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「lines」

「lines_RESPECT」2023

今回は、抽象作品「lines」について書いていきたいと思います。

(↑個展の内容と共に振り返っている軽い解説はこちら。)

・この画面は一体何を意味するのか?

いったいこの画面は何を意味するのか、どういった表現なのか。
実はこの画面は、何かを表現している訳ではありません。
全ての他作品にも一貫して描かれている、下地部分にあたる画面です。

「Naachin_rr」2022
「Naachin_White」2022

私の作品は何層にも重なるレイヤー構造で出来ています。
最下層には、デジタルで作画した絵をアナログのキャンバスへ描き移す際に必要になる目安線の様な線や色分け、設計図のような機能を持った画面が必然的に描かれています。

似顔絵2021

この部分が、完成時、背景となっていたり、はたまた最終的に塗りつぶされて見えなくなったりします。

下地を塗りつぶした状態。顔付近に書かれていたカラフルな線が白く塗りつぶされている。


「linesシリーズ」はその「設計図」の状態のままを作品にした物です。
本来であれば、次の工程として、この上から他作品と同様に、モチーフが描かれる予定でした。↓

「lines_RESPECT」の予定していた完成図

言わば、自分の中では未完成の状態だったので、
作品だとは思ないような物でした。

・「lines」発表の経緯

「AI's Visionシリーズ」2023

しかし個展「Beyond Mediums」は、
作品の重要要素であるモチーフをAIに考えさせた「AI's Visionシリーズ」を
メインとした展示でした。
AI考案の画面を忠実に手描きで再現=作家の独自性というものが反映されていない作品として、価値を問う作品群。

その対比として、 「lines」は、アナログの要素100%、作家の独自性が100%反映されているという位置づけをすることの出来る作品だと思い、発表するに至りました。

「lines_BK」2023

最近の活動を見て、「Naachinシリーズ」のような具象画から、
いきなり抽象画に変わったと思われている人は多いだろうなと思い、
一度「lines」について詳しく書く必要があると思いましたが、
自分の中では何の違和感もない自然な流れでした。

どの作品にも一貫して、「lines」の状態の下地が描かれていますので、
過去の作品に遡り、改めて楽しんでもらう事も出来ると思います。

「Naachin_AI's Vision bs」2023|下地はうっすらと透けている
「Nine Naachin_h」2021|初期作品は裏から光を当てると線が浮かび上がる

・「lines」を通してやって行きたいこと

「lines_Colorful」2023

「lines」を通してやりたい事は、「Naachinシリーズ」と全く違った事になりそうです。

そもそも、なぜ全てのアナログ作品にこの線が描かれているのかというと、
「設計図」という言葉で説明しましたが、
この手法がないと未だに私はアナログペインティングが出来ないのです。
ちなみにこの手法は、壁画、ミューラルを描く際の
ストリートアートの手法をキャンバスに再現した物です。

そして、この線や色分けは、最終的に消してしまう物として描いていたので、
何も考えずに描いていた線です。
設計図としての機能を果たしてくれれば、目を瞑りながら描いたっていい。

しかし、私の無意識に引く線の種類は、そんなに多くなく、
自分の肘や肩のストロークで最も無理なく自然な形で描かれている。
何も考えられていない部分にこそ1番の個性がつまっている事に気づかされました。


「Naachinシリーズ」では、自己のコンプレックスを原動力とした
価値についての問いを、大量量産という形でやってきました。

「lines」は、無意識な部分から、自己を探っていくような
全く別の作品となっていきそうです。

自分の無意識を深掘りしていくのは、怖くもあり、
非常に削られる感覚があるのですが、だからこそやり甲斐があり、
今やるべき事として生まれてきたシリーズなのだと思います。

1枚のキャンバスとの対峙は、
制作が進み、絵がどんどん強くなってくると、
こちらが逃げたくなる感覚さえあります。
絵から逃げない強い気持ちが必要だと、「lines」の制作から学んでいます。

これから先の「Naachinシリーズ」や、
はたまた、また何か新しい事が始まるのかは分かりませんが、
今やってる事が全てに良い影響をもたらしてくれると思っています。

現状、私が日々思っている事を交えた「lines」についてでした。

それではまた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
中森かりん

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