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星と祭 その伍

2020年5月31日記

主人公 架山洪太郎が訪れた十一面観音の記録

5.盛安寺 十一面観音立像
微かに笑っているようなふくよかな顔である。眼は殆ど閉じられていて、二本の手は前で合掌し、その両手には天衣がかけられてある。その手とは別にもう二本の手があって、片方は杖を、片方は蓮を持っている。頭に戴いている仏面のうち頂上面だけが高い。以前はもちろん彩色してあったものであろうが、もとの色は判らず、古さだけが像全体を包んでいる。
架山は、いま眼の前にある観音像を、自分がこれまでに見た同じ湖畔の他の四体の像と較べることはできなかった。ほかの四体も、それぞれによかったが、これはこれでまたすばらしいと思った。観音さまの微笑みをふくんでいる顔を仰いでいると、自然にこちらも微笑せずにはいられなくなる、そんな感じである。
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「どれもいいとすれば、こうしたお堂に収まっているからだろうね。確かに十一面観音像はこういうお堂にあるべきなんだろうね。そして、こうして拝むべきものなんだろうね。ほかのたくさんの仏像の中に置かれてあると、こういうよさは出て来ない」
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「これは安産の観音さまでしてね」
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「もとは、崇福寺にあったそうです。それが、この観音堂ができた時、ここに移っていらしった。確かそんな話です」

<写真 パンフレット引用>

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