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「牛乳は牛の血液である」

今でも、ふと思い出す言葉。大学で畜産を学びはじめた頃、もうどの授業だったか、先生は誰だったかも忘れてしまったのですが、それだけは覚えていて。衝撃を受けたんですね、血液なの!?って。

牛乳はお母さん牛の血液からできています。お母さん牛が食べたものが胃腸で消化吸収され、その栄養素が血液によって全身に運ばれる。もちろん乳房にも。そして、乳房の中の乳腺細胞が血液中のさまざまな栄養素を取り込んでお乳の成分を作り出しています。

ですから、牛乳はお母さん牛が食べたものによって味が変わりますし、体調によっても変わる。機械的にできるものではなく、いのちの営みの中で生まれるものです。

普段、牛乳を何気なく飲んでいますが、そもそもはお母さん牛が我が子に与えるためのもの。それを人はいただき、さらに、チーズやバター、ヨーグルトなどさまざまな乳製品に加工もします。北海道はそれがとりわけ盛んな土地だということは、言わずもがな。

せっかく北海道で暮らしているのだから、なるべくならばその土地のものを、いのちのあたたかさを感じられるものをいただきたいな、と私は思うのです。

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ところで、私は最近、『北海道をかし菓伝』という読み物を綴り始めました。どのようなものかというと、母が作ってくれたお菓子を思い出すような、ほっとする味わいの、私の好きな北海道のお菓子について書いたものです。

ここでいう“母の味”や“ほっとする味”とは、具体的には「原材料がシンプルなお菓子」のこと。そのお菓子を選ぶ際に、一定の基準を設けました。たとえば、食用加工油脂や人工甘味料を使っていないことなどです。

それは、「牛乳は牛の血液である」の末尾に記したような思いがあるからです。とはいえ、お菓子に限らず、何から何までそうしようとするのは現実的には難しい。窮屈にもなってきます。けれど、そんな思いだけは持ち続けたいという意味も込めて、『北海道をかし菓伝』外伝として、お菓子の原材料になる北海道の農産物について綴っていきたいと考えています。

                                                                         〜『北海道をかし菓伝』外伝 その1〜

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