個人ブロガーのモラルに関する、おだやかでない話

ぼくには、その記事がいいものなのか悪いものなのかの判断がつかない。

少なくとも、自分の価値観と大きくズレていると感じたわけだが、そのズレは無知や偏見から来るものだったのかもしれない。

だから、糾弾という体裁でその記事を紹介することはやめておこうと思う。

ここからは、件の記事の内容の抜粋と、その記事からぼくが感じたことだけを書く。その先は、読者の方々の判断に委ねることにする。

この発信を通じて、何らかの議論が起きるのか、もしくは一笑に伏されるのか、それだけが知りたい。


もったいぶっても仕方ないので、さっそく記事リンクを載せておく。

2018年7月公開。少し古い記事だ。

累計「スキ(高評価)」数は1,357。これはnoteの全記事の中で43位の数字だ。(執筆時点)

人気記事と呼んで差し支えないだろう。

著者のTwitterアカウントではこの記事が固定表示されている。

noteのコメント欄もTwitterのリプ欄も絶賛の嵐だ。否定的な意見は一切見受けられなかった。


それでもやはり言いたい。この記事に書かれていることは、気持ち悪い。

「間違っている」とは言わない。何が正しくて何が間違っているかなど、個人の価値観によって違うものだ。ただ、ぼくは気持ち悪いと感じた。そのことだけ、表明しておきたい。


ここからは、記事の内容について語ろう。

このnoteでお伝えする内容は純広告獲得を目的とした特化型トレンドサイトのジャンル選定SNS拡散純広告獲得に関する戦略とテクニックです。

全体概要はこんな感じだ。

ジャンル選定についてはぜひ参考にしたい内容だ。需要がある市場を見つけ、エッジの立った露出を行う。正攻法と言っていいだろう。

純広告獲得については記事内で述べられていないが、「そのうち書くかもしれません」とのことだ。これもまあ納得はできる。

取り上げたいのは、SNS拡散に関する記載だ。


少し長くなるが、引用しよう。

まず、ご自身のTwitterフォロワーの属性を思い出してください。

きっとアフィリエイターさんやブロガーさん率がめちゃくちゃ高いですよね?8割ぐらい占めてませんか?

私たちアフィリエイター、ブロガーのタイムラインには毎日アフィリエイトやブログの情報がたくさん流れてきます。

逆にサッカー選手の筋肉の話題はほとんど流れません。*W杯中は例外

特定のジャンルに興味があるアカウントのフォロワーはコアなアカウントが多いのは当然ですよね。特化トレンドでこのフィールドを掴まえたら拡散バズ天国なのです。

つまりサッカーや筋肉に強い興味があるフォロワーを集めた拡散用アカウントを作る必要がありますね。例えば

 1、サイト公式
2、サッカー大好き地方のJK
3、イケメンスポーツマンと合コンしたい商社勤務の美人OL
4、肥満なサッカーマニア中年
5、サッカー部現役高校生


のように複数の拡散用アカウントを作ります。上記内容は適当です。
拡散用アカウントのコツ→同じ属性で活発に活動しているアカウントがあるかどうか、この辺を調べて決めていきましょう。

サッカー大好き地方の女子が集まってるハッシュタグとかがあればすごくやりやすいって言う感じのイメージです。その設定のキャラクターで濃いフォロワーを増やせそうか見極めましょう。

上手く運用してそれぞれ数千フォロワーまで持っていきましょう。
公式アカウントのフォロワーより拡散用アカウントのフォロワーの方が警戒されないので増やしやすい傾向にあります。拡散用でそれぞれ2000フォロワーだと1記事更新すれば4人で8000の効果がありますね。しっかり濃いフォロワーを集めてないと拡散力が弱いです。

拡散用アカウントとサイト公式アカウントを完全に切り離す事も大切なポイントです。中の人が同じだと悟られてはいけません。それぞれが別人格でないと全ての努力が水の泡です。

いわく、サイト公式アカウントではフォロワーの属性が合わないので、ターゲットの属性に合わせた拡散用アカウントを作るべし、とのことだ。

そして、拡散用アカウントは公式アカウントと「中の人が同じだと悟られてはいけ」ないらしい。


さらに話は続く。

例)特定のサッカー選手をヨイショする記事を書きます

いい記事が出来たら拡散用アカウントで本人に突撃します。これは公式アカウントだと多くの場合失敗します。先ほどの2-1.のアカウントがある場合、JKアカウントか美人OLアカウントでいきましょう。

公式アカウントではない拡散用アカウントで「こんな記事があるみたいですよ」と絡みにいくことで、記事を紹介してもらおう、というノウハウだ。


思いきって言いたいことを言う。

これは、「ス」で始まるあの禁忌とされるマーケティング手法ではないか?


要するに、受益者であることを伏せて無関係の第三者を装い、集客を行おうとしている、ということらしいのだ。

記事の著者であるヨット氏が書いた別の記事には、実際に集客に利用したTwitterアカウントのIDが明記されている。有料情報につき詳細は伏せるが、プロフィール欄には明らかに本人のものとは異なる肩書きが記されていた。

これは、企業倫理的には明らかにNGだ。ぼくは広告会社勤務だが、もしクライアントに対して「架空の一般人が作ったように見えるTwitterアカウントを使って、オウンドメディアを宣伝しよう」などという提案をしようものなら、どんなことになるか容易に想像がつく。


いや、もう少し考えよう。

もしかすると、企業ならダメでも個人ブロガーならOKとなる道理があるのかもしれない。

例えばもし、完全なプライベート用アカウントで事実と異なる架空の人物を装っていたら。賛否はあるだろうがあまり違和感はない。古き良きネカマ文化のような風情を感じるし、個人的にはむしろちょっと好きだ。

しかしこの記事で述べられていうのは、ブログへの集客を増やすことで広告収入を得る、マネタイズ手法だ。そのために架空の人物を装ったアカウントを作ろうと勧めている。

そうなると、企業との違いは収益の規模くらいしか思い浮かばない。収益が小さければOKとなるのだろうか。いまいち腑に落ちない。


念のため断っておくが、おそらく勧められている方法に違法性はない。

ざっと調べた限り、「ス〇〇」が違法となる可能性があるとすれば景品表示法における「優良誤認表示」または「有利誤認表示」に抵触する場合が考えられるようだ。紹介されている方法は、自サイトを不当に優良または有利に見せるものではない。

実際のアカウントも確認したが、公式アカウントの記事紹介ツイートを追加コメントなしでリツイートしているだけだった。


つまり、ここで問いたいのはビジネスにおけるモラルの問題だ。

正直、驚いた。

企業であれば絶対に避けたがるような宣伝方法が、ブロガー界隈で絶賛されていて、それに対して誰も異を唱えていなかったからだ。


信じていただきたいのだが、ぼくは特定個人を糾弾するためにこの記事を書いたわけではない。ここに紹介されている手法の是非について、色々な人の意見が聞きたいだけだ。


ぼくは今年の3月に会社を退職し、一人でインターネットビジネスを始めようとしている。貯金はあまりない。できるだけ早く成果が欲しいし、稼げるならたくさん稼ぎたい。

しかし、それ以上にモラルを大事にしたい。一般企業の人間から見ても気持ち悪さを感じないようなやり方を使ってお金を稼ぐことができなければ、たとえどれだけ儲かったとしても、会社員を続けている友人知人に合わせる顔がなくなってしまうからだ。

押しつけがましいかもしれないが、会社を辞めて「好きなことで生きていく」ことを選んだ諸先輩方も、同じように考えていると信じたい。

でなければ、胸を張って自分の生き方を語っていく自信がないのだ。

あの記事に「スキ」をつけた1,357人は、どんなふうに考えているのだろう。


しつこいようだが、ぼくは特定個人を批判するつもりでこの記事を書いたわけではないし、もしかしたら、ぼくの無知や偏見によって妙な言いがかりをつけてしまっているのかもしれない。不快に感じる方がいるのだとしたら、ここでお詫びしておく。

ただ、この手法の是非について色々な人の意見が聞きたいと思っている。

よろしければ、コメント欄などに書き込んでいただけるとありがたい。

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