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心理ニュアンス翻訳家

カウンセラーの仕事についての自問自答です

最近、カウンセラーとして仕事をしているときに、誰かの雑な言葉で生まれた誤解を修正することを心がけています。文章が下手なくせに修正なんてできるのかよ、というツッコミが聞こえてきそうですが、続けますね。

『自分や相手が言った言葉から表現者の意図をくみ取って、表現されなかった重要な部分を足して、わかりやすい形で伝える』そのような試みを「心理ニュアンス翻訳」と呼ぼうと思ったわけです。

というのも、心理屋さんって何をしているのかとよく聞かれるからです。

他業種の人からすると、カウンセリングや心理療法をすることが心理士の仕事だと思われています。ちなみに臨床心理士には、次の4つの主な仕事があります。

「臨床心理査定」:テストや面接を通じて、その人の特徴や抱えている問題を明らかにすることです。また、援助の方法も同時に考えます。
「臨床心理面接」:いわゆるカウンセリングです。クライエントと心理士の人間関係において、共感や、理解されたといった体験をすることで良い変化が起こることを期待した取り組みです。
「臨床心理的地域援助」:心理士の専門知識を生かしてコミュニティにおける心の健康の増進を目的として、心理的な援助やコンサルテーションを行います。
上記の①~③に関する調査や研究:プライバシーに配慮しながら、事例研究などを行います。自己研鑽にもつながる部分があること、専門家内における経験や知識のシェア、などの効果が期待されます。


『自分や相手が言った言葉から、表現者の意図をくみ取って、表現されなかった重要な部分を足して、わかりやすい形で伝える』

「心理ニュアンス翻訳」はどれにも適用できるものだと思われます。そもそも、心理屋さんが備えているスキルのひとつとも言えます。実際に翻訳する手順としては次のような感じになると思います。

①話し手さんの考えを共感的に理解する
②受け手さんの反応を観察する
③受け手さんがどのように受け取ったのか把握する
④その結果、その表現で足りなかった部分を見つけ出す
⑤補足する

という流れになるからです。

割と私たちが日常で行っている事と大差はないかもしれませんね。けれど、それを仕事として行う事が重要なのです。

色々な人のコミュニケーションを観察していると、話がズレていたり、十分に考えが共有できていないと感じることがあります。放っておくと、後から「やっぱり誤解していたんだ」と自分の感覚が間違っていなかったことが明らかになったりします。

それをさらに放っておくとトラブルになったり、大きな損失を生んだりするかもしれません。

そもそも、「心理ニュアンス翻訳」なんていう言葉を使わなくても、すでに存在している技法や考えで十分なのではないかと思いますよね。

ぶっちゃけるとそうなんですが。

でも、何をしているかわかりやすいですよね。

例えば「精神分析」と言われると具体的に何をしているか謎な部分が多くてちょっと怖いですし、敷居が高くなってしまうと思います。

どんなメリットがあるかというと、自分のコミニュケーションについて考える事ができます。
他人のコミュニケーションを見るのは簡単ですが、自分自身のコミュニケーションについて自覚することは難しいものです。

自分の発言がどう伝わったかという事に注意することは多いと思いますが、そもそもの「自分の考え」について具体的に自覚している人は少ないと思います。

こういう状況に陥りがちなのは、多くの人が自分自身との対話をあまりしていないためではないでしょうか。自分自身に疑問を抱くことが少なく、考え方やモノの見方を深めたり、広げるということをしていないと、画一的にものを見るようになり、ワンパターンな表現で相手に伝わると錯覚してしまうからです。

心理屋さんの多くは、自分自身との対話を多くしています。その深さと広さの分だけ、他者を理解する力が大きく、受け入れる度量がついていくのです。十分に自己理解ができており、自分の中に落とし込んでいれば、瞬間的に発せられた言葉のニュアンスを感じ取り、言語化することができるのです。このスキルに仕事をさせると、「ニュアンス翻訳」になるのです。

問題点は、上手に使わないとおせっかいになります。

押し付けると疎まれます。

心を読んで空気が読めない人扱いされます。
求められるまでは動かないのが大切です。

求められるようなやり方が大切です。

下手すると、コミニュケーションの不味さを指摘するような感じになりやすいです。自分で気付けるように促せると良いのですが。

だから、このスキル単体で仕事をさせることが少ないのでしょうね。

需要が増えないのでしょうね。


<正しく表現することの重要性>

うつ状態の方を見ていると、非常に言葉を大げさに使う傾向にあります。「仕事をミスった、おしまいだ」

ミスをしたのは事実です。事実はそれだけです。おしまいではありません。失敗を広げて受け止めてしまうのです。それを言葉にしてしまうと、さらにそれが事実であるかのような気がしてしまいます。そして余計にふさぎ込んでしまいます。

「仕事でミスをしてしまった。謝らなければいけない」

これくらいのレベルに表現を切り替えるだけで、状況を打開できる雰囲気がでてくるのです。嫌ですけど、謝れば済みます。次があります。


「はあ、どうしよう」

よく耳にする言葉ですね。「言葉」と言っていいのかわからないレベルです。何をすれば良いかわからず、途方に暮れている状態です。

本当にそうでしょうか。何も思い浮かんでいないのでしょうか。それとも、たくさん考えているけれども、自分でダメ出しをして可能性をつぶしているかもしれません。この先、どうなると考えているのでしょうか。どうなったらまずいのでしょうか?その可能性はどのくらいあるのでしょうか?

自分自身との対話を促進させることも、カウンセリングの中では大切な業務になります。自分の中に可能性を見つけることが希望になります。見えない可能性に光を当てられることも大切です。


自分の仕事ってなんだっけ、という素朴な問いから「ニュアンス翻訳」という部分に焦点を当ててみると、スキル面だけではなく、自分自身との対話を促すというカウンセリングの要素にまで光をあてることができました。

自分のための記事になったと思います。

こんな記事にお付き合いいただいた方、ありがとうございました。

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