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星と祭 その拾参

2020年6月4日記

主人公 架山洪太郎が訪れた十一面観音の記録

13.長命寺 十一面観音立像

架山と大三浦はすぐに回廊に上がり、本堂の外陣にはいった。弁慶障子によって内陣と分けられてある。
さらに内陣に進むと、正面に礼壇が置かれ、その向うに胸ぐらいの高さの須弥壇が設けられてある。そして、その前に金色に輝いた小さい十一面観音が置かれてあった。
「なかなか美しいお姿をしていらっしゃいますね」
架山が言うと、大三浦は、
「これはこれでご立派でございます。ご本尊は、うしろのお厨子の中にはいっていらっしゃいますが、そのご本尊の前に立っておられるので゛お前立ちの観音さま”と申し上げます」
・・・・・・
お厨子の載っている須弥壇そのものが胸くらいの高さなので、当然、お厨子の中の仏さまたちは下から見上げることになる。住職が持っている蝋燭の光が辛うじて厨子の内部に届いて、そこに三体の仏像が置かれてあることを示している。
「中央が千手観音、右が十一面観音、左手が聖観音、いずれも藤原の初期の作で、重文に指定されております」
住職が説明してくれた。架山の眼に最初にはいって来たのは、中央の千手観音である。頭上に十一面を戴いているに違いないが、首から上の部分は暗くてよく見えない。腰を捻り、右膝を少し前に出している。そうした姿勢をとっている体躯を押し包むように、体の左右から無数の手が出ている。そしてその一本一本の手に握られている物だけは光ってみえるが、あとはどこも黒くなっている。顔も黒し、体も黒い。
その右手の十一面観音は五、六十センチぐらいの大きさ。この方は金箔が僅かに残り、顔は瞑想的である。
「千手、十一面、聖観音三尊一体のご本尊ということで、昔からこの三尊を同じ厨子にお祀りしております」

<写真 パンフレット引用>

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