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刈谷メソッド_00「はじめに」

 2021年1月1日にtwitterで宣言したとおり、1年かけて「刈谷メソッド」を執筆していこうと思います。
 本稿は正しくは「刈谷圭司が考えるボードゲーム編集の手法と、仕事に対するスタンス」といった内容になると思いますが、そのままだと長ったらしいのでいったん「刈谷メソッド」と名付けます。「メソッド」とは「Method:方法、方式」という意味です。
 本校を執筆する目的は、日本にボードゲーム文化を広げるうえで、わたしの個人的経験が多少でも役に立つなら、披露させていただきたいというものです。

 今回は初回ということで、「そもそも刈谷ってどういう人間なんだ」という話と、今後執筆予定の項目の書き出しを行っておきたいと思います。
 どんな人物が書いているかという点には特に興味がないという方は、今回は読み飛ばしていただいて大丈夫です。

 まず著者の刈谷圭司ですが。
 2021年1月時点での肩書は、株式会社アークライトの国内ボードゲーム制作部の部長であり、同社が主催するイベント「ゲームマーケット」の事務局長でもあります。
 1972年6月生まれですから、2021年中に49歳となるはずです。
 わたしがボードゲーム編集について語るうえで、読者の皆様にご理解いただいておくとスムーズかと思う事柄は下記のようになるかと思います。

◎子供のころから各種ゲームが好きだった
◎小学4年生のとき初めてシミュレーションゲームに触れ、それからゲームを自作するように。
◎中学に上がるころゲームブックブームに触れ、ハマる。ただ一緒に遊ぶ友達がいなかったのでTRPGは遊べず。
◎大学の1年上に北沢慶さん(グループSNE)がおり、彼のTRPGサークルで創作活動を手伝うように。
◎大学卒業後、作家を目指してフリーターをしていたが、北沢さんの仕事を手伝っていた縁で、1998年グループSNEに入社。そこで『トレインレイダー』や『マーメイドレイン』といったボードゲームのゲームデザインに関わる。
◎2003年、TRPGサポート書籍『Role&Roll』の創刊・編集を行うため株式会社アークライトに出向。その後外注社員となり、『ソード・ワールド2.0』や『デモンパラサイト』『ゲヘナ』『神我狩』といったTRPG書籍の編集に携わる。
◎2013年、編集部を離れ、ボードゲーム開発及びゲームマーケット責任者として改めて株式会社アークライトに入社。

 ……そして今に至るという感じです。部署の発足以来、

『Gods' Gambit ~神々の一手~』(作:カナイセイジ)
『はじめての人狼』(監修:児玉健)
『クイズいいセン行きまSHOW!』(作:川崎晋)
『赤ずきんは眠らない』(作:佐藤純一)
『Gods' Gambit G』(作:カナイセイジ)
『クイズいいセン行きまSHOW! 恋愛編』(作:川崎晋)
『渡る世間はナベばかり』(作:中村誠)
『シンデレラが多すぎる』(作:大気圏内ゲームズ)
『デカスレイヤー ~10の試練~』(作:カナイセイジ、林尚志)
『ローマの執政官』(作:川崎晋)
『のびのびTRPG ザ・ホラー』(作:今野隼史)
『MONSTER MAKER モンスターメーカー』(作:鈴木銀一郎)
『ビンジョー×コウジョー』(作:すまいる120円)
『The FIFTEEN』(作:芥邊雨竜)
『遥かなる喜望峰』(作:A.I.Lab遊)
『のびのびTRPG スチームパンク』(作:今野隼史)
『はじめての人狼 普及版』(監修:児玉健)
『花嫁が多すぎる』(作:大気圏内ゲームズ)
『ドラゴンギアス』(作:川崎晋)

(敬称略。以下同)

 といったタイトルをメインで編集させていただいたほか、

『おそ松さんラブレター』(作:カナイセイジ)
『海賊の宝島 オクラコーク』(作:出嶋勉)
『黄金体験』(作:エミユウスケ)
『ごいた』(監修:草場純)
『ミツバチマッチ+』(作:たま々)
『タイムボム』(作:佐藤雄介)
『ヘンゼルかグレーテル』(作:林尚志)
『ちんあなごっこ』(作:ぺけ)
『オバケやしきのすうじのアクマ』(作:326)
『はっきよいゲーム』(作:米光一成)
『ito』(作:326)
『クトゥルフキッチン』(作:シュールストレミング、橋本淳志)
『ゆるるふとらんぷ』
『KAJU on the EARTH ボルカルス』(作:上杉真人)
『リトルタウンビルダーズ』(作:Shun&AYA)
『ダブルナイン』(作:妄想ゲームズ)
『オールサイ藤ニッポン』(作:中村誠)
『KAJU on the EARTH レヴィアス』(作:金子裕司)
『ミリオンヒットメーカー』(作:326)
『めざせ! ミリオンヒットメーカー』(作:326)
『インスマスから届いた手紙』(作:内山靖二郎)
『白猫はどこへ消えた?』(作:秋山真琴)
『消えたパンツと空飛ぶサカナ』(作:川口正志)
『レディファースト』(作:米光一成)
『ミリオンヒットメーカー モザイク』(作:326)
『どうぶつババ抜き』(作:大山功一)
『Dr.STONE ボードゲーム 千空と文明の灯』(作:カナイセイジ)
『黄衣の王がやってくる前に』(作:内山靖二郎)

 といったタイトルの編集をサポートしてきました。
 最近は部署のスタッフも増えてきたので、わたしが直接ガッツリ編集を担当することは減り、若い編集者を指導する立場に立つことが多くなっています。

 さて、それでは今後執筆予定の項目を書き出してみましょう。
 書こうと考えている内容は大きく「ボードゲームの編集」と「仕事に対する姿勢」の2つに分かれます。
 順番に書くか、書きたいものから書くかは、現時点では決めていません。

◎ボードゲームの編集
「なんのためにボードゲームを作るのか」
「最も重要なのは『顧客満足度』である」
「売れなくても出すべきゲーム」
「スケジュールと経費」
「編集は関係者全員に気持ちよく仕事していただくためのハブ」
「ゲームの面白さとは」
「イラストとグラフィックは圧倒的に重要」
「読みやすいルールブック」
「印刷会社との付き合い」
「輸送周りの注意点」
「広告宣伝施策」
「恐ろしきは在庫」

◎仕事に対する姿勢
「仕事は楽しく」
「仕事は誠実に」
「食う浴びる寝る」
「言い訳をしない」
「敬語をきちんと使おう」
「リスペクトを忘れずに」
「褒める」
「メンタルが強いと幸せになれる」
「承認欲求との付き合い」
「心に愛を」

 ……ひとまず以上です。
 現時点で22項目ありますが、1回のテキストで書ききれない項目もあると思います。書いているうちに内容が膨らんだり、追加したくなることもあるでしょう。そのあたりは今あまり決め込まず、その瞬間のフィーリングを重視して1年間書いていきたいと思います。

 さて。
 今日の内容は2021年1月9日に執筆しています。今日は1月6日に亡くなられた鈴木銀一郎さんの葬儀が行われる日です。
 期せずして、日本のゲームデザイナーの父と言える銀一郎さんの葬儀の日に、ボードゲーム編集についてのテキストを書き始めることになってしまったことに、勝手ながらある種の運命的なものを感じています。
 わたしが本稿を書こうと思い立った理由のひとつに、2020年10月の力造くんの逝去があります。力造くんは『神我狩』の作者であり、グループSNEの後輩でもありましたので、公私で付き合いを深くさせてもらっていました。頑強な肉体を誇った41歳の力造くんの突然の訃報に接し、やはり人間いつ何があるか分からないなと。気付けばわたしも今年49歳。人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり。
 もともとアークライトのメンバーのために、口伝ではなくテキストとして「ボードゲーム編集の技術マニュアル」を作成せねばという思いはずっと持っていたのですが、忙しさを理由に毎回挫折してきました。
 今回「毎週土曜にnoteにアップする」と宣言することで退路を断ち、かつアークライト社外の方にも役に立つ内容を書くことができればと考えています。

 しかし改めて銀一郎さんに思いを馳せますと、銀一郎さんが『モンスターメーカー』を世に出されたのは53歳の時なんですね。そう考えると「敦盛」の一節など持ちだして気取っている場合ではなく、まだまだ額に汗して働く年齢だと叱咤される気もします。
 本稿を1年書ききって完結させ、銀一郎さんや力造くんに受けたご恩を少しでもお返しできるよう、微力を尽くしたいと思います。

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