは踏ん張って書くように習慣づけましょう。

しばらく間をおいて患者さんが来院した時に、主訴をみて思い出す程度の記載を心がけるといいんじゃないかって思っています。

ではでは



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