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刈谷メソッド_32「真心のすべてを」

 そんなわけで一応これが最後です。番外編3がある気がしますが、ひとまず置いておいて。
「真心のすべてを」は、わたしが好きな海外ドラマ、『アリー my Love』シーズン3の16話のタイトルを借りました。番外編2に書いた「心に愛を」だと、ちょっと恥ずかしかったので(笑)。

 仕事についての話で言えば、結局最後はこれかなと。
 いろいろごちゃごちゃ言っても、やっぱり真心と言いますか、誠実さと言いますか、真剣に、必死に仕事に取り組むという、それ以外ないです。

 人をダマしたり、嘘をついたり、サボったり、要領よくやったり。それで上手くいってるやつを見るとイラっとしますよね(笑)。ぶっちゃけラクして稼げて、イイ思いができるならそっちがいいじゃないと。
 ミスしたり、力及ばなかったり、ののしられたり、笑われたり、裏切られたり。人生は思い通りいかないことの方が多い。悔しいことも多い。
 そうした場合、それでもなお誠実に生きていくのは非常に困難です。言い訳をして、頑張らない理由を探して、ちょっと休憩する。ちょっと休憩するだけならいいと言いますか、むしろ少しの休憩も取らず本当にずっと張りつめているのもまたヤバいと思いますが、人間一度休むと、立ち上がるのが大変なんですよね~(笑)。

 それでもなお、誠実に生きていくべきです。

 あ、柔軟性は必要です(笑)。がむしゃらに猪突猛進しようという話ではありません。賢明であるべきです。効率の良さはむしろ求めるべきです。愚直さが必要なシチュエーションもありますが、「こーすりゃ手間省けるじゃん」という場合は、積極的にそうすべきです。

 重要なのは、質の良い仕事をすることです。
 そのためにどうするかということです。

 嘘をついてはいけません。噓は仕事の質を下げます。
 心にやましさがなければ、嘘をつく必要がありません。
 心にやましさを抱えているから、嘘をつくことになります。
 そして心にやましさを抱えていると、仕事に集中できません。
 心にやましさを抱えて集中を欠くくらいなら、とっとと罪を告白して裁きを受け、スッキリ仕事に集中した方がいい。

 なんでそこまで仕事に捧げなきゃいけないんだという話ですが……もちろんお金も重要です。現在の社会体制では、お金がなければどうにもならない。自分を含め、愛する人たちに幸せな生活を送ってもらうためには、お金を稼ぐ必要があります。

 でもそれだけでもない。
 我々ボードゲーム開発であれば、やはりお客さんに喜んでほしいから、我々が作った商品を遊ぶことで、お客さんたちに少しでも楽しい時間を過ごせてもらえたらと思うから仕事に打ち込むわけですね。
 たぶん他の仕事もそうなのではないかと思うのですが。

 ちなみに詐欺とかは仕事ではないと思っています。詐欺の類で金を稼ごうという話は、立ち位置として最初から間違っているので、している人はすぐに止めるべきです。転売も同じですね。寄生虫のような金の稼ぎ方をしている人たちには、憐れみを覚えます。
 詐欺でわたしより稼いでいる人もいるでしょうし、そうした人はわたしが憐れんだところで、わたしを馬鹿にしてあざ笑うだけでしょう。
 理屈で彼らを説得できるなら、宗教家の皆さんがすでにそうしてくれているはずです。
 ですのでわたしも、「なぜ誠実に仕事をしなくてはならないのか」と聞かれて、「こうだ」と説得力あふれる話を展開することもできません。

 ですので本当のところは、「こうすべきだ!」という断言は、なかなかできないですよね。
 なのでここに書いてあることも、結局は「刈谷は人生でこういう思いを抱くに至った」「キミの生き方の参考になるなら意味があるかもしれない」ということにしかなりません。

 仕事は誠実にというのは、つまりそういう刈谷の主張にすぎません。
 ですがまあ、50年近く生きてきて、一分の隙もなく完璧に仕事をまっとうしたとはとても言えませんが(笑)、それでも、少なくともお客さんや関係者の皆さんに対し、顔向けできない仕事をしたつもりもありません。
 そこは誠実に仕事に取り組んできたという自負がある。
 ですので、いまも清々しい気持ちで仕事に向かえている。
 これは非常に有難いことです。

 アニメ『鬼滅の刃』の「無限列車編」が先日テレビ地上波で放送され、録画したものを連日観ている影響を受けている気がしますが(笑)、わたしも常に亡き母に恥ずかしくない自分でありたいと自分を律している気がします。

 力造くんも亡くなる際、「自分のやってきた仕事に悔いはない」「いまの若いクリエイターはみんなすごい。期待しかない」と口にしていました。
 彼もまた、誠実に仕事に取り組んでいたからそういうことが言えたのだと思います。
 わたしも彼と同じことが言える資格を持っていたいものです。
 それは、日々の積み重ねです。
 地味な努力です。
 地味な努力は楽しいものではありません。
 地味な努力を支えてくれるのは、わたしの場合は、お客さんに喜んでほしいという思いです。

 人生をかけて取り組んで悔いがないと思える仕事と巡りあえたことは、非常に幸せなことです。
 まだ巡りあえていない人は、必死で探し求めてください(笑)。

 若いうちは、いまの仕事が本当に自分にとって最高の仕事なのか、自信がないという人もいるでしょう。
 ひとまず目の前の仕事に必死に打ち込んでみることだと思います。
 そこで必死に打ち込めるなら、天職である可能性があります。
 なんだかんだ必死になれないなら、それはやはり天職ではないのでしょう。

 天職を見つけ、誠実にその仕事と向き合えたなら、人生はとても楽しい。

 50年近く生きて、ひとまずのわたしの結論としてはこういう感じになるでしょうか。

 力造くんや銀一郎さんが亡くなられたことをきっかけにして、自分が今ここにあるのもお世話になった多くの皆さんのおかげであるし、アークライトのボードゲーム開発部のスタッフに話を聞かせるというていで、わたしの経験が多少でも他の皆さんのお役に立てるならと、思いつくままにつらつら書かせていただきました。
 本当に役に立つ内容があったかは、いまいち自信がありませんが(わたしは自己啓発本を書くのは無理だなということは自覚できた)、今回のテキストはこれで終わらせていただきます。

 一部でも読んでくださった方に感謝します。そうした方にとって、何か役に立つことがあれば幸いです。
 ありがとうございました。


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