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『煙か土か食い物』は、20年前輝いていた。

ミステリと文学を越境する作家だと信じてた。

2001年にメフィスト賞で登場したデビュー作、改行を知らないかのように、マシンガンを撃ち続けるかのように、放たれる言葉は徹底的に計算されていて、驚きの読み易さで、読む人を独特のリズムの世界へ連れて行った。高揚感と共に。

「奈津川サーガ」の完結を20年待っているけれど、『暗闇の中で子供』を無かったことにしないと完成は難しい気がする。著者は、書きたいのだろうか? 優秀さと暴力の血の物語は、デビュー作では完璧だった。家族の中の憎むべき「お父さん」を、「お父さん」と呼べる流れも良かったし、優秀な外科医であることも単なる能力のパラメーターやステータスではなく、腕を必要とする場面が有るのも良かった。

意味を壊そうとする姿勢は、清涼院流水の影響が大きいだろうけれど、ミステリだろうと純文学だろうと、現代を生きるなら避けて通れない問題意識だと思っていた。

『山ん中の獅見朋成雄』を読んで以来、著者の作品を読んでいない。舞城王太郎は凄い作家だったと思う。同世代で成功したのは、「京都の二十歳」と呼ばれた西尾維新かもしれない。舞城王太郎にしか書けないジャンルを越境する作品があっただろうし、理解出来ない上の世代の作家が賞の選考委員をしているのも損だったと思う。

「奈津川サーガ」だけでも完成させて欲しいけれど、20年という時間は、重すぎるのかもしれない。







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