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愛だと言って

※内容に触れていますので、知りたくない人はスルーしてください

 ディズニー+の「愛だと言って」が終わってしまった。
湿気たっぷりのドラマだった2話更新なので、一度に2話も観ると、どよよーんとなってしまうのに、続きが早く観たくなるという、恐ろしいドラマだった(褒めてます)

 主人公の女性は、高校生の時に父親が女を作って出ていき、その後母親は体を壊して田舎へ引っ込み、姉と弟と3人で、唯一の財産である持ち家で暮らしていた。
 のだけれど、父親が亡くなって、不倫相手だった女性に家まで奪われ、幼馴染の家を間借りする暮らしになってしまう。
 そして、その不倫相手には同じ年頃の息子がいて、会社を経営していることを知り、近づいて復讐してやろう、と思うのだけれど、実はその息子も、放蕩な母親のせいで婚約者にも去られ苦労が絶えないことを知って・・・気付いたら好きになってしまってる、という話が大筋。

 まあ、不倫は誰も幸せにしないよ。
 私がこのドラマで、主人公のロミジュリみたいな恋愛よりも心配して応援したかったのが、主人公のお姉ちゃん。
 真面目な銀行員で、復讐なんて根暗なこと考える妹よりも、恋愛して楽しくやっててのほほんとしてそうに見えて、実はもちろん、過去の親の離婚、父親の不倫に傷ついててトラウマになってる。
 ひとりで食事をすることが寂しくて常に誰かを好きでいたくて、付き合う男性がまあまあクズ。でも、こういう、相手に合わせることが愛だと思って自分を大事に出来ないコって案外多いのかもしれない…。
 一方で、主人公の高校時代からの友人のジュンは、イケメンで家事も出来てすっげーいいやつなのだけど、うるさい両親のもとに育って、家庭的、なものへの拒否反応がある…両親自身が少しも幸せそうでもないのになぜ家庭を持てというのかわからない…ごはんは静かにひとりで食べたい派…そんな一見真反対のふたりが、最終的に一番落ち着く場所としてお互いといることを選ぶ、のが、とても素敵でした。
 表面的には銀行員と薬剤師、周りの人のことをちゃんと気遣えるし、主人公やその家族たちのことを心配できるやさしさがあって、でも実は自分たち自身がいろんなことを抱えて隠して明るく振舞っている・・・そんなお姉ちゃんとジュンは、物語の中で大事な緩衝材だったと思います。

 あとは、後半も後半になって、やっと実物が登場した主人公のお母さんの存在感。田舎にいる、だけで最後まで出ないのかと思ってたら、現れたとたん、「ああ、この子たちがこんなに立派なのって、このお母さんが育てたからなんだな」と思えてしまうような、シャキッとした品のある人なんですよね…(お父さんはこのきれいでしっかりしたお母さんを捨てて、品が無い化粧品訪問販売の女に引っかかってしまうのって・・・どーなんて思うけど、男ってそういう生き物なのかもしれません・・・やだけどw)
 最後の最後、夫をたぶらかして家まで奪った女に、「最後まで品を持って話をする」って言いきって、声を荒げず、言いたいことが言えるお母さん、最高かよっ、て思いました(真似できそうにない)。
 女優さんの演技力ももちろんなのだけど、そういう設定にした監督さん、最高・・・。逆にその、お父さんの不倫相手にして、主人公と恋をする男性の母親、の女優さんも演技がうますぎて、ほんっと、死んでくれ、って思うほど下品で憎らしくて(ほんとの女優さんはとっても素敵で大好きなのにマジこのドラマの間だけは憎らしかった)、この人絶対更生しないから、死んでくれない限り主人公ふたりが結ばれるのって無理じゃない??って思ってたのだけど・・・この不倫した母親も(頭が悪いだけで)愛を探して生きてきた人なわけで、
 息子の愛を自分が妨げてたんだ、という事実を知った時初めて、自分の人生を後悔する、というおとしどころも、すごくうまいなあ~と思いました。

 ずっと霧の中にいるような、フィルターがかかった映像で、眠くなりそうなゆーっくりとした展開なので、好みがわかれるところだとは思うし、私も普段は、サスペンス要素ある展開の速いドラマが好きなので、はまれたのはひとえに、役者さんたちの技量に尽きる。
 いやマジで、主役のキム・ヨングァン氏、普段の爽やかさをどっかに置いてきて、どこまでもじめじめで覇気の無い若者を演じてたの最高でした。






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