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改めて、noteにも『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』の目次とまえがきを公開します。

2024年2月15日、新刊『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)を出版し、2024年8月現在、ありがたいことに6刷となっております。

タイトル通り、この国で死なないためのノウハウを、社会保障制度から民間のサービスまで網羅しました。
「お金」「仕事」「親の介護」「健康」「トラブル」「死」という6つの章がありますが、こういう時は市役所なの? 労基署なの? ハローワークなの? 年金事務所なの? 保健所なの? と迷った時のナビゲート役にもなると思います。
また、「親の介護」や自分の老後を考える時、高齢者施設ひとつ取っても、「特養(特別養護老人ホーム)」と「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」と「ケアハウス」と「介護付き有料老人ホーム」の違いなど、多くの人はわからないはず。
はたまた自分の死後の不安(ペットの世話やスマホの解約、銀行口座や遺産があった場合どうするのかなど)についての対処法もたくさん盛り込みました。
 
こちらの原稿でも内容にも触れましたが、noteでは「目次」と「まえがき」を公開したいと思います。

 

目次

 まえがき

 

序章 私の経験

私のフリーター経験

生きづらさを抱える若者たち

「ネット心中」が流行る背後で

プレカリアートとの出会い

「ロスジェネ」と名付けられる

年越し派遣村によって可視化された貧困

間近で見てきた、「人が助かる瞬間」

生死を分ける「情報」

コロナ禍、支援現場は野戦病院状態に

手に入れてきた「死なないノウハウ」

 

第一章 お金

―社会福祉士・横山北斗さんに聞く

自らの小児がん経験

家賃が払えない ―住居確保給付金

病院に行けない ―無料低額診療

ネカフェ生活で携帯が止まった ―生活保護

ブラックリスト入りしても契約できる携帯

友人がシングルマザーになると宣言―ひとり親が使える各種の制度

難病と診断されたら ―難病医療費助成制度

学費の負担が重い ―高等教育の修学支援新制度

生活費が足りない ―生活福祉資金

夫・妻が亡くなったら―遺族年金

DV男や毒親に居場所がバレたくない―支援措置、行方不明者の不受理措置

数年後、お礼を言いに来た「患者」たち

 

第二章 仕事

―プレカリアートユニオン執行委員長・清水直子さんに聞く

これまで約500件の相談を解決

その解雇、違法で無効かも

「契約終了」でも泣き寝入りしなくていい

もしも解雇を受け入れるなら ―解雇予告手当

仕事を失ったら ―雇用保険

だいたいある未払い賃金

労働組合に入るメリット

会社が給料を払ってくれない―未払賃金立替払制度

その弁償金、払う必要なし

仕事で病気や怪我をしたら ―労災保険

コロナ感染も労災に

業務外の病気や怪我で働けなくなったら―傷病手当金

上司のパワハラで退職したが……

「偽装フリーランス」の雇用責任

フリーランス共済

LGBTQs労働相談

外資系での解雇は仕方ない?

まずは知識のある人に相談を

 

第三章 親の介護

―「みんなの介護」編集部/一般社団法人LMN・遠藤英樹さんに聞く

まず連絡すべきところは……

問い合わせが集中するのは「お盆とお正月」

まずは要介護認定

介護にまつわる基礎知識

介護付き有料老人ホーム

住宅型有料老人ホーム

サービス付き高齢者向け住宅

グループホーム

ケアハウス

特別養護老人ホーム

介護老人保健施設

介護医療院

施設で好かれる方法

施設での飲酒・喫煙は?

ペットと入れる施設は?

遠方の親にはマメな連絡を

家族代行業? LMNとは

自らの介護経験から

9割が子どもからの依頼

施設ガチャ

延命にまつわる決断は家族で

100万円で「丸投げ」

ランチや旅行、入院中のメダカの世話まで

「自分が入院しても親に知られたくない」

 

COLUMN 潜入!入居金6000万円の高級老人ホーム!!

 

第四章 健康

―CSRプロジェクト・桜井なおみさんに聞く

突然の診断、入っていなかったがん保険

治療費がかさんでしまったら―高額療養費

仕事と治療を両立させる難しさ

パート代すべてが治療費に消える

日進月歩の進化を遂げるがん治療

とにかく「柔軟な働き方」

「休み方」より「働き方」

フリーランスががんになったら

体験者に聞く

10年で500万円の治療費

 

第五章 トラブル

―相談室ぱどる・原昌平さんに聞く

親亡きあと、ひきこもりのきょうだいの生活が心配

遠くにいる一人暮らしの親が使える制度は

「後見人」ってどういうもの?

相続でもめたくない

親が亡くなり口座が凍結

警察を動かすのは「告訴」

親の借金は子どもが返さなければいけないの?

身寄りのない人の入院は

高齢で賃貸物件が借りられない―UR、ビレッジハウス、居住支援法人

 

第六章 死

―般社団法人LMN・遠藤英樹さん/相談室ぱどる・原昌平さんに聞く

自分の死後のスマホやパソコン

孤独死での腐乱死体化を防ぐには

自分亡きあとのペットはどうなる?

散骨のガイドライン

相続についての基礎知識

遺産を寄付したい場合には―死因贈与契約

 

あとがき

 

ここからは「まえがき」です。 

 

まえがき

 

 

 誰もが知る女優が死後、「無縁遺骨」に――。

 2 0 2 2 年7月に亡くなった女優・島田陽子さんの最期は多くの人に衝撃を与えた。

 島田さんと言えば、日本人初のゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞し、その後、国内だけでなくハリウッドでも活躍。そんな大女優にふさわしからぬ報道がなされたのは、死後すぐのことだった。

「遺体の引き取り手がいない」「遺体はそのまま渋谷区の施設に安置されている」「自治体によって火葬された」――。

 さまざまな報道から明らかになったのは、亡くなる3年前に直腸がんと診断されたものの、病気のことは隠して遺作を撮影。闘病の果てに病院で一人、亡くなったという事実だった。享年69。しかし、遺体を引き取る人はおらず、渋谷区が2週間ほど遺体を保管して、自治体によって火葬されたという。生前、医療費がかさむと周囲に漏らしたこともあるらしい(朝日新聞 22年12月21日)。

 このことを知った時の衝撃は、今でもはっきりと覚えている。あれほど活躍していた人が、そんな最期を迎えるなんて――。ちなみに島田さんはがんと診断されていたわけだが、抗がん剤治療などをしていなかったことも報じられている。治療費の問題もあったのだろうか?

 その年の12月には、別の女性の最期を伝える新聞記事に愕然(がくぜん)とした(朝日新聞 22年12月22日)。それは皇室ジャーナリストの渡辺みどりさん。22年9月30日に亡くなったという。享年88。

 記事に書かれていたのは、遺体の引き取りや相続を親族に「放棄する」と言われたこと、終活のために10年以上前にマンションを売却したものの、そのお金はほぼ使い切っていたこと、遺体は長年付き合いのあった弁護士らによって荼毘(だび)に付されたことなど。

 島田さん、渡辺さんともに一人暮らしだったわけだが、20年の国勢調査によると、この国で一番多いのは「単身世帯」で38・1%。単身世帯は一貫して増加傾向にあり、1 9 8 5年は20・8%、5世帯に1世帯だったものの、今や2・5世帯に1世帯だ。

 また、65歳以上の高齢独居世帯は20年に6 7 2万世帯。2 0 0 0年の3 0 3 万世帯から倍増している。

 そんな中で増えているのが、身内がいても弔(とむら)う人がいない死者。日本では年間約1 5 0万人が亡くなるが、弔う人がいない人の数は近年だけで約10万6 0 0 0人。うち「無縁遺骨」は6万柱にものぼるという(朝日新聞夕刊 23年8月25日)。

 今、独り身ではなくても、離婚や死別で誰もが最後は単身になる可能性がある。

 島田さん、渡辺さんの死が頭から離れないのは、遺骨や遺体の引き取り手がいなかったことだけではない。経済的な困窮が垣間見える単身女性の死、ということがとても他人事には思えなかったからである。

 ちなみにこの国の貧困率は15・4%だが、突出して貧困率が高いのは単身高齢女性。一人暮らしの65歳以上の女性の実に46・1%が貧困ライン以下の生活を強いられているのだ。そして島田さんも渡辺さんも、65歳以上の単身女性だった。

 貧困ということで言えば、昨今、女性に限らずコンビニやスーパーで夜勤したり、警備員などとして働く高齢者の姿が目立つ。その多くが、その歳でも働かないと生活できない人々だ。つい最近も、土木作業員の女性が作業中の事故で死亡したというニュースに触れ、目を疑った。年齢が77歳だったからだ。

「失われた30年」で、日本が貧しくなったことは誰もが実感していることだろう。先進国で唯一、30年間給料が上がらず、一人あたりのG D Pはその間、7割程度に落ち込んだ。

 賃金は増えないのに、国民負担率(社会保険料と税金の合計が国民所得に占める割合)は上がり続け、5割に迫る勢いだ。80年代は3割だったのに、である。これにはネット上で「五公五民」(江戸時代の年貢の負担率を示す)という悲鳴が上がっている。収穫した米の五割を年貢とし、残り五割が手元に残る状態で、幕府の財政悪化を理由に「四公六民」から「五公五民」になった途端、日本中で一揆が起きるようになったという。

 しかし、令和の現在、一揆が起きる気配は微塵もない。

 

 さて、ここで自分のことを書くと、私は49歳の独り身、フリーランスの文筆業だ。

 配偶者も子もなく、いるのは猫が一匹。

 東京で一人暮らしを始めて約30年。親ときょうだいがいるのは遠く離れた北海道だ。

 最近、「将来もらえる年金額」みたいな通知が届いたので開封してみたら、月に4万円くらいだったので見なかったことにした。

 厚生労働省の簡易生命表(22年)によると、日本の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳。私の場合、平均寿命までまだ38年もある計算だ。「老後2 0 0 0万円問題」を持ち出すまでもなく「これから先」を考えるだけで目の前が暗くなる。

 本書は、そんな不安を解消すべく、情報を集めまくった一冊だ。

 働けなくなったら。お金がなくなったら。親の介護が必要になったら。それで仕事を続けるのが難しくなったら。そして自分が病気になったり入院した時、頼る人もいなければどうしたらいいのだろう?

 そんな疑問から始まった取材は、がんになった場合に使える制度から「親の介護」を考えた時にまず相談する先、高齢者施設の種類と平均月額・平均入居一時金額、はたまた自分が死んだあとのペットの世話やパソコンやスマホの処分、それだけでなく遺言や散骨の方法まで網羅する結果となった。

 本書を書き終えた今、この先病気になろうが、仕事がなくなろうが、一文無しになろうが、世の中すべてを敵に回そうが、役所で適当にあしらわれて追い返されようが、ビクともしないだけの情報を身につけている。いわば「無敵」の状態だ。

 ということで、ここまで集めた「死なないノウハウ」を、多くの人に伝授したい。

 本書を読み終える頃には、あなたもきっと「無敵」になっているはずだ。



 『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』


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