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刈谷メソッド_25「自己を律する」

 今回は「責任」ということについて語ろうかと思っていたのですが……日々生きているといろいろなことが起こるわけで、ポジションが上がるスタッフに対して、通常ちょっと語りにくい、組織内部のトラブル対処法について語ってみようかと思います。

 正直に言えば、外向けの仕事の方が楽です。
 いままでも書いてきたことですが、原則相手にリスペクトをもって、相手が仕事しやすいように細やかに気遣い、全力で仕事をすれば、普通は良い成果につながります。
 開発であれば、クオリティの高い商品を開発できるということです。
 わたし自身、広報宣伝が上手くいかなかったり、上手く時流に乗れなかったり、もともとニッチなところを狙った商品であったり、単純に運が悪かったりして売れなかった商品はあると思いますが、クオリティが低くて売れなかった商品を造ったことはないはずです。

 なのでそうした仕事のやり方はシンプルです。
 難しいのは内部、身内ですね。身内だからといって、全員が全員同じ方向を向いているということは、ほぼあり得ません。人数が多くなればなるほど、それは難しくなります。
 大枠として同じ方向を向いているということはあると思いますが(というか、それがなければもはや同じ会社で仕事する意味すら疑わしい)、細かいところで意見が異なることは日常茶飯事と言いますか、ある意味普通の状態とすら言えます。
 そうした意見の食い違いの幅が小さければ、社内の風通しがいいということになるでしょうし、しょっちゅう食い違っていて、しかもその食い違いの幅が大きいとなると、いわゆる「社内がギスギスしている」状態になるのだと思います。

 そして平社員であれば、「なんかギスギスした会社だな」「雰囲気悪いな」「みんな陰で会社の文句言ってるし、オレもそろそろ辞めるか」みたいな態度が許されるかもしれませんが、ポジションが上がると、文句ばかり言っていることは許されません。むしろ下のスタッフの不満や意見を吸い上げ、上に伝え、必要と感じるなら下を教え諭し、上に改善を要求しなくてはなりません。「ウェルカム中間管理職ワールド」というやつですね(笑)。

 そしてそうした話は、「相手をリスペクトして」「相手を気遣って」という方法論だけでは通用しないことが大半です。

 そもそも世の中で起こることで、一方が明らかに間違っていて、一方が非の打ちどころなく正しい、ということはほぼありません。むしろ言っていることはどちらも正しいことの方が多いのです。
 外との仕事で意見の相違が生まれた際は、ある程度落としどころが明確なはずです。開発であれば、とにかく良い商品、売れる商品にすることが最大の目的ですから、自分が折れた方がメリットが大きいと思えば、相手の意見を採用するだけですし、自分が折れた方がデメリットが大きいと思えば、粘り強く交渉をします。
 またありがたいことに、一度商品が完成すれば、外との関係もいったんそこで終了します。

 ですが会社内部のことは、お互いが会社のためを思っているのは前提として、その方法論が異なると言いますか、平たく言えば自分の部署がやりやすいやり方というモノが現実としてるわけで、そうした意見のぶつかり合いの解決はシンプルではありません。自分が折れないと、当然相手は不満を持ちます。そして自分が折れると、自分にとってストレスな状況が生まれ、多くの場合自分の部下たちもその状況に不満を持ちます。

 そしてこの手の見解の相違は、話し合いで解決することはまれです。むしろ正しいことを言って相手を論破しても、相手が逆上して「うるさい! こうといったらこうなんだ!」みたいな幕切れとなり、やがてどちらかが辞めざるを得なくなり……みたいなことになったりする。上下で見解の相違がある場合など、上が下に「言うことを聞け」と言って終わることも多い。数回なら我慢できても、それが続くとやはり「辞めるしかないな」となったりもする。
 この手のトラブルは、世の中枚挙にいとまがありません。

 こうした状況が発生した場合、どう解決するのがよいのでしょうか。

 そこを考える前に、今回はまず「そうした状況を招きにくくする」ことから考えたいと思います。 

 社内で互いの利益のぶつかり合いが発生するのを抑える方法。
 それに関しては、ずばりデール・カーネギーの古典的名著『人を動かす』を読むのが一番です(笑)。

『人を動かす』に書かれていることは、1937年に書かれたとは思えないほど、現代でも通用する非常に素晴らしい内容です。

 実のところ、社内で人間関係がこじれるような何かが起こったとき、すぐ役立つ特効薬のようなものはほとんど存在しません。

「日々自分を律し、相手の考えに思いを馳せ、スタッフの成長と会社の成長をイメージして過ごす」

 ことで、まず社内の風通しが悪くならないよう自分から心がけるべきであり、もしそうした状況になった際も、自分が仲裁に入れば「キミがそう言うなら」と一目置かれる存在になれるよう自分を磨く。

 ……そんな聖人君子みたいな境地で仕事できたら苦労せんわという話ですが(笑)。実際問題、「刈谷お前そんな境地で仕事できてるんか」と言われれば、自らの不徳を恥じるしかないわけですが、それでもなお、そうした境地を目指して生きているのか、それとも本能の赴くまま無軌道に生きているのかでは、到達する場所も大きく異なると思うのです。

 なのでまあ、出世すればするほど、そういう一見きれいごとのような話を素直に心に取り入れ、日々うなるほど発生する不快な出来事に腹を立てず(わたしにはこれが一番難しい:笑)、組織がより良い場所に到達できるよう心を砕ける人間にならなくてはならないと、そう思います。

 結論としては、カーネギーの『人を動かす』を読めということですね(笑)。
 いや真面目な話、わたし自身ビジネス書や自己啓発本はいままで何冊読んだか分かりませんが(300冊以上は読んでいるはずです)、リーダー論ということで最初にお勧めするのは『人を動かす』です。
 佐々木常夫さんの一連の書籍(『リーダーという生き方』『そうか、君は課長になったのか』『部下を定時に帰す仕事術』などなど)も個人的にはお気に入りです。

 締めた後にダラダラ書くのも何ですが(笑)、わたしも若いころはビジネス書や自己啓発本を馬鹿にしていました。「こんなん読まなあかんやつは自分に自信のないヤツだけや」という感じですね。いまにして思えば何と傲慢で愚かなのでしょう。逆に言えば、そんな傲慢で愚かな人間でも、いまの刈谷くらいのところまでは行けるというサンプルにはなるかもしれません(笑)。
 ですがやはり、ビジネス書や自己啓発本が毎月何十冊も書店に並ぶのには理由があります。先達が苦労して積み上げてきたノウハウを、数時間書籍に目を通すだけで得られるのですから、こんな効率のいいことはありません。
 もちろん読んだだけで身に付くことはほとんどありません。そういう意味では「読んでも役に立たない」のも事実。
 情報を取捨選択し、良いと思ったものを取り入れ、実践して、失敗したりして何が問題だったかを何度も確認して、自分の物にしてようやく本当の意味で役に立ったと言えます。
 ですがそうして手に入れた知識や経験は、ただ日々仕事をこなしているだけでは得られなかった知見を与えてくれるはずです。
 そうした引き出しの多さ、深さが、迷っている部下を導く際に役立つこともあるでしょう。

 自分が出世していけば、自分を導いてくれる人もどんどん減っていきます。そうしたときも、多くの名著が自分の力になってくれることでしょう。そういう意味でも、若いうちから読書のクセを付けておくと良いと思います。

 さて、そんなわけで次回は、「それでも社内でもめ事が起こったとき、どういう対処法があるのか」といったことを語れればと思います。先にも書いた通り、特効薬のようなものはほとんどないんですけどね。

 あ、いちおう気にする人がいるかもしれないので補足しておきますが、アークライトでもめ事が起こっているというわけではないですよ(笑)。大半の方はそんな読み取り方はしないと思うのですが、ごくまれに「アークライトは内部で揉めている!」みたいな受け取り方をして、事実のように言いふらす方が出たりするので困惑します。

 わたしは「調和」を非常に重視します。日本的ですね。ですので組織もみんなが仲良く楽しくあってほしい。ただそうした環境は、実際そう簡単に作られるものではありません。ですので何に気を付け日々過ごすべきか、そうしたことが伝えられたらと思い、今回の話をさせていただきました。

 次回、ハードルの高いテーマを設定してしまい、内心怯えています(笑)。なるべく意味のあるテキストが書けるよう、精進いたします。

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