0901 幻聴
弱くて、脆くて、すぐに壊れる。
ずっと昔に淘汰されておくべきだった。
傷ばかりで、汚れた身体にシャワーヘッドを向ける。
いらないものを落としたくて風呂に入ったのに、見たくないものばかり見えて、落としたいものは落ちない。
透明な水が排水溝の奥へ吸い込まれていく。
こびりついた汚れを落としきれないまま外に出る。
泡立ちの良さと香料で誤魔化しを効かせようとしていることも、それによってでしかお湯を止められないことも、腹が立つ。
足を床につけた途端にまた汚れるというのに。
通知ひとつで呼吸ができなくなって、指先が痺れて、耳が聞こえなくなること、あなたは知らない。
知らないからそんなことが言えるのだ。知っていたら何かが変わるのか。
無意識に人を傷つけている可能性があること、意識下に置いておけ。
私は何も強くない。強そうに見えるか。
強そうだから、何を言ってもいいのか。
どんな武器を向けようと、どんなに力任せに攻撃しようと、倒れないと、傷はつかないと、そう思うか。
人はこんなにも弱いから、愛だ助け合いだと言って生きていくしかないのに。
朝が怖くなって、人間が嫌いになって。
またあの時と同じ。過去の景色が何度も何度も何度も再生される。音や匂いですら引き金になる。
幻聴だと言い聞かせる声もまた幻聴。