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幼稚園に上がって少しマシになり、小学生になって風邪を引くことも減った。

赤ちゃん時代から4歳頃までは、熱が下がる、マンションの敷地の小さな公園に母と行く、お友達がだれかしら「くしゅん」とくしゃみすると、その夜はまた高熱を出すことの繰り返しだった。

枕元に子ども向けの包装用紙で包まれた箱がある。父が仕事帰りに買ってきてくれた、超合金シリーズだろう。

「熱、まだ高いのか?」と声もかけてくれたろう。

無関心に書斎へ消えてしまう頃と比べたら、格段の進歩だけど、父さんは息子を分かってない。

新品のおもちゃより、若い頃に登山した丹沢の話を聴きたかったよ。丹沢は一緒に登れたら、楽しそうだね。熊、出るかな?

声変わりする前にいなくなるから、髭の剃り方を自分で覚えたよ。お前もヒゲ生えてきたかなんて、言われてみたかった。

保存状態が悪くて父さんのNikonFを処分したけど、父さんが一生使ったカメラだから、使い方を教えて欲しかった。フィルムの入れ替えやピントの合わせ方は分かるけど、露出計の使い方は分からない。

そもそも、スマホもデジタル一眼レフもホームシアターもテスラも、父さん大好きでしょ。ちゃんと、未来を生きようよ。

年上の従兄弟を、可愛がってるの羨ましかった。父さん、ギター弾いてなかった? 僕ら家族には、知らない姿だ。

お酒を飲む機会も無かったね。父さんもビールかワインだった気がする。他の種類のお酒も、飲めるの?

鬱病のままでいいから、生きていて欲しかったよ。大学の先生にこだわらなくても、本を書くことも出来るし、母さんの家庭塾の顧問やってもいいし、生きる場所はまだあるじゃないか。

現実問題、父さんを6年支えて、母さんが潰れかけていたから、親をどちらか1人しか選べない。そんな立場に、子どもを立たせないでくれよ。究極の選択だ。


キャッチボールする親子が羨ましかった。
父さん、そもそも球戯ダメなんだよね。
それでも、一緒に遊んで欲しかったよ。


僕らは上手くいかなかったけど、よそのご家庭で、「愛せる時に愛する」ことを気づいてもらうための、反面教師が父さんの最後の仕事かもしれないよ。格好悪いの気にするけどさ、私はあなたを笑わない。息子がOK出してるんだから、胸張っていようぜ。

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