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微生物と棲む

キエーロで生ゴミ処理をするようになって、1年ほど経つ。

掘った穴に野菜くずや茶殻、コーヒーのかす、植木の葉や花殻を入れ、水をじょぼぼっと注いで混ぜ、土を被せる。

1〜2日したら、乾いている上の土をどかし、湿って固まった生ゴミ混じりの土にスコップを突き立て、ざくざくと混ぜる。

その際、ほんの一時異臭がするが、それでガスが抜けるのか、混ぜているうちににおわなくなる。

空気を含ませるつもりでよーく混ぜておくと、次からは掘ってもにおいはしないし、分解の進みも早くなっている気がする。

最初のころはちゃんと理解しておらず、しっかり水気を切って捨てていたが、発酵・分解にはそれなりに水が必要だということも学んだ。

キエーロを教えてくれた友人は「ひとりゴミゼロ活動」と称して、極力ゴミを出さない生活をしている。
包装の少ない商品を選んだり、喫茶店でアイスコーヒーを頼んでもストローは使わない。

友人と比べればエコ意識はかなり希薄だったが、微生物が生ゴミを分解してくれるという話に興味を持ったのが、キエーロを始めるきっかけだった。

始めてみると、なるほど面白い。

微生物の存在を実感したのは冬。
土の中が温かいのだ。
朝には半透明のポリエチレンの蓋の内側に結露がついていたりもする。

夏場は分解が早いので、ほんの数日で形がなくなり、土もさらさらになる。

姿は見えないけれど「いきもの」が確かに活動しているのだ。

微生物といえば、ぬか床とも数年来のつき合いになる。
ぬか漬けが特別好物というわけではないのだが「機嫌のよい発酵」みたいなものを感じるが結構楽しい。

実家のぬか床は唐辛子を入れるくらいだったが、友人にもらったぬか床のタネには魚の骨が入っていた。
すっかり分解されてなくなっているけれど、ほかにもいろんなものが入っていたらしい。

その後、柿の皮を入れるとよいというのを別の人から聞き、試してみたら何とも言えないフルーティーな香りが立った。

それ以来、りんごや梨などの季節の果物の皮を時々入れたりしている。

生活の中に「微生物」というカテゴリーを置いておくだけで、ものを見る目も変わってくる。

「燃やすゴミ」が減ったり、美味しいぬか漬けが食べられたりという副産物もあるが、行われているのは単なる生命活動で、人間のためとか環境のためなんて意図はない。

動物のように感情豊かなわけではない。
植物のように見目麗しいわけでもない。

でも、そこにいるというだけで、妙な親近感を抱かせてくれる。
自分の暮らしには、ちょうどよい距離感なのだ。

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