世紀末リーダー伝たけし!と牧場物語GB3に出てくるよく似た話

子どもの頃から気になっていたことがある。「世紀末リーダー伝たけし!」という漫画と「牧場物語 GB3 ボーイ・ミーツ・ガール」というゲームに、非常によく似た話がでてくるという事。

かなり酷似していると思うんだけど、ネットを調べてみても誰も語ってないし、それどころか照らし合わせるためのソースすらないという様相だったので自分なりにまとめてみた。

■世紀末リーダー伝たけし!


単行本14巻もしくはワイド版7巻に収録されている「リーダー119 ゴン左衛門の恩返し」という話。ピッコマとかLINE漫画で無料で読めるので手元にない人はそっちを参照してほしい。「たけし!」は現代を舞台にした基本1話完結型の漫画なのだが、このように普段は主人公のライバルであるゴン蔵を主役に据えた架空の昔話が始まることもある。普通にいい話だから是非とも漫画で読んでほしい。

一応かいつまんだあらすじ↓

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親切な人しか住んでいない恩着せ村(こういう名前の村)に、ゴン左衛門という世界一の怠け者がいた。ゴン左衛門は自分から人に親切にすることはなく、恩着せ村の住民の親切に甘えながら暮らしていた。

見返りを求めて親切をしていたわけではない恩着せ村の住民だったが、ある時愛犬が吠えた場所から宝の山が出たり、子供が欲しかった老夫婦が竹の中から女の子を見つけたり、助けた鶴が恩返しに来たりと恩返しブームが村に到来するようになる。

それを見たゴン左衛門は見返りがあるなら話は別だと、「桃太郎を拾って鬼を退治してもらい富と名声を自分が得よう」という考えのもと、川から桃が流れてくるのを待つ。しかし実際に流れてきたのはお尻が桃のようにプリンプリンした変な生き物で、ゴン左衛門は逆ギレして変な生き物にドロップキックを食らわせ追い返す。

その日の夜、ゴン左衛門のもとに頭が花の形をした犬、花ブーがやってくる。花ブーは変な生き物から救ってもらったお礼に恩返しをしたいと言い、ゴン左衛門は心当たりがないながらも喜んで受け入れる。

画像1

恩返しに来たとはいったものの、掘った場所からは何も出ず、鶴のように機を織らせても何も作れず、それどころか逆にゴン左衛門にご飯を作ってもらうといった具合で花ブーはやる気とは裏腹に全く役には立てない。

最初は恩返しを期待していたゴン左衛門も、自分より情けない花ブーの世話に精を出すように。そして悪態をつきつつも、自然と花ブーと一緒に暮らす生活が楽しくなっていた。一方の花ブーは、ゴン左衛門に恩返しができていないことをすごく気にしていた。

ある日の夜ゴン左衛門は花ブーに正体を尋ねる。花ブーの正体は変な生き物を追い返した時に踏みつぶされそうになっていた花だった。自分は売ればけっこうなお金になる珍しい花だという話をする花ブー。その瞬間、花ブーは自分ができる恩返しの方法に気付いてしまった。

次の日の朝、ゴン左衛門が目を覚ますと花ブーの姿はなく、庭に一輪の花が咲いていた。花に戻れば二度と今の姿に戻れないと知りつつも、花ブーは花に戻って自分をお金に換えてもらうことでゴン左衛門の役に立とうとしたのだった。

昨日の会話を思い出しながら泣き崩れるゴン左衛門。「金なんかどうでもいんだよ、戻ってこいよ‼」「売るワケにいくかよ…バカヤロウ…」花に戻った花ブーとともに号泣するゴン左衛門。

数年後、ゴン左衛門は畑仕事に精を出していた。世界一の怠け者がここまでやるとは、と驚く村人。「見返りなんかなくても誰かのために何かを頑張るってのは気分が良いものだ。」「こいつぁ俺にそれを教えてくれた奴へのささやかな恩返しさ・・・!」

「一輪じゃさみしいだろうからな!!村中をこの花でいっぱいにしてやるんだ!!」ゴン左衛門の家の庭には花ブーと同じ花が一面に広がっていた。

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■牧場物語 GB3 ボーイ・ミーツ・ガール

牧場を営むのがメインのゲームなのだが、映画館に行くと本筋と関係のない短いお話を見ることができる。季節によって上映される作品は変わり、その中の(たしか)秋に上映されている作品が村一番の怠け者。秋までゲームを進めるのも地味に面倒だし今日び簡単に手に入るゲームでもないと思うので、ゲーム中のテキストを以下にまるっと引用させてもう。

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おおむかしに とてもしんせつな むらびとばかりが すんでいる、

ちいさな ちいさな むらが ありました

むらびとは みかえりを もとめているわけではなく、

だれにでも しんせつに せっしていました

あるひのこと。いままでひとに しんせつにしてきた むらびとに、

おんがえしのような よいことが いっせいに おきました。


かっているいぬに ついていって じめんを ほってみると、

きんぎんざいほうが やまのように でてきました

ずっと けっこんしたいと おもっていたひとに、

すぐに けっこんあいてが できました

こどもが なかなか できなかった かていに、

ほしかった こどもが うまれました

そんなうわさを ききつけ むらいちばんの なまけものも、

ここぞとばかりに よいことを はじめました

しかし なまけもののおとこには よいことは おきませんでした

むしろ、それどころか、いえの とびらが こわれたり、

やけんに おそわれたりと ふこうなことばかりが おきました

そして なまけものの おとこは もうどうでもよくなり

よいことを するのにつかれて ねむって しまったのです

しかし なまけものの おとこが やけんに おそわれたときに、

ぐうぜんにも かれにとって しんせつなことが おきました

それは やけんにふみつぶされそうになった いちりんの はなを、

この なまけものの おとこが すくったのです

さっそく このおとこに いちりんの はなによる、

うれしいうれしい おんが かえってきました

たすけられた そのはなは すがたかたちは そのままで、

なまけものの いえに やってきました

なまけものの おとこは たすけたおぼえは ないのに、

おおよろこびし すぐに みかえりを もとめましたが、

そのはなは なにも することが できません

それどころか この おとこよりも なまけもの だったのです

画像2

なまけもののおとこは このはなが あまりにも だらしがないので、

ごはんを つくってあげたり みずを あげたりしました

いままで じぶんいじょうの なまけものを みたことがないので

じぶんが なんとかしないと いけない というきもちが、

この なまけものの おとこに めばえて きたのです

このような いちりんの はなとの せいかつは、

ともだちの いない このおとこには なかなか たのしいものでした

そしてあるよるのこと、 なまけものの おとこは

いちりんの はなに なにが できるかと たずねました

いちりんの はなは こたえるのに こまりました

いろいろと かんがえてみても なにも おもいうかびません

めずらしい はななので うったら かなりのおかねになる・・・

と、こころのなかで おもい やっと じぶんができる、

ゆいいつの おんがえしがみつかり そのよる けついを たてました

つぎのひ なまけものの おとこが おきてみると そのはなは もう…

うごくことも しゃべることも できなくなっていました

にわで たいようの ひざしを さんさんと あびながら、

ただ じっと……… さいている だけでした

なまけものの おとこは きのうの かいわを おもいだし、

じぶんのために おかねになろうという、

はなのかんがえが つたわって きました

そして めからは おおつぶの なみだが こぼれおちました

このおとこにとっては もう おかねなんか なくても、

おんがえしなんか してもらわなくても よかったのです

ただ このはなと いっしょに くらすだけで よかったのです

そして そのひから なまけものの おとこは、

まいにち いっしょうけんめいに はたらくようになりました

むらびとが どうしてそんなに がんばるように なったんだと、

この なまけものの おとこに たずねました

すると なまけものの おとこは こう こたえました

にわに かだんを つくって はなばたけを つくるんだ

はないちりんじゃ さみしいだろうからな、と

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以上。何となく似ている事が分かっただろうか。それともこの二つの下敷きになるような話がひょっとしてあるのだろうか。特に何か言うつもりはないが、それぞれの発表年も調べてみる。

「牧場物語」のほうは、発売日は2000/9/29との事。

一方「たけし!」は単行本の情報から2000年8号のジャンプに掲載されていた事が分かる。さらにオークションに出てた8号の巻末に書いてある、次号の発売日から逆算すると発表日は2000/1/25だと考えられる。(ジャンプって昔は火曜日発売だったんだ・・・)

あと単行本の15巻の作者の振り返りによると、1999/12/31の20時ごろ完成した原稿らしい。「〆切1日前で、ネームが全くない状態から、現行の下描きでぶっつけ本番で描いた話」という事が赤裸々に描かれている。

入稿の日時を抜きに考えても「たけし!」の方が半年以上先に発表されている。

この情報を基に何を思うかは読み手に任せることにする。






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客観性を欠いた感想

絶っっっっ対しまぶー(「たけし!」のほうの作者)がやらかしてると思ってた。ごめんしまぶー!!しまぶーは忘れっぽくて『観たことがある映画も気付かずに観てしまって、最後の辺りで「これ見たことあるわ」ってなる』っていう話をしてたから、絶対過去に牧場物語をプレイしてて、忘れたころに同じもの描いちゃったっていうパターンだと思い込んでた。マジでゴメン。

・二つを比べてよく分かったんだけど、うっかりかぶったとは考えにくいんだよな。容量の問題があるのかもしれんにせよ、牧場物語の方は描写が雑で十中八九「やってる」。

・昔話に恩返しが出てくるの自体はよくある事だと思うんだけど、それプラス偶然助けた花が唐突に足を得て恩返しに来るっていうのと、花に戻ったらもう元には戻れないっていうのも「やってる」。普通だったら神様が手足をくれた~とか説明しちゃいそうなところだけど、この辺の細かい説明の省きっぷりまでかぶることがあるだろうか?

・あと「たけし!」では花が恩返しをしようという気持ちが強かったからこそ怠け者の胸を打ったというラストに響いてくるんだけど、「牧場」のほうはそもそも花側に恩返しをしようという気概が全く感じられない。男に聞かれたから仕方なく花に戻った感じが凄い。ゲームのグラフィックも載せたかったんだけど全然見た目可愛くないし…。貼ってた絵はマジで忠実に描いてるのよ。挙句「男よりなまけもの」って言われてるし。働き者の無能と働かない無能だよ。現実にはどっちがマシかってのはともかく、「恩返しに来た」ってテイならやる気はあってほしい。

・恩返しとして出てくる例にも違和感。鶴は恩返しするものの代表例だから分かる。ここ掘れワンワンもまぁ~~恩返しとしてはギリ分かる。子供を欲しがっていた家庭が子供を授かる←これは違くない!?「たけし!」ではこれは一応かぐや姫として描かれてたんだけど、これは「たけし!」にしか出得ないアラなんだから、ここコピーしちゃったら「やった」のバレバレだと思うんだけど!?「やる」にしても代えとくべきだったのでは!?

・桃を待ってたら変な生き物が流れてくるくだりとか「たけし!」独特のノリなんだけど、流石にここをコピーするわけにはいかなかったのか「牧場」の方はドアが壊れたり野犬に襲われたりととってつけたような不自然さを感じる。

・擁護・・・互いに第一線で働くクリエイター同士だから同じものを見て同じものが出力された可能性もあるよな。ジャンプの中でも同じ号でネタ被りすることとかあるし。

・原稿にぶっつけで描いたような限界状態のものだったっていう説明からして、しまぶーがまた別の作品から「やってる」可能性もゼロではない。

・あと私が知らないだけで、この二つの下敷きになったような有名な話がもしかしたら存在してるのかもしれない。それだったらマジちん謝。

・それはそれとして「牧場物語GB3」は単純にゲームそのものの出来が正直あまりよくない。決まった曜日に晴れてないと買い物ができなかったり、男の子と女の子で露骨な性能差があってしかも女の子側には強制的にゲームが終わるイベントがあったりして、「遊ぶ人の事は二の次でとりあえず役目済ましで作りました」感が否めない。だから今回の結果も「まあ納得は行くかな・・・」って感じではある。上の方から「テキトーに感動する小話でも入れといてよ」!って言われて、たまたまその場にあったジャンプからまるっと「やった」んだろうなっていう勝手な想像をしている。とりあえず長年の謎が解けてスッキリである。

・「トリコ」のほうが有名になっちゃったけど「たけし!」も面白いからみんな読もうね。

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