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星と祭 その漆

2020年6月2日記

主人公 架山洪太郎が訪れた十一面観音の記録

7.西野薬師堂(充満寺蔵) 十一面観音立像  
「右は薬師如来、左は十一面観音です」
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がっちりした体格の観音さまである。頭の仏面は小さく、しかも煤けて真黒になっており、殆ど彫りや刻みは判らない。いつか体だけに漆が塗られたらしく、体だけが黒く光っている。顔も堂々としており、胸のあたりも僅かに捻った腰も堂々としている。
「なかなか立派な観音さまですね」
架山が言うと、
「この観音さまをお守りしていますと、ほかの観音さまが貧弱に見えてきて困ります。何しろ、胸も厚いし、腰回りもみごとです」
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「藤原時代の作だということです」
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「琵琶湖は背になります。琵琶湖に背を向けてお立ちになっていらっしゃいます」
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「この二体の仏像ももとは泉明寺という大きな寺にあったものらしゅうございます。何でも己高山一帯に大きな伽藍があり、たくさんの寺があったと言われていますので、泉明寺もそうした寺の一つであったろうと思われます」
「_______」
「その寺が、浅井時代に兵火にかかり、建物は焼けましたが、仏像だけは救い出され、在所の人の手でお堂が造られ、ずっとそこにはいっていました。いまのお堂は、それを造りかえたものです。そうですね、このお堂を造ってから、もう二十五年ほどになりましょうか」

<写真 パンフレット引用>

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