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老視処方の考え方「初級から中級編」を解説します

測定をはじめて間もないころは

手持ちの武器となる知識が不足しているので、処方の選択肢がせまくて苦労しますよね?

僕も測定し始めた頃は、近視の測定くらいしか教えてもらってない状態で、まずは対人測定に慣れるためにやらされていた気がします。

今思えば、圧倒的に知識が不足していたので「とりあえず完全矯正値いれとけ」と言った残念な処方になっていたと思います。

簡単な測定に慣れてくると

眼鏡処方の流れというか全体像が

なんとなく見えてくると思いますが、
同じく「壁」にもぶつかると思います。

自分の処方度数は合っているのか?とか、提案した設計は最適だったのか?とかですね。

自分が処方した度数に「なじめない」と返ってくることがポツポツ出だしたり、
なぜこの人になじまなかったのだろう?と考えるはずです。

多くの人はここで「まぁたまたま合わなかっただけだな」で終わらせてしまい、
何年も同じ間違いを繰り返して行きます。

実はこれ、たまたま合わなかったわけではないんですよね。

どういうことかと言うと、

眼鏡の測定を教えられる時、ほとんどがそもそも本質的ではなく、座学をベースに教えられるので、「測定数値イコール正解」だと勘違いしてしまうんです。

本当は、

・お客さんの主訴を聞く方法

・測定数値とKBの比較

・眼鏡の慣れを考慮した処方

この流れを補足するために完全矯正値を出す手順や明視域などの座学があるので、ここは勘違いしないようにしましょう。

眼鏡処方の基礎であり奥義は、
「今の眼鏡の何に不満があり今回はどうしたいのか?」を深く聞き出し

明確にしていきます。

その上で
「眼鏡で出来ることと出来ないこと」を説明して「理解」して使用してもらえるかどうかです。

数値的な理論も大切ですが、もっとも大切なことは
お客さんの要望を聞く「質問力」と「説明力」にあります。

とはいえ、どのように数値を入れればいいのか?は次の例題を元に解説していきますね。

老視は「加入」と呼ばれる数値があり、

「遠くを見る度数から近くを見る度数の差」のことですが、もっと簡単に言えば「老眼の数値」のことです。

まず一般的な年齢別加入度数の目安がこちら。

40代 +1.25

50代 +1.75

60代 +2.25

70代 +2.50

80代 +3.00

くらいが実践的で信用できる数値です。

この数値を丸暗記しておけば、多少測定数値がズレても惑わされなくなります。

単焦点で約40センチぐらいの位置に明視域を合わせるなら

完全矯正値にこの加入数値を入れた度数でほとんど失敗しないでしょう。

あとは左右バランスが均等が自然か?

あえてどちらかの目を優先的にした方が自然か?を確認して、

距離がもう少し近くなるなら+0.25加えたり、離れるなら-0.25度数を入れるなどでOK。

これができれば次に解説する

中級編の累進処方もわかるようになります。

まずは1番多い遠近両用ですが、

基本的には完全矯正値に年齢別加入度数を入れたら「両方見える」となることがほとんどです。

もし「見えにくい」となっても、仮枠が下がっていないか?

目線を落とすことが苦手ではないか?

を確認していきましょう。

1番わかりやすいのが、加入度数と同じプラスレンズを累進レンズと入れ替えて見えていれば「目線が落とせていない」のがわかります。

度数は合ってるけど「目線を落とすのが苦手」という方には累進レンズのショートタイプを試してもらいましょう。


目線を落とすのが苦手な方には年齢よりも加入度数を多く入れたりすることで見えるようにもなりますが、基本的には歪みが増えたり、今後遠近両用を使いにくくなっていくので

加入度数を強めてムリやり見えるようにする方法は最終の最終の最終手段にしましょう。

加入度数が入る位置をなんとなく理解していないと度数は決めにくいので、見た目の位置をイメージで把握しておきましょう。


遠方度数と近方度数の数値差が大きいほど累進レンズは歪みを増して
視野が狭くなるデメリットがあります。

一般的には加入度数2.00からが目安です。

完全矯正値に年齢別加入度数を入れればほとんどの方が遠方も近方も見えるようになります。

しかし眼鏡の処方ってそんな単純なもんでもないのです。

なぜなら
「近方は裸眼で見るから遠方と中間が見えたら大丈夫」って人もいるし、

「今の状態よりちょっとマシくらいでOK」な場合や、

「歪みを少なくする方が使いやすい」という方もいるからですね。

ということは遠方度数がゆるくてOKなら、近方度数もゆるい方で視野も大きく取れるし、
歪みも少なく快適なレンズになるっていうことですね

これを踏まえてお客さんは「どこを見たいのか?」を聞き出す必要があります。

次の項目で主訴によって入れる加入度数が変わることを見ていきましょう。

主訴による加入度数の違い 例題1

例えばこんなデータがあったとします。

KB S-1.50 視力1.2 加入+1.00

完全矯正値 S-1.25 加入+1.75

年齢50代

主訴は50センチくらい離れた

デスクPCを見やすくしたい

細かい主訴の質問は省きますが、この場合1番単純な処方は、


S-1.50 加入+1.75にすることです。

しかしこれはあくまで単純な処方。

もしお客さんが「遠方はそこまで見えなくていい」と言った場合は
S-1.25 加入+1.50でもOKということです。

遠方度数と近方度数に開きがあるほど歪みや視野が狭くなるデメリットを考えれば、
なるべく少ない加入度数で要望を満たせる方が満足度が高くなるからですね。

計算式で言えば、この人の近点はS-1.50から加入度数の+1.75を足すと
+0.25になるので、40センチくらいの近方は裸眼でも見えるということ。

主訴は50センチ離れたデスクPCを見やすくということなので、


「実際に使う距離」を詳しく聞くことと、
「手元はどのくらいの距離まで眼鏡で見たいか?」を深掘りして聞くことが
この処方のポイントとなります。

そうすれば中間部分が狭くなる遠近両用でも、低加入であれば

PCの距離は見やすくなるからです。

主訴による加入度数の違い 例題2

では同じような数値で、違う主訴の場合も見てみましょう。

KB S-3.50 視力0.7 加入+1.00

完全矯正値 S-4.50 加入+2.00

年齢60代

主訴は遠方を見やすくしたい

現在の眼鏡の悪い要素は遠方だけなようですが、遠方度数を上げれば加入度数も
同じく上げなければ今と同じように手元は見えなくなります。

例えば今の度数は遠方度数がS-3.50で加入度数+1.00を足すと
近方に入る度数はS-2.50ですよね?

ということは、この方は遠方を上げた分だけ近方部分の度数をS-2.50になるよしなければ前と同じように見えにくくなるということです。

数値にするとこんなイメージです。

遠方度数が

S-4.50なら加入は+2.00

S-4.25なら加入は+1.75

S-4.00なら加入は+1.50

S-3.75なら加入は+1.25

全部近方度数はS-2.50になってますね。

なので「遠方をどれだけ見たいか?」がこの処方のポイントになるわけです。

加入を上げるデメリットを説明して体験した上で、
「今よりどこまで遠方を見たいのか?」を深掘りできれば
精度の高い処方を提案することができます。

眼鏡の度数とは、どこからどこまでを見えるようにするか?がポイントになるんです

老視の測定も、基本的には完全矯正値に年齢別加入度数を入れることをベースにし、

「どこからどこまでを見たい眼鏡」なのかをお客さんにヒアリングして、提案、体験、選択してもらうことが大切です。

遠視や乱視が入ってくると

また少し処方は変わるので他の動画も
参考にしてみてくださいね。

「加入度数を強めれば手元は見やすくなる」と思われがちですが、
視野が狭くなったり歪みが増えるデメリットも多くなります。

「いかに加入度数を強める以外の方法で手元を見やすく出来るか?」
「歪みを増してでも本当に遠方や近方を見たいのか?」

これを深掘りしていけば「単純に年齢相応な加入を入れるだけ」という
レベルの低い処方からハイレベルな処方に変わります。

誰だって、なるべく歪みが少ない方が慣れやすいですし、満足度は高くなります。

数値的な結果も大切ですが、お客さんの「心の声」を聞き出せる
「質問力」と「説明力」を高めてレベルの高い処方を目指していきましょう。

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