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Steelrisingの細かすぎてわからないフランス革命小ネタ選手権

本記事はAGDQ2024のJapanese Restreamミラー配信解説のために作った原稿です。
実際の動画とあわせてお楽しみください。

全米80億人のフランス市民の皆様、土曜日の午後、いかがお過ごしでしょうか。
30分で終わるソウルライク・フランス革命ことSteelrigingのお時間がやってまいりました。走者はGames Done QuickやESAでもよく走られているデンマークのNicowithaCさん、解説はかるみなでお送りいたします。

このゲーム、フランス革命+みんな大好きオートマタ+みんな涙目ソウルライク、という非常に魅力の詰まったゲームなんですが、正直このジャンルでもプレイされた方はそんなに多くなかったんじゃないかなと思います。マップはないセーブはないバグはある、あと歴史に忠実すぎて登場人物が全部同じ人に見えるなど、ちょっと尖ったところが多かったんですよね。
その一方で、人間ではなくオートマタであることを生かした独特の爽快なアクションとか、フランスの歴史が大好きなら再現率高いほぼ全員同じヘアスタイルの登場人物とか、それからこれは私は大変助かったんですが難易度設定が柔軟で、ダメージゼロにして即死ギミック以外で死なないモードなんかもできちゃったりするという、結構フランスオタクフレンドリーな要素がたくさんある作品です。
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なおRTAには基本バグを使用するため、ダウングレードパッチの利用が必要です。よって、PC版でなければ(any% unrestrictedは)走れません。
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RTAではその革命をおよそ30分で終わらせてしまうのですが、そこで悪用、もとい活用されるテクニックが3つあります。
一つ目は、空中で攻撃モーションを出すことによる滞空時間の延長やバックフリップ。ジャンプ中に近接攻撃モーションを出すことで滞空時間と移動距離を稼ぎ、あるいは遠隔攻撃モーションでバックフリップを出すことで高さを稼ぎ、本来は壁などで移動を制限され、遠回りのルートで到達しなければならないところを直接移動します。これにより、ストーリーやバトル、ダンジョンギミックを大幅にカットすることができます。
二つ目は、無限アイテムバグです。これはアイテムを使用したタイミングで即座にメニューを開閉する操作をすることで、使ったはずのアイテムが減らないというバグを利用したものです。これにより、数個しか持っていないはずの手投弾(グレネード)を永遠に投げつけ続けてボスを倒すことができるようになります。本RTAの唯一にして最大のダメージ減です。
三つ目は、対空時間延長の応用技であるメニュー呼び出しを使った二段ダッシュです。本作では途中で主人公がダッシュの能力を獲得し、ジャンプした状態からダッシュすることでそれまで使えなかったルートを開拓するというマップギミックが存在します。通常はジャンプダッシュを使えば全てのマップギミックをこなすことができますが、あえて対空時間を延長してからこれを出すとより遠くまで飛ぶことができ、たくさん悪さをすることができます。それでも、基本的にダッシュができるのは滞空中1回までです。ところが、ダッシュし終わった後にメニューに戻り、すぐにゲームを再読み込みすることで、ダッシュしたという事実から目を背けて再度ダッシュすることができます。
これはおそらく最後のマップで一度だけ使う、本RTA最大の大技になるかと思います。

【サン・クルー宮殿地区】

1789年、パリは核の炎に包まれた。じゃなくて、市民の暴動を鎮圧するためにフランス国王ルイ16世が差し向けたオートマタの軍勢により、パリは破壊と殺戮が支配する町となってしまいました。王妃マリー・アントワネットの護衛役だったオートマタのアイギスは、王妃から「王を止めるためにオートマタの製作者、ウジェーヌ・ド・ヴォーカンソンを探し出せ」と命じられてサン・クルー宮殿を発つことになります。そもそもルイ16世は、踊り子人形だったはずのアイギスをなぜ武装させたのか。初っ端から謎だらけです。
サン・クルー宮殿はパリ南西部にあり、フランス革命後にドイツに恨みに任せて破壊されてしまったため、現在はサン・クルー公園として解放されています。セーヌ川が大きく蛇行して北に向かったところの西岸にあり、アイギスは王宮を出発してパリに渡るために、セーヌ川沿いの小舟を目指します。
まず手投弾を装備して錆びた鍵を持っている敵を倒し、柵を開けて基本装備のある宝箱を開けます。あとは小舟まで最短距離で進みます。
庭園のなかにはお払い箱にされたスイス衛兵隊(ギャルド・スイス、史実では傭兵であったため最後まで王家のために戦い、9割が虐殺もしくは処刑された)の死体の山があったりとか、初っ端から細かすぎてわからないネタ満載です。

ところで当時のフランスでは、庶民は自分たちのことを「サン・キュロット」、つまり「パンツはいてない」と呼びました。このパンツは、いわゆるかぼちゃパンツのことで、当時の貴族のたしなみ、オシャレ衣装の基本パーツです。アイギスの衣装=防具には当時の情勢を思い起こさせるフレーバーテキストとデザインの豊富な選択肢がありますが、こうした貴族っぽいパンツは一切なく、まさに「パンツはいてない」です。

ルイ16世(1792年処刑)

ご存知フランス革命で首を刎ねられた国王。狩猟が趣味で、フランス革命の発端となったバスチーユ監獄の襲撃があった日も、狩猟で獲物が取れなかったので「何もなし(Rien)」という日記を残していたことで知られています。
彼のもう一つの趣味が錠前作りで、これが本作品のインスピレーションの一つだったと考えられます。
本作品では、とある理由で人の魂とその器に関するオカルティックな研究に心を奪われ、オートマタの軍勢を作り上げてパリの街を地獄絵図にしてしまった張本人となっています。彼が人の魂に固執することになった理由は、サイドクエストをこなしていくとわかるようになっています。
ちなみに本作品の通貨はアニマエッセンス、つまり「人間の魂」です。街中に落ちている青い人魂や、敵を倒した時に得られます。オートマタを倒すと魂が得られる?不思議だなあ……。
ルイ16世一家は、ヴァレンヌ逃亡事件を起こすまでは国民にはそれなりに愛されていましたが、当人は本作の舞台となった1790年にはすでに反革命に転じていたと考えられています。

マリー・アントワネット(1793年処刑)

言わずと知れたフランス王妃、ハプスブルグの女帝マリア・テレジアの15人目の子どもにして、うんこ大好きモーツアルトがうんこできゃっきゃしててもおかしくない年齢の頃にプロポーズしたお姫様としても知られています。
本作品では、オートマタの軍勢によって蹂躙されるパリを憂い、王に与えられた舞踏人形である主人公アイギスに、市民を守り王を止める使命を与えて送り出します。
ちなみに作中のマリー・アントワネットは水色の服をきていますが、実際に彼女は青がお気に入りで、肖像画に描かれる姿も青い服が少なくありません。

ポリニャック公爵夫人(1793年、ウイーンで病没)

血筋はいいが貧乏だった貴族の娘として生まれ、同じく血筋くらいしか売りがないポリニャック伯爵と結婚。夫の妹のつてでヴェルサイユのレセプションに出席し、その美貌に惚れ込んだマリー・アントワネットに取り立てられて寵愛された女性です。マリー・アントワネットはポリニャック家の借金を肩代わりし、大量の金やら土地やらを与え、さらには夫を公爵に取り立てるなど贔屓の引き倒しをしまくったため、ポリニャック公爵夫人は多くの貴族の怒りを買いました。ヴァレンヌ逃亡事件では逃亡先で国王一家を受け入れるべく待機していましたが、一家が途中で捕まったために単身イタリアへ逃亡。のちにウイーンに亡命し、そこで亡くなっています。

【アンヴァリッド地区1:ヴォーカンソンの工房】

アンヴァリッドとは体に障害がある人のこと。具体的には傷痍軍人を指します。古くは「廃兵院」とも訳され、ルイ14世が1670年に、傷痍軍人の収容・保護施設として作った建物を指します。この近くには国民議会や官公庁、首相官邸、多くの大使館が置かれており、東京でいう千代田区のような位置付けです。そのため、路上デモの影響を受けて週に一度はどこかのバスが通行止めになっています。
サン・クルーからセーヌ川を遡上してたアイギスが上陸する地点、グロ・カイユー地区は、文字通り「石ころ(カイユー)だらけ」だったことからこの名があります。現在のパリで言うと、アルマ橋を渡ったあたりです。
私たちが知っている現在のパリは、19世紀後半に、ナポレオン3世の下で行われた都市計画(オスマンのパリ改造)によって作られたものです。それより60年は古いこの時代のパリは、そこらじゅうにスラムがありました。

工場のルートは本来左右のギミックを解きながら奥に行くのですが、ここではジャンプからの対空ギミックを使ってショートカットでボス戦もスキップし、工場の電源?動力?を入れてエレベーターで上のフロアに上るとイベント。

ラファイエット侯爵(1834年病没)

衣装がWikipediaにも載っている有名な肖像画そのものなので、多分フランス人は見た瞬間に「ラファニキ来よった!」とピンと来たと思います。彼に限らず、本作の史実人物は概ね造形も肖像画に忠実なのですぐに分かります。
10代でアメリカの民主主義革命に共感し、父の仇であるイギリスへの恨みもあってアメリカ独立戦争に参戦。ジョージ・ワシントンの盟友としてアメリカでも独立の英雄の一人となりました。
その後、フランスに帰国してからは貴族(侯爵)でありながら平民を擁護し、フランス人権宣言を起草。(それまでの軍隊=王の衛兵に対して、国民を守ると言う意味を込めて)国民衛兵隊司令官として、王党派と民衆派の調整に力を尽くしました。その結果、一度は失脚してオーストリアに逃亡し、逆に投獄されてしまうのですが、革命がポシャった後に帰国。その後は死ぬまで政界のご意見番として、ナポレオンや王政復古のたびに何かと専制を強化しようとする国王に激おこ説教をしつづけました。ちなみに息子の名前はジョルジュ・ワシントンです。
ゲーム中は扉の上に赤白青の3色の飾りがあるところで市民と会話することができますが、この飾り、国民衛兵隊のシンボルを考案したのもラファイエットです。市民の会話には「もうだめだー」みたいなのも多いですが、中には「テロワーニュ(・ド・メリクール、フランス革命を代表する女性革命家の一人)がこんなことを言ってた!」と希望を持っている市民もいます。

ウジェーヌ・ド・ヴォーカンソン(1789年死去)

主人公アイギスを含む、多くのオートマタを作成したとされる人物。現在はバスティーユ監獄に捕らわれているようです。
この人物は歴史上には存在しませんが、18世紀前半に実在した発明家にしてオートマタ製作者ジャック・ド・ヴォーカンソンをモデルにヒントを得たキャラクターだと思われます。年齢的にはジャックの息子くらいの設定でしょうか。ただし、史実のジャックには娘しかいませんでした。
ジャック・ド・ヴォーカンソンが作ったとされる数々のオートマタは全てフランス革命で破壊されてしまいましたが、代表作である「まるで生きているかのようにエサを食べてフンをするアヒル」の写真だけは残されています。そのほかにも「ヴォーカンソン型鎖」や「絹糸捻り機」、金属製旋盤、世界初の全自動織機などの発明でも知られています。パンチカードを使って織物に地紋を織り込む「ジャガード織機」も、元々はヴォーカンソンが考案した仕組みを実用化したものです。ジャックはルイ15世の統治下で絹織物製造の監査役に任命されたため、織物に関する発明が多くのこされているのです。晩年はパリの自宅兼工房で製作の日々を過ごし、1782年に死去した際にはルイ16世が彼の建物を買い取って王立機械院を設立。これは現在の国立工芸院(Conservatoire national des arts et métiers)の前身とも言える組織となりました。

イベント後にセーブポイント兼ショップでもある無人馬車を使えるようになり、パリ市内の他の地区への移動が可能になります。現在の位置はセーヌ川の南側、いわゆる「左岸(リヴ・ゴーシュ)」と言われる地域。ストーリー上は、セーヌ川に浮かぶ島、シテ島に向かうのが自然なのですが、RTA上の理由から先に川の北側の「右岸(リヴ・ドロワット)」のテュイルリー地区に移動します。

【テュイルリー地区】

左岸からセーヌ川を渡ってルーヴル桟橋へ。現在テュイルリー公園に隣接し、ルーブル美術館となっている建物は、ルイ14世がヴェルサイユに王宮を移すまでは王宮として使われていました。
元王宮の小部屋を抜けると、天文学者バイイの研究室があり、謎のカットシーンが入ります。このカットシーンはキーパーソンの「記憶」で、一人につき3つあり、全部集めるとストーリー面ではいいことがあるのですが、RTAではお察しです(強制で全部入手になる人もいます)。ここのカットシーンでは、バイイは友人のアントワーヌ・ラヴォアジェと、王の弟プロヴァンス伯(のちのルイ18世)に国王との仲裁を頼めないか議論をしているようです。

さらに進んでルーブル宮の中へ。広場に入るとボス戦「ルーヴルのセレナイト」です。ここもアイテムバグを使ってちゃっちゃと倒します。
このゲームでは「タイタン(巨人)」と呼ばれるマップボスを倒すとアイギスが特殊スキルが使えるようになります。セレナイトを倒すと得られるスキルは、「セレナイト推進装置」。マップのギミッククリアに重要な機能の一つ、空中ダッシュです。何よりこれが欲しかったので、最初にこのエリアを選びました。
奥のドアを開けて、今覚えた空中ダッシュを使って壊れたドアを抜けて脱出。バイイの研究室に戻って装備を回収した後、セーヌ川に浮かぶシテ島に向かいます。

ジャン=シルヴァン・バイイ(1793年処刑)

天文学者、というよりは天文史研究科として、古代から現代(18世紀)までに至る西洋天文学の体系的な分析を行ったことで知られ、その業績によってフランスの知性の殿堂アカデミー・フランセーズの一員となりました。史実通り顔が長いので、本作登場人物の中でも非常に見分けやすいキャラクターです。
バイイはフリーメースンの一員で、アメリカ独立戦争を支援した「九姉妹協会」に所属していました。九姉妹というのはギリシャ神話のミューズ九姉妹に由来しています。彼に限らず、フランス革命関係者、というかフランスの政治家は結構な割合でフリーメースンに所属しており(それも英国に破門された無神論フリーメースンが多い)、フランスの歴史書のコーナーにはオカルトではなく学術的な書籍としてフリーメースンについての研究書がたくさん並んでいます。
また、のちにジャコバン派と呼ばれた「憲法友の会」の一員として、1789年の球技場の誓いで「憲法が制定されるまでは会議は止まんねえぞ」と宣言。自らを国民議会議長を名乗りました。同年7月14日にパリ商人会頭のジャック・ド・フレッセルが暗殺されると、パリ市の最高責任者、初代市長に就任することになります。
ヴァレンヌ逃亡事件の後、国王廃位を求める声が急激に高まり、バイイは議会の要求に従って戒厳令を発令。しかしオルレアン公フィリップ(自称「フィリップ平等公」、1793年処刑)の摂政就任を求めて陸軍士官学校の練兵場(現在はエッフェル塔のあるシャン・ド・マルス公園)に集まった群衆に国民衛兵隊が発砲し、数十人の死者が出てしまいました。バイイはそれまで大衆に支持されていたのですが、これにより評判がガタ落ちし、彼は職を辞します。1793年、マリー・アントワネットの裁判で王妃に不利な証言をすることを断ったことが決定的となり、彼自身が革命裁判所で死刑を宣告されることとなりました。なお、彼の遺体はアンヴァリッド地区の初期エリア、グロ・カイユー地区にある教会に眠っています。

アントワーヌ・ラヴォアジェ(1794年処刑)

言わずと知れた近代化学の父。近代化学的な意味での元素を整理し、それまであったフロギストン説をひっくり返し、燃焼現象を物質と酸素との結合であると(ほぼ)正しく解析した人物です。裕福な弁護士の家に生まれましたが、趣味の化学実験の費用を賄うために徴税請負人(税金徴収代行人)となったこと、そして同じ徴税請負人の娘と結婚したことが、後々処刑される原因になりました。ちなみに妻のマリー=アンヌはラヴォアジェの実験を手伝うために語学を学んだり実験図の描き方を学んだりと、大変仲良しの化学オタク夫妻だったようです。
1793年に革命政府が徴税請負人を指名手配した際に自ら出頭、人民に対する反逆罪で死刑となり、即日執行されました。彼の裁判で、革命裁判所裁判官は「共和国に知識人や化学者は必要ない」と述べたとされています。彼自身は徴税請負人としてはかなり良心的な取り立てをしていたようなのですが、当時の反革命の雰囲気の中ではそうした事情は考慮されませんでした。
ちなみに本ゲームの回復アイテムは、ラヴォアジェ先生が作ったことになっています。

【レ・アール〜シャトレ〜シテ島】

シテ島はセーヌ川に浮かぶ島の一つ、現代ではノートルダム寺院が置かれている場所、というとイメージしやすいでしょうか。なお、この時期のノートルダムは、存在はしていますが、民衆によって攻撃を受けてだいぶんひどい状態になっていました。さらに1793年には彫刻が端からぶち壊されるなど、廃墟のような有様になってしまいます。ノートルダムが先日の火災の前の状態まで復元されたのは、ヴィクトル・ユーゴーの小説で注目が集まったおかげです。それでも割とつい最近まで排ガスのすすで真っ黒でしたけど。
シテ島に向かうには、まずレ・アール地区を抜けて川をわたる必要があります。レ・アールは「市場」の意味で、現在は巨大ショッピングセンターになっていますが、もともとは共同墓地だったところを整備してパリの胃袋を支える大市場が置かれていました。ちなみにレ・アール地域の整備のために掘り起こされた共同墓地の骨を整理して採石坑道にまとめたのが、パリのヘンテコ観光名所の一つ「カタコンブ・ド・パリ」です。

ここから現在は近代美術館ポンピドゥー・センターがあるサン・メリ広場から西に抜けてサントノレ通りへ。
シテ島が見えるセーヌ河畔まで来ると、また誰かの記憶がゲットできます。何か会議をしているようです。
ムービーは飛ばして、ポン・ヌフを渡ってシテ島へと向かいます。ポン・ヌフは日本語にすると新しい橋、新橋という意味なのですが、現存するパリの橋の中では最も古いものになります。ボロボロに壊れているのでジャンプとダッシュを駆使して渡りますが、よく見ると、ポン・ヌフの特徴である橋の脇の丸いスペースが残っているのがわかります。ちなみに水に落ちると即死ですのでご注意ください。金属は水より重いのでね。
ポン・ヌフはシテ島の一番西側にかかっているので、ここから東に抜けていくとまた記憶を拾います。現在、最高裁判所となっているシテ宮殿です。この策、ゲーム中でいう5年前くらいに修復されたばっかりなんですが、ひどい有様ですね。ちなみにここには1793年に革命裁判所が置かれ、多くの人をギロチンに送り込むことになりました。

歪んだ柵を乗り越えて広場に入るとボス戦、「シテ島の司教」です。普通にやると3形態あって、杖で殴ってくるだけの第一形態、聖書を投げつけてくる第二形態、一輪車で走り回る第三形態なんですが、ひたすら手投弾を投げ続けているとうまくいけば第二形態をスキップして第三形態まで追い込めます。走ってくるのを避けながらさらに手投弾を投げればクリアです。

さて、ここまでで記憶を3つ揃えているので、広場の隅にあった棺桶みたいなでっかい箱を開けることができます。開けると出てくるのは朱色のケープをまとったおじさん、ラファール司教です。なにかとんでもない悪夢を見たような気がする、というのですが、どうもその悪夢っていうのは、さっきぶっ壊したでっかいオートマタがやらかしたことなのでは。。。
ここ以外でも、棺桶の中には人が閉じ込められていて、記憶を全部回収すると開けることができます。RTAでは大体スルーですけども。

ラ・ファール司教(1829年死去)

貴族の家に生まれて神学校に入り、のちにウイーン会議でブルボン王朝の外務大臣を務めたタレーランと共に学びました。のちにフランス東部ナンシーの司教として三部会に選出。彼は人権宣言の起草と採択に関与した一方で、教会国営化には一貫して反対し、国有化が成立した後は危険を感じて国外に退去。王党派勢力と組んで反革命活動に身を投じました。のちに枢機卿に任じられ、最後はテュイルリー宮殿で死去しています。

フランス革命において、特権を持つ「第一身分」であった聖職者は権力者側にいたのだろうというイメージがあるかもしれませんが、初期には民衆側に立った聖職者も少なくありませんでした。フランス革命の思想的な裏付けとなる「第三身分とはなにか」を書いたシェイエス神父(彼はのちに、バイイの処刑によって空席になったアカデミー・フランセーズの席に座り、革命を生き延びてナポレオンに利用されることになります)。奴隷制や貴族・聖職者特権の廃止を先導し、ユダヤ人の権利向上を求めたグレゴワール神父。そして、人権宣言の起草と採択の音頭をとったラファール司教。彼らは啓蒙思想を学んだエリートであり、それぞれの立場から自由・博愛・平等という価値観を追求しました。
一方で、大衆にとって教会は権威であり、特権階級でもあり、なにより革命後の周辺各国の介入を経て、「我が国の侵略を狙う外国勢力」と認識されるようになりました。もともとフランスのカトリック教会は「ローマの長男」と言われ、バチカンに忠実だったために、逆にフランス国内ではある程度自由・自治ともいうべき裁量が認められていました(俗にガリカ教会と呼ばれます)。しかし、逆に革命による資産の国有化、山岳派による信仰の禁止、民衆による各地の教会の破壊や聖職者の殺害を経て、フランス教会はローマとの関係を強め、バチカンの下部組織として再編成されていくのです。

【シャトレ地区】

司教を倒したことで聖書投げのスキルを手に入れることができました。司教の第二形態では聖書を投げつけて自分に引き寄せるというスキルを使ってくるのですが、アイギスは主にマップ上でフックに引っ掛けて長距離移動するワイヤーフックとして利用します。これでだいぶん移動の自由度が高まりました。
再び川を渡って北側のシャトレ地区に戻り、東の執務室から書類を回収して最終チェックポイントのサントノレ通りまでスキップします。フックを使って建物の上階の窓からこんにちわ、黒人の友教会へようこそ。

アンリ・グレゴワール神父(1831年没)

フランス革命でも代表的な平等主義者で、ユダヤ人や有色人種の権利を訴え、男子普通選挙の実現を目指した人物です。彼が三部会に選ばれたのはラ・ファール司教のおかげでもあるのですが、恩人とは逆に教会国営化には積極的に賛成し、ヴァレンヌ逃亡事件後は国王の免責特権剥奪を訴え、処刑にも賛成との立場を取りました。山岳派による恐怖政治の開始時にたまたま出張に行っていたため難を逃れ、1794年のフランス学士院の設立に関与。宗教については、教会の破壊は歴史と文化を破壊する蛮行だとして、信仰の自由を求める温厚な立場を取りました。
晩年は、「王の処刑を支持した男」として何かと冷遇されます。のちのパリ司教に「教会国営化の際に行った宣誓を取り下げたら年金を出してやる」と言われても断固として断り、最後は蔵書を売るなどして食いつないでいたと言われています。

ジュリアン・レモン(1801年没)

フランス領サン・ドマング、現在のハイチで自由黒人として生まれ、19歳でフランスに入国。両親の資産をもとにサン・ドマングで広大な農場を運営する一方で、フランス国内で黒人の権利を訴える著作を数多く発表しました。これは1773年にサン・ドマング植民地が正式に「白人と黒人は別人種なので、有色自由人は市民権を持たない外国人として扱う」という方針を採用したことがきっかけとなっています。グレゴワール神父が設立に関わった「黒人の友協会」の一員として多くの知識人と交流、革命政府が人種の平等と奴隷制度廃止を決定すると、制度廃止後のプランテーション再建に関わる監督官としてサン・ドマングに赴任します。のちにハイチ建国の父と呼ばれるトゥサン・ルーヴェルチュールと共にハイチ憲法の起草に関わり、憲法制定からまもなく亡くなりました。

フランス革命の直前には、パリを中心に、フランス全体でおよそ5000人の黒人がおり、そのうち20~30人は上流階級に属していたという当時の調査結果があります。Steamの本ゲームのレビュー上位に「当時フランスの上流階級に黒人はいないのに云々」みたいな無知を曝け出した自称ゲームライターの文章が載っているんですが、お前この場面ちゃんと見てたのか?いいからちゃんと歴史勉強してこい!黒人の貴公子といえば文豪デュマの父(ナポレオン軍の将軍トマ・アレクサンドル・デュマ)とかめっちゃ有名だろ!デュマ父の剣の師匠(剣豪で作曲家の貴族)も黒人だよ!ちなみにデュマ父は父親に一度奴隷として売られたことがあるらしいよ!やべえぞ!

実は17世紀まで、黒人のフランス上陸には制限がなく、かつ14世紀の勅令で「フランス王国に奴隷なし」とされていたことから、黒人奴隷はフランス本土に上陸した瞬間に自由民の権利を手に入れることができていました。黒人の本土上陸が増えることを懸念したルイ14世の政策で、17世紀末からは黒人のフランス上陸や自由民の権利取得に徐々に制限が課されるようになります。それでも、植民地であったカリブの島々よりは、フランス本土の方が「奇異な目では見られるが、差別はされにくかった」という記録が残っています。フランスの革命家の多くが奴隷制度撤廃と人種の平等を訴えた裏側には、そういう空気もあったのでしょう。
全くの余談ですが、フランスのユダヤ人についてはナポレオンがユダヤ人コミュニティと合意を結び、「姓の導入など、フランス文化への同化を進める代わりに市民権を与える」ことになります。そして、カトリック、プロテスタント、ユダヤの3宗派の進歩主義者と無神論フリーメースンの協力により、19世紀末にフランスの徹底した政教分離、逆にいうとスカーフ問題に象徴されるような「公共空間からの徹底した宗教の排除」が実現するのです。

【リュクサンブール宮殿】

黒人の友協会でラ・ファール司教、グレゴワール神父、ジュリアン・レモンの三人とのイベントを済ませると、プロヴァンス伯の居城リュクサンブール宮殿にラヴォアジェ先生が直訴に行ったらしいというので追いかけることになります。リュクサンブール宮殿はセーヌ川の南、カルティエ・ラタン地区の向こうにある広大な庭園を持つ宮殿で、現在は建物は上院議事堂、庭園は一般公開されています。自由の女神の原型となった像もここにあります。養蜂場なんかもあったりします。
テアトル・フランセ地区、テアトル・フランセは現在のコメディ・フランセーズ、フランス国立劇団の前身となった団体です。シテ島からリュクサンブール宮殿に最短距離で行こうとすると、途中にオデオン座という劇場があるのですが、この劇場はもともと1782年に、当時は王立劇団だったテアトル・フランセのための劇場として作られました。オデオン座を超えて南西の入り口からリュクサンブール庭園へ。ここも本当は回り道をしていろんな通路を開放しながら進むところなんですが、柵のちょっとした出っ張りに乗っかってバックフリップで越えることでショートカットします。壁抜けじゃないから問題ないね!
ここで最強武器を拾います。「強化手投弾」です。これが今後の武器となります。これは2個しかないので、無限アイテムバグのミスは1回しか許されません。
このゲームの装備武器には基本、ぶっ壊れ性能なものがなく、しっかり敵を倒してアニマエッセンスという通貨や強化アイテムを集めて装備を地道に改良していくことでしか強い装備を得ることができません。なので、消費アイテムである手投弾をバグで大事に使っていくのがもっとも 効率がよいのです。

ちょっと回って宮殿に入ると、中ボス「リュクサンブールの錬金術師」です。さっきシテ島のボス、「司教」には司教の魂が入っていました。つまりこの「錬金術師」の中身は……錬金術(Alchemy)は、化学(Chemistry)の元になったものですから、そうですね、ラヴォアジェ先生です。でも100年に一度の頭脳と呼ばれるラヴォアジェ先生でもバグには勝てねえんだ。あと、先生の記憶は回収してないので放置です。バイイ市長とラヴォアジェ先生を両方回収することで、ハリーポッターでもお馴染みのニコラ・フラメル大先輩に会いに行って魂の秘密に迫れたりするんですけども、RTAにおいてタイムは世界の真実より重いのでね。
ラヴォアジェ先生を倒すと、新たな特殊スキルとして脆い壁を壊して道を開く錬金術キックが入手できます。

道なりに北に戻ると、本ゲームの拠点となるコルドリエ修道院が解放されます。のちの「コルドリエ・クラブ」、正式名称は「人間と市民の権利友の会」の拠点として、フランス革命のなかで活躍したり暴走したり処刑されたりした多くの活動家を世に送り出した場所です。ちなみにコルドリエ修道院、現在では私の母校の本部となっておりまして、建物の一部はイベント会場として一般に貸し出されています。金さえあれば全員同じようなヅラ被ってSteelrisingごっこができちまうんだ。
ドアを開けると、正面にわかりやすくコルドリエ・クラブの標語「Droits de l’homme=人権」と書かれた旗がぶら下がっています。ここで、クラブの面々とご対面です。

オノレ・ミラボー(1791年病没)

ラファニキと並ぶ立憲君主制の推進者であり、ライバル。借金と知性と個性的なルックスで大衆から大変人気があったため、三部会には第三身分、つまり民衆の代表として選出されています。三部会の議事録を公開したり、国王による議会解散命令に対して「解散させたいか?俺たちは武力で排除されなければここを退かねえぞ」と啖呵を切ったことで、シェイエス司祭が名付けた「自由のヘラクレス」というあだ名で知られるようになりました。ゲーム中でラファニキが司令官を務める国民衛兵隊の創設を最初に提案したのもミラボーです。
一方でルイ16世の相談役としても頼りにされていましたが、本作の少し後に42歳で突如病没。議会とのパイプ役でもあったミラボーを失い、不安になったルイ16世がヴァレンヌ逃亡事件を起こしたことが、結果的に国民の王家に対する失望と処刑につながりました。
ちなみに、サブクエストでは借金がひどくて仲の悪かった父親との関係が掘り下げられています。

マクシミリアン・ド・ロベスピエール(1794年処刑)

言わずと知れた山岳派恐怖政治の首班、ルイ16世やジロンド派をはじめとする大量の粛清を行い、最後は自分自身もギロチンで処刑された、フランス革命を代表する政治家の一人です。弁護士の家に生まれ、自らも弁護士として成功します。フランス革命の中で頭角を表すのは比較的遅く、演説などが始めるのは本ゲームよりも後の1790年ごろからと思われます。
なお、彼自身は大変清廉潔白な人物で、むしろ人間味がないくらいだったと言われており、ゲーム中でもちゃんと正論ガチ勢なところを見せてくれます。とあるサブクエストでは正論を主張する彼とラファニキ、どちらの肩を持つかによってエンディングが分岐しますが、「正史」はロベPを支持し民衆に力を与えるルートです(当該サブクエストを含む複数のクエストで条件を満たすことで、ラファニキ摂政による立憲君主制エンディングが見られる)。

実はロベPが国内の敵を粛清しようと思ったのも実を言うとそこまで突飛な考えではなく、そもそも周辺国がフランス革命を潰そうとする流れで戦争が始まるわけですが、マリー・アントワネットがガンガン機密情報を外国に漏らしてしまうのでろくな結果にならないわけです。フランス軍の士官も貴族だから革命政府には潰れて欲しいしね。なので国内にいる革命の敵から殺さないと……という考えに至るのはある意味自然なことでした。あそこまで徹底して粛清を実行するかは別として。

【アンヴァリッド地区2:廃兵院】

馬車に戻って再びアンヴァリッドへ。今回は、廃兵院の中に入ることを目指します。
聖書フックを使ってサン・ジェルマン通りへ。アンヴァリッド地区の北東からブルボン宮、現在の国民議会の横を通るのがこのサン・ジェルマン通りです。本来だったら左側からぐるっと回ってもっと足場のいいところから堀越えを狙うのですが、ジャンプ→空中で近接モーションを出す→セレナイトダッシュ→近接モーション、で強引に柵の横に着地します。もちろんここも落ちたら即死です。柵の切れ目から廃兵院の中に入ります。広場に入るとボス戦、「アンヴァリッドの財務官」です。
ルイ16世の財務官といえば、スイスの銀行家であり、王家の財政再建のために招聘されたジャック・ネッケル。倒したら馬車に戻って再びコルドリエ修道院へ戻ります。

ジャック・ネッケル(1804年、ジュネーブにて死去)

パリで銀行家として成功し、ルイ16世に王家の財政再建のために招聘されましたが、財務官の監督権限を強め、支出における裁量権を減らすなどの改革が反発を呼び、一度は退任に追い込まれます。しかし王家の財政が実質的に破綻した状態で今度は財務大臣に任命。貴族の横槍を避けたかったネッケルは、三部会を召集し、民衆の発言権を高めることで改革を進めようとしました。この行動により、民衆からは「愛国大臣」と呼ばれるようになります。ルイ16世は第三身分の権限を制限しようとし、それに反対したネッケルを罷免。これが民衆の怒りを呼び、新聞などでネッケル支持が加速したため、結局ルイ16世は彼を再任せざるを得ませんでした。
ネッケルは財政危機を短期国債と借入金によって解決しようとする一方、ミラボーや国民議会は国有化した教会資産を担保としたアッシニア紙幣の発行を選択。彼は1790年9月に辞職してスイスに帰国します。本ゲーム中でも、これからスイスに帰るよという話をしています。
ちなみに、彼が絡むサブクエストでは文筆家として知られた妻スザンヌの行方を探すことになります。スザンヌとの娘は作家・文筆家として知られるスタール夫人。自由主義的な作品を多く残したため、ナポレオンに国外追放された恋多き才女です。また、彼がボスにされている廃兵院の裏側、南に少し降りたところにネッケル通りがあります。この通りにあるネッケル病院はパリ大学付属小児病院となっていて、これを運営しているのが前述のコルドリエ修道院を本部校舎にしているパリ・シテ大学(前身はルイ15世が設立した王立外科医学院)です。

【モンマルトル】

パリ北部、一番高い場所がモンマルトルの丘ですが、この辺りは地下に大量の採石坑が走っていて、今では非常に地盤が怪しいくらいになっているそうです。坑道自体はパリ全体に走っていて、パリ・コミューンや第二次大戦のレジスタンスなどがこの坑道を拠点にしていたのは有名な話。パリ市当局も坑道の全容は把握できておらず、ボランティアが定期的に探検ツアーを行いながらマッピングしているそうです。かつて、超高級エリア・ヴァンドーム広場の地下にモグリの映画館があったのですが、当局の捜査が入った時には「廃業」して跡形もなく逃げていた、なんてこともありました。

この坑道のどこかに、マラーが隠れていて、彼を見つけて隠し通路を教えてもらえばバスティーユ監獄に潜入することができるようです。仕方がないので探しに行きます。
最初のエリア、「(ワイン用の)葡萄畑」となっていますが、実は今もモンマルトルには葡萄畑が残されています。現在、モンマルトル周辺は歓楽街として知られていますが、この辺りのエリアは当時は郊外扱いで、税金も安かったために、多くの飲み屋ができたという経緯があります。キャバレーの代名詞ムーラン・ルージュ、歌声酒場(シャンソニエ)のラパン・アジールなど、観光地となっている店も少なくありません。
工房に入ってすぐに、ちょっと奥に入ってアイテムを回収します。本ゲームの通貨はアニマエッセンス、つまり虐殺された市民の魂なのですが、その魂がどれくらい勇敢かによって魂の通貨換算値がことなり、ここで回収できる魂は最も通貨換算値が高いのです。魂にも貧富の格差がある時代だよ世知辛いな。これも、「使用」して通貨に替えるので、バグで大量のアニマエッセンスをゲットできるという寸法です。
その後、上に上がって、坑道に降りるための巨大エレベーターを起動します。そして坑道まで降り切る……までRTA走者がおとなしくしているわけもなく、途中でリフトを飛び降ります。これ、そのまま着地するとダメージが大きすぎて即死してしまうのですが、なんと我々にはセレナイトダッシュがあります!着地直前にセレナイトダッシュを決めることで、垂直方向の加速度を相殺することができるのです!科学の力ってすげー。降りたらマラーのところに辿り着くまでひたすら駆け抜けるだけになります。
アイギスを見たマラーさんは大感激で、「ダチのラクロってやつがあんたのこと自由の天使って言ってたけどさ〜」みたいなノリで話しかけてきます。このラクロってやつが書いた小説「危険な関係」が、あらすじだけ見るとマジ意味わからないので、ぜひWikipediaとかであらすじを検索してください。なんでこれが文学史に残るような作品になるんだよ。

マラーに教えてもらった隠し通路を使ってバスティーユを目指します。抜けたところに小ボスがいますが、いつも通り火炎瓶投げつけて倒します。その後、マラーに見送られて地下通路へ。3キロくらい走ってレアールの北側、タンプル地区の地下倉庫に到着です。

ジャン=ポール・マラー(1793年暗殺)

シャルロット・コルデに風呂で殺されたことで有名な人物。ちなみに風呂に入っていたのは皮膚病の治療のためだったそうです。彼はとにかく過激派だったと言われていて、扇動的な新聞「人民の友」の発行や、比較的温厚なジロンド派の追放を後押ししたことでも知られ、また学術論文にろくに実験などの裏付けを添えなかったことでラヴォアジェ先生に却下されて険悪な仲だったりもしています。
ちなみにモンマルトルの丘は、後に短期間だけ「マラーの丘」に改名されています。

【バスティーユ】

本エリアスタート地点のタンプル公園は今も公園として一般に解放されていますが、ここはもともとは「聖王ルイ」と呼ばれたルイ9世の時代に、テンプル騎士団が建てた塔と修道院があったところでした。というか、本作の時代にはまだ塔と修道院が残っており、塔には後にルイ16世一家が幽閉されることになります。その後、塔はナポレオンにより、王党派の聖地にならないようにということで破壊されてしまいますが、修道院自体は1853年まで残りました。
続いてマレ地区、パリでも古い街並みが残っている地域の一つで、かつてはユダヤ系住民の多さで知られ、今はそれに加えておしゃれなブティックとクイア文化の発信地として人気のあるエリアです。ここから一気に東に抜けるとバスティーユに到着します。柵を飛び越えて一旦堀に降り、フックで建物を登って牢獄へ。管理者の部屋、刑務官の部屋を抜けて屋上から飛び降り、中庭でボス戦「処刑人」です。
フランス革命で処刑人といえば、みんな大好きムッシュー・ド・パリ、シャルル=アンリ・サンソン選手、ギロチン姿で登場です。
ここまでに出てきた人物の多くがサンソンによって処刑されていますが、このゲームの時代にはまだギロチンが完成していません。1792年が最初のギロチンによる処刑で、その際に刃を斜めにするようアドバイスしたのは皮肉にもルイ16世だったという都市伝説もあります。

ボスを倒すと、地下牢への扉を開けることができるようになります。ちなみに地下牢はフランス語で「Oubliettes」、忘却という意味があります。
ここに繋がれていたウジェーヌ・ド・ヴォーカンソンはもう瀕死の状態で、国王を焚き付けて自分の作った人形に人の魂を封じ、残虐行為を働いていたのはカリオストロという男だと語ります。カリオストロを止めてくれ、といい残して事切れたウジェーヌの最後の願いを果たすべく、アイギスは単身バスティーユを脱出してコルドリエ修道院に戻ります。
実は、ここでアイギスのコルドリエ・クラブの面々に対する呼びかけ方が変わります。これまではラファニキを「侯爵閣下」、ミラボーを「伯爵閣下」みたいな感じで地位で呼んでいたのですが、ここからは「市民ラファイエット殿」「市民ミラボー殿」と、みんな市民呼ばわりするようになります。これは革命家がみんなイキってお互いを「ローマ市民のように」呼んでいたことの真似なのですが、これまであくまで「王妃マリー・アントワネットに命じられて革命家に協力していた」立場から、革命家の一人になったという心境の変化です。そんなん細かすぎてフランス人にしかわかんねえ選手権だよ!でもフランスにおいては、共和国の精神を持つ人こそがフランス市民なので、アイギスも、全米80億人の皆様も、共和国の精神さえ持っていればみなフランス市民です。俺が、俺たちがフランス人だ!

シャルル=アンリ・サンソン(1806年死去)

パリの公式処刑人の4代目として、フランス革命で刑死した多くの人たちを処刑した人物として知られます。サンソンは三部会で死刑の手段が議論された時に、苦しまなせない処刑法としてギロチンを支持しました。数多くの処刑に携わった彼ですが、決して好きで処刑を実行していたわけではなく、むしろ逆に死刑反対派であったことが知られています。
この頃まで、斬首は貴族にのみ許される処刑法で、庶民は絞首刑により長く苦しみ、「家族が早く死ねるように足を引っ張ってやることもあった(ヘーベル「ドイツ炉端話集」)」とも言われています。ギロチンの発明により、貴賤を問わず死刑が平等になったとも言えるのです。

カリオストロ(ジュゼッペ・バルサモ)(1795年、イタリアにて獄死)

日本ではおそらく「カリオストロの城」の映画で最も名が知られている超有名な詐欺師。自称偉大な魔術師、不老長寿の薬を所有していて自らも不死になったとかなんとか怪しいことを主張して貴族にチヤホヤされましたが、「王妃の首飾り事件」として知られる盛大な詐欺事件に関わったとされて、一時はバスティーユ監獄に投獄されました。
史実では1786年に釈放された後、イギリス、スイスを経てイタリアに戻り、そこでフリーメーソンの儀式に手を染めた異端の罪で終身刑となってそこで亡くなっていますので、ゲーム中の時期にフランスにいることはありません。が、まあ、ちょうどいい悪役なのでね。

【ヴェルサイユ】

ラファニキによると、前回ヴェルサイユに行った時は、宮殿の北側の防御が薄かったから、そっちからプチ・トリアノンと入れ知恵をしてくれます。ラファニキがなんとか王妃に引き合わせてくれるというので、覚悟を決めてヴェルサイユに突入です。突入前に、手持ちの魂を全部爆弾に変えておきます。
ここも本来は庭園の中を色々と大回りして抜けていかなければならないのですが、ジャンプからの近接モーション→ダッシュ→近接→近接で距離を稼いでショートカットします。王妃に会ったらチェックポイントの馬車に戻り、ここで大技です。
ジャンプ→ダッシュ→近接→近接でゲームをポーズしてメニューをロード、ゲーム再読み込みでスタミナ全開状態から再度近接→ダッシュを出せるようになります。これでヴェルサイユ城内マップをほぼ全部スキップして最後のボス戦、「鋼鉄の王妃」です。この王妃を倒したタイミングでタイマーストップとなります。中の人は名前でもうお分かりですね。戦略はこれまで通り、ひたすら爆弾投げつけてクリアとなります。

ルイ16世がなぜ魂にこだわったのか。オートマタに人の魂が入っているならアイギスの魂は誰のものなのか。ストーリーの肝心な部分はRTAでは全然わからない親切仕様ですので、関心を持って頂けたら是非プレイしていただけると、フランスオタクとしては大変嬉しいです。

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