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しょーず

農業関係の仕事に就いていた頃、部署が変わりまだ慣れない日々を送っていたある日――
「しょーずの○○見せてくれないかな」「はい、今、用意しますね」
そんな会話が聞こえてきました。ん!?しょーず!?と、思わずしょーずに反応。そんな作物あったかな??でも、通じてるみたいだしぃ……と、しょーずのことで頭がいっぱいに。会話が途切れたときにすかさず質問してみました。
「あの、しょーずって何ですか?」

答えは小豆。謎が解けて大満足し、新たな呼び方を習得。けれどそれと引き換えに、私の中からはアズキという名が抜け落ちていきました。アズキといえばいい場面でもショウズがちらつき、とっさにアズキが出てこない。今から思うと、いわゆる業界用語のようなものだったのか、深く掘り下げたことはなかったのですが、その日を境に、小豆は当たり前のようにショウズになりました。

小豆は小豆という品種だと思っていた私は、お米と同じようにいくつか品種があるということにも驚いたものです。せっかく、プロフェッショナルたちもいる職場だったのだから、もっと勉強すればよかった……と今になって思うものの、当時は目の前の仕事で精一杯。本当にもったいないことをしました。けれど、職場を離れてからも何かと気になるショウズ。

ここ1、2年の間も、たびたび新聞やテレビなどで北海道産小豆のことを目にしました。おととしは、価格の高騰。かいつまんでいえば、近年気候変動などの影響により不作が続いており、在庫も不足。価格が高騰し、和菓子屋さんの経営を圧迫しているという内容でした。

小豆の生産量は北海道が全国シェアのおよそ9割を占めています。といっても、作付け面積は減少傾向にあるそう。それも価格が高騰する一因のようです。日本では生産された小豆の7割ほどが餡に加工されるといいますから、和菓子屋さんにとって大きな打撃となることも容易に想像がつきます。

ところが昨年あたりからは一転、価格の下落という文字を目にするようになりました。コロナ禍で和菓子などの需要が大きく落ち込んだことによる影響だそうです。

和菓子を目の前にすると、ただただ幸せな気持ちに浸ってしまうばかりですが、これから先もずっとそんな気持ちで食べ続けられるよう、甘い魅惑の世界の向こうに広がる厳しい現実も直視しなければと思う、まだまだ先の見えない春です。

                                                                         〜『北海道をかし菓伝』外伝 その2〜

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